交通事故後に遭って、症状固定後の治療費は認められない?認めた事例を解説

1.交通事故による損害として認められる治療費の原則的な範囲

交通事故による怪我の治療費については、交通事故との相当因果関係が認められる限り、怪我を負わせた加害者が負担すべきものとして、その賠償を請求することができます。

怪我を負わせられた被害者の心情として、怪我や症状が完全に治癒するまで治療を受け続けたい、と思うのは当然のことなのですが、残念ながら、交通事故による怪我に関する治療であっても、そのすべての費用が無制限に認められるものではありません。

交通事故による受傷後、ある程度の期間治療を続けていると、治療の効果が薄れ、その後、いくら治療を受けても症状が改善しない状態に至ることもまれではないです。

このように、症状が治療によって改善される見込みがなくなることは、「症状固定」と呼ばれます。

交通事故賠償実務においては、基本的に、怪我を治すため、もしくは症状を改善するために必要な治療にかかった費用が、賠償対象とされています。

そのため、もはや治療による改善が見込まれないとして症状固定と診断されると、それ以降の通院、たとえば痛みなどの症状を和らげるための通院は、怪我を治すために必要な治療ではないため、原則として、賠償対象にはなりません。

2.症状固定後の治療費でも認められる場合とは

ただし、症状固定後にかかった治療費であっても、それが交通事故による損害として認められる可能性がまったくないわけではありません。

実際に、過去の裁判でも、症状固定後の治療費を請求して認められたケースが少ないながらも存在します。

症状固定日までの治療費が交通事故による損害として賠償対象となるのは、それが怪我を治すために必要かつ相当なものだからですが(そのため、必要性・相当性が認められなければ、症状固定前の治療費であっても、認められないことがあります)、過去の裁判で認められている症状固定後の治療費についても、それが症状の悪化を防止するためや、支出にやむを得ない事情がある場合など、それが必要かつ相当なものといえる場合に認められています。

3.症状固定後の治療費を認めた裁判例

(1)さいたま地裁平成25年4月16日判決

被害者が交通事故により左下腿部の切断を余儀なくされ、症状固定後、その切断面に義肢を装着したが、義肢との接触によってその切断面の皮膚に潰瘍が生じたため、その治療のために支出した入院治療費約15万円を請求した事案です。

裁判所は、症状固定後の支出ではあるものの、切断面の潰瘍は、義肢の使用に伴って発症したものとして、そのための入院治療は必要かつ相当なものと認められると判断し、入院治療費全額を認めました。

(2)神戸地裁平成26年9月12日判決

交通事故で左股関節脱臼骨折等により股関節の可動域制限が残存した被害者が、立位保持・歩行のために装具を装着してリハビリを行っていましたが、主治医が症状固定と診断した後も、入院してリハビリを行わなければならなかったという事情があったため、裁判所は、装具装着リハビリ入院費用約4万円について、立位保持・歩行を可能とするために必要なものであったとして、事故の損害として認めるのが相当であると判断しました。

(3)さいたま地裁平成21年2月25日判決

四肢麻痺、意識障害等で意思疎通が困難となった被害者につき、症状固定後も入院していたため、その入院にかかった約468万円について、被害者の日常生活には全介助を要すること、拘縮を防ぐためリハビリが欠かせず、在宅介護への移行のため、自宅改修、導尿や経管栄養の技術を家族が習得する必要があったこと等から、症状固定後も、被害者の症状悪化を防ぎ、在宅介護への移行準備として入院治療が必要であったとして、上記の入院費用全額を、交通事故との相当因果関係のある損害と認めました。

(4)大阪地裁平成25年3月26日判決

左手関節及び左股関節の疼痛について、それぞれ後遺障害等級12級13号が認定された被害者が、事故の約6年5か月後、症状固定の約3年後に行った、症状固定当時の画像解析技術では十分に把握できなかった股関節唇損傷やその原因となったインピンジメントの手術費用等について、治療がずれ込んだ理由が、もっぱら医学的知見が追いつかなかったという特殊な事情にあることを考慮すると、その治療費が症状固定後に支出されたからといって、治療としての相当性を失うものではないとして、その治療費約44万円のほか、入院雑費約6万円、通院交通費約5万円を認容しました。

まとめ

症状固定後の治療費については、基本的に交通事故の損害として認められ難いのは事実ですが、上記の裁判例のように、特別な事情により、必要かつ相当と認められるものであれば、認められる可能性はあります。

また、症状固定後の治療費は認められないとしても、その他の損害について適切な金額を得られるようにすることで、実質的に、症状固定後の治療費に相当する金額の補償を受けたのと同様の結果になることもあります。

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