過失相殺・損益相殺について賠償額が低くなる原因を解説!

個人再生とは

交通事故に遭った場合、被害者は、相手方に対して、不法行為に基づく損害賠償請求権を有することになります。

この請求権の内容は、治療費や休業損害、慰謝料など、様々な項目にわたりますが、それぞれの金額がどのくらいになるかは、過去の裁判の蓄積によって、ある程度の目処をつけることができます。

もっとも、それらの項目を合計した金額を、そのまま受け取ることができるというわけではなく、実際に相手方に対して請求をして賠償を受けることのできる金額は、様々な原因によって低くなり、場合によっては全く請求することができないということもあります。

今回は、その原因のうち過失相殺と損益相殺について、ご説明します。

1・過失相殺とは

車を運転する方であれば、交通事故で問題となる最たるものとして、過失相殺(過失割合)が頭に浮かぶのではないでしょうか。

法律上、過失相殺については、民法722条2項に規定されています。

追突事故など、明らかに被害者に過失が認められないような事故態様を除き(ただし、追突事故でも追突された側に過失が認められる例外的な場合もありますが)、どちらの当事者に事故発生の責任がどれだけあるのか、ということが争われることが多いです。

事故全体から見れば被害者とされる方にも、過失が少しでもあるということになると、その割合分は、損害額全体から差し引かなければならなくなってしまいます。

たとえば、仮に損害の合計金額が100万円である場合に、被害者にも1割の過失があるということになると、実際に請求して認められる金額は90万円ということになります。

さらに、そのうちすでに治療費として支払われている分があれば、治療費を含めた損害額全体から既払い分の治療費相当額を差し引かなければいけないため、治療費が20万円かかったとすれば、実際に認められる金額は70万円となってしまうのです。

そして、1000万円、1億円と損害額が大きくなればなるほど、過失割合の1割が持つ意味合いは大きくなるため(1000万円の1割であれば100万円、1億円であれば1000万円)、当事者間の争いも激しくなることが多くなります。

2.過失相殺とそれに類する問題

(1)好意(無償)同乗

過失相殺に近い問題として、「好意(無償)同乗」というものがあります。

これは、他人が運転する自動車に、無償で乗っていた人が、その運転者が起こした事故により損害を受けた場合に、普通の事故と同じように、損害額すべてを請求することができるとしてよいのか、という問題です。

つまり、あくまでも他人の好意により無償で乗車していたにもかかわらず、その他人の事故で損害を受けたからといって、通常どおりに損害賠償をできるとすると、その他人の好意をむげにする結果となってしまうので、それは妥当ではないのではないか、多少減額されるべきではないのか、というものです。

昔はこの好意同乗による減額を認めた事例もあったようですが、最近では、無償で同乗していたというだけでは、減額が認められることはほとんどありません。

ただし、たとえば運転者が飲酒運転や無免許運転であるなど、事故を起こす危険性が極めて高いことを知りながら、それを承知で乗車していたような場合、同乗者としては、そのような運転者の車に乗らない、もしくは運転を止めさせるという選択肢があったにもかかわらず、あえて乗ってしまったという責任があります。

この場合には、事故による損害の発生の一端は同乗者にもあるものとして、減額される可能性は高いといえるでしょう。

実際の裁判例でも、運転者が飲酒運転であることを知りながら、同乗していた人が被った損害の算定に当たり、損害の公平な分担という観点から、損害額の2割の過失相殺を行うべきとの判断をしたものも存在します。

(2)素因減額

もうひとつ、過失相殺に近い問題として、「素因減額」があります。これは、損害の発生や拡大に、交通事故の被害者の身体的・心因的な要因が影響している場合に、その要因の大きさに応じて、損害賠償額を減額するというものです。

たとえば、被害者がもともと腰痛もちで、事故前から椎間板ヘルニアが生じていたが、事故によってさらにヘルニアが悪化し、治療が長期化したような場合がこれに当たります。

過失のように、被害者に落ち度がないとしても、治療が長期化したことの要因が被害者側にある場合に、これを考慮せずにすべての損害賠償責任を相手方に負わせるは、損害の公平な分担とはいえないため、裁判実務でも民法722条2項の規定が類推適用されて、素因減額が認められています。

3.損益相殺とは

損益相殺とは、被害者が事故を原因として何らかの金銭や利益を取得した場合に、相手方へ請求できる損害賠償額から、それらの金銭等が控除されることをいいます。

交通事故により発生した損害は、相手方からの賠償によって補填されるだけでなく、それ以外の形で補償を受けることもありますが、それらの補償によって補填された分を控除せずに、相手方から、事故によって発生した損害の分の賠償をそのまま受けられるとなると、被害者に、発生した損害以上の利益を与えることになってしまいます。

しかし、これでは、損害の公平な分担という不法行為制度の趣旨に反することになるので、補填を受けた分は、相手方への請求額から控除しなければならないものとされているのです。

4.損益相殺の対象となるものとならないもの

他方で、事故をきっかけとして得た金銭や利益の中には、損益相殺の対象とならないものもあります。

この線引きはなかなか難しいのですが、事故により受けた金銭や利益が、損害の補填を目的として受けたものであるかどうかや、その給付の趣旨から、損益相殺の対象とすることが妥当か否か、その給付が被害者等の費用負担の結果生じたものかどうか、などによって判断されることになります。

損益相殺の対象となるものとならないものは、以下のように分類されます。

<損益相殺の対象となるもの>
・すでに支払われた自賠責保険金、政府保障事業による填補金
・すでに支払われた労災保険・厚生年金保険・国民年金保険等の給付金(休業補償給付金や障害保障年金、遺族年金など)
・所得保障保険金
・死亡事故における被害者本人の労働能力喪失期間の生活費相当額

 

<損益相殺の対象とならないもの>
・香典、見舞金
・生命保険金、搭乗者傷害保険金
・労災保険からの休業補償特別支給金、障害特別支給金、障害特別年金、遺族特別支給金 ・死亡した幼児の養育費
・税金

以上のような、過失相殺等や損益相殺の問題は、被害者の方が相手方からどのくらいの賠償を受けることができるかに直接かかわってくるものですが、被害者の方個人が、相手方に実際に請求することのできる金額を算定することは困難を伴いますので、まずは当事務所までご相談いただければと思います。

交通事故でこんなお悩みはありませんか?

交通事故に遭ってしまったけど、
保険会社・相手方とどんな風に対応
すればいいのかわからない・・・

後遺症があるためきちんと賠償を
受けたいけど、後遺障害認定申請や
示談交渉などさっぱりわからない・・・

  • ✓ 事故発生直後からのご相談・ご依頼に対応しています。どの段階の方でも安心してご相談いただけます。
  • ✓ 治療中のアドバイスから後遺障害認定申請、その後の示談交渉や訴訟対応までサポートいたします。