パトカーと交通事故に遭ってしまった際に損害賠償を負う相手は誰なのか?

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交通事故は、人が運転している限り起きるものです。

それは警察官が運転するパトカーでも例外ではありません。

パトカーとの間で交通事故が発生した場合であっても、一般車両同士の事故と同様に損害賠償の問題が生じますが、一般人が相手方である場合とは少し異なる問題があります。

そこで今回は、パトカーとの交通事故特有の問題についてご説明します。

1.損害賠償責任を負う相手は誰なのか

交通事故の相手方が一般人の場合、損害賠償責任を負うのは、当然、その相手方本人ということになります。

この場合、被害者としては、民法709条、もしくは自動車損害賠償保障法3条に基づく損害賠償請求を行うことになります。

また、車の運転者と所有者が異なる場合や、会社の業務中の事故の場合などは、その車の所有者や会社についても、損害賠償請求をすることが可能です。

これに対して、パトカーを運転していたのが公務中の警察官の場合は、民法の不法行為の規定は適用されず、国家賠償法が適用されることになります。

そして、国家賠償法1条1項では、「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」と定められており、この規定からすると、警察官本人は賠償責任を負わず、その警察官所属の警察を所轄する地方公共団体(都道府県)が警察官本人に代わって賠償責任を負うことになります(代位責任)。

加害者である警察官本人に賠償させたいという被害者心理があることは否めませんが、損害の賠償という目的自体は、個人である警察官本人へ請求するよりも、資力に問題のない都道府県へ請求することで達成することができるので、経済的な補償という観点からは、警察官本人への請求が認められなくとも支障はないということを根拠に、個人的責任の追及は否定されています。

なお、自賠法3条の運行供用者責任は警察官によるパトカーの運転行為にも適用されるため、自賠法3条に基づいて損害賠償請求をすることも可能です。

ただし、この請求が認められるのは、「自動車の運行によつて人の生命又は身体が害された場合」なので、物損については、適用の対象外となります。

2.損害賠償請求が認められるための条件

(1)上記のように、警察官によるパトカーの運転行為によって交通事故が発生したときは、その所属の警察を所轄する都道府県に対して国賠法1条1項もしくは自賠法3条に基づく損害賠償請求をすることになります。

(2)国賠法に基づく損害賠償請求は、「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたとき」に、認められます。

特に、民法上の不法行為と異なる点としては、加害行為について故意または過失があるだけでなく、加害行為が「違法に」行われた場合でなければなりません。

この点について、パトカーが交通違反車両の追跡を行っていたところ、追跡されている違反車両が第三者に衝突し、その第三者が損害を受けたという事案において、最高裁は、パトカーの追跡行為が違法であるというためには、「追跡が当該職務目的を遂行する上で不必要であるか、又は逃走車両の逃走の態様及び道路交通状況等から予測される被害発生の具体的危険性の有無及び内容に照らし、追跡の開始・継続若しくは追跡の方法が不相当であることを要するものと解すべきである。」と判示しています(最高裁昭和61年2月27日判決)。

そのため、追跡行為が違法となるのは、追跡行為が不必要、もしくは必要であっても、諸事情に照らして追跡方法が不相当といえる場合に限られ、被害者側でこれを立証しなければなりません。

(3)他方で、自賠法3条に基づく請求の場合は、同条のただし書きが規定する免責事由(運転者の無過失、被害者等の故意または過失など)がない限り、加害者は損害賠償責任を負うことになります。この免責事由がないことについては、加害者側で立証しなければならず、このことは、警察官によるパトカーの運転行為であっても異なりません。

したがって、人的損害が生じている場合には、立証責任が転換されている分、被害者としては、自賠法3条に基づく請求をするほうが有利であるといえます。

3.過失割合はどうなるのか

(1)一般車両同士の事故の場合は、道路の優先関係や車両同士の位置関係などによって、いずれがどの程度の注意義務を負い、過失割合を負担することになるかを判断することになります。

しかし、パトカーが違反車両の追跡行為を行うなどの緊急走行をしている最中に一般車両との間で事故が起こった場合は、状況が異なります。

緊急走行をしているパトカーは、「緊急自動車」として、道路交通法上の規制(赤信号や道路標識による停止規制、進入禁止規制など)の適用が除外されます。

そして、緊急自動車以外の車両は、緊急自動車が接近してきたときは、交差点を避け、かつ、道路の左側に寄って一時停止をするなどして、緊急自動車に進路を譲らなければいけません(道交法40条)。

このように、緊急自動車の通行には、法令上優先的な地位が与えられているため、緊急自動車とそれ以外の一般車両との間で事故が発生した場合は、もっぱら緊急自動車側に過失があることが明白な場合などを除き、一般車両のほうに過失があることになります。

(2)もっとも、緊急自動車に対しても、道路交通法上のすべての規制が免除されるわけではありません。

たとえば、信号のない交差点で、優先道路などに進入しようとする場合は、徐行して進入しなければならず(道交法36条3項)、また、他の車両等に注意し、できる限り安全な速度と方法で進行しなければなりません(道交法36条4項)。

これらの義務は、緊急自動車であっても免除されず、これに違反して事故が起こった場合には、相応の過失相殺がなされます。

ただし、緊急自動車の優先度は高いので、上記のような優先道路の進入事例でも、基本的な過失割合は、緊急自動車が2割、一般車両が8割となります。

(3)また、パトカーに道路交通法上の規制が免除されるのは、あくまでも緊急走行が必要であり、かつ、サイレンを鳴らし、赤色警告灯を点けた「緊急自動車」である場合です。

そのため、たとえパトカーであっても、「緊急自動車」に当たらない場合の過失割合は、一般車両同士の事故の場合と同様に考えることになります。

パトカーとの交通事故は、あまり多くはありませんが、実際に起こってしまった場合は、きちんと対処しなければなりません。

しかし、賠償額や過失割合などで争いになってしまった場合、個人で対処するのは、非常に困難です。

ご自身で対処することに不安を感じる場合には、まずは当事務所までご相談ください。

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