交通事故による脊髄の損傷の影響とは?弁護士が検討すべき法的対応について徹底解説!

執筆者 青山 侑源 弁護士

所属 東京弁護士会

法律トラブルというものは、いつも身近に潜んでいるものです。
はじめのうちは「大したことないだろう」と思っていたことが、そのうち大事になってしまうというケースも多くありますので、少しでも「法律トラブルに巻き込まれたかもしれない」と感じている場合には、お早めにご相談いただくことをおすすめいたします。
法律トラブルへの対処方法や解決方法は、個人の方、法人の方ごとに千差万別ですが、お早めにご相談いただくことで、選べる選択肢も多くなります。
どのような解決方法があなたにとって最適な選択となるのか、一緒に検討していきましょう。

「交通事故に遭い、脊髄損傷と診断された」
「脊髄を損傷した際にすべき法的手続が分からない」

交通事故によって負傷した方の中には、脊髄損傷に関してこのようなお悩みをお持ちの方もいらっしゃると思います。

本記事では、交通事故による脊髄の損傷に関する症状やその後の法的対応や手続などについてご説明します。

1.脊髄損傷の症状と程度

交通事故による脊髄の損傷について、その原因や症状について見ていきましょう。

(1)脊髄損傷とは

脊髄損傷とは、交通事故などによる強い衝撃が加わったことで、脊髄が損傷した状態を指します。

脊髄は、背骨の内部を通る神経であり、脳からの神経伝達を担うことで運動機能や感覚機能を司どっています。

そのため、脊髄に損傷を負うと麻痺などの様々な症状が発生します。

麻痺には脊髄の損傷度合に応じて、完全麻痺と不全麻痺の区別があります。

完全麻痺は、脊髄が完全に断裂しているときに起こる麻痺であり、断裂した部位から下の運動機能や感覚機能が完全に失われます。

一方、不全麻痺は脊髄が完全には断裂しておらず、一部の伝達機能が残っているため、しびれや筋力低下、巧緻運動障害(箸を持ったり字を書いたりする細かな作業が困難になる)といった症状が現れます。

(2)麻痺の程度と発生部位

麻痺には程度や発生部位による分類があります。

まず、麻痺の程度については、高度、中程度、軽度の3分類があります。

高度の麻痺は、障害のある上肢又は下肢の運動性・支持性がほとんど失われ、基本動作(歩行や立位、物を持ち上げて移動させるなど)ができない状態を指します。

中程度の麻痺は、障害のある上肢又は下肢の運動性・支持性が相当程度失われ、基本動作にかなりの制限がある状態を指します。

例えば、文字を書くことができなくなったり、杖などの道具を使わなければ歩くことができなくなったりする状態です。

軽度の麻痺は、障害のある上肢又は下肢の運動性・支持性が多少失われており、基本動作を行う際の巧緻性及び速度が相当程度損なわれている状態を指します。

例えば、麻痺を負う前と比べて細かな作業などを進めることが困難になった状態がこれにあたります。

この分類のほか、麻痺の発生部位による分類もあります。

四肢麻痺(両腕と両脚)、対麻痺(両腕または両脚)、片麻痺(片側の腕と脚)、単麻痺(腕か脚のいずれか)の4分類です。

これらの麻痺の程度や発生部位については、後述する後遺障害の等級認定にも関わる事項ですので、担当医とも相談しながら自分の麻痺の状態を把握しておくことが重要です。

2.交通事故による脊髄損傷と法的対応

交通事故によって脊髄を損傷した場合、交通事故によって生じた損害について、加害者に損害賠償請求することができます。

以下では損害賠償請求においてどのような項目を損害として含めることができるのか、脊髄損傷による後遺症に関する法的手続の概要や流れについてご紹介します。

(1)損害賠償における損害項目

交通事故によって損害が生じた場合は、その損害について加害者に賠償を求めることができます。

交通事故による脊髄の損傷の場合には、麻痺などの症状が残ることから、主には以下のような損害が発生します。

  1. 入通院慰謝料
  2. 休業損害
  3. 後遺障害慰謝料
  4. 逸失利益

順に見ていきましょう。

#1:入通院慰謝料

慰謝料とは、交通事故に遭ったことによる精神的苦痛に対する損害です。

ここでは、怪我を負ったことによる精神的苦痛と、それに伴って入通院を強いられたことによる精神的苦痛がその対象となります。

#2:休業損害

休業損害とは、事故による怪我が原因で仕事を休んだことに対する損害です。

具体的には、入通院などで欠勤・休業等したために得られなかった収入がその対象となります。

#3:後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料とは、後遺障害が残ってしまったことによる精神的苦痛に対する損害です。

後述する後遺障害等級によって、受け取れる金額が変動します。

以下では、自賠責基準と裁判所(弁護士)基準による算定基準を掲載しています。

※脊髄損傷により該当する可能性のある等級について、リストアップしています。

後遺障害等級 自賠責基準

(2020年4月1日以降の事故の場合)

自賠責基準

(2020年3月31日以前の事故の場合)

裁判所(弁護士)基準
1級1号

(要介護等級)

1650万円 1600万円 2800万円
2級1号

(要介護等級)

1203万円 1163万円 2370万円
3級3号 861万円 829万円 1990万円
5級2号 618万円 599万円 1400万円
7級4号 419万円 409万円 1000万円
9級10号 249万円 245万円 690万円
12級13号 94万円 93万円 290万円

#4:逸失利益

逸失利益とは、後遺障害を負ったことによって労働能力が失われ、将来得られなくなった収入に対する損害です。

逸失利益は、「1年あたりの基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間におけるライプニッツ係数」の計算式で算定されます。

労働能力喪失率も後遺障害等級に応じて算出されることが多く、以下にまとめています。

※脊髄損傷により該当する可能性のある等級について、リストアップしています。

後遺障害等級 労働能力喪失率
1級1号

(要介護等級)

100%
2級1号

(要介護等級)

3級3号
5級2号 79%
7級4号 56%
9級10号 33%
12級13号 14%

もっとも、被害者の職業、年齢、性別、後遺症の部位、程度、事故前後の稼働状況等によっては、上記とは異なる労働能力喪失率とすべき場合もありますので、適切な逸失利益を算定するためには、専門家である弁護士に相談することをおすすめいたします。

(2)後遺障害等級の認定と法的手続

上述のうち、後遺障害慰謝料と逸失利益を請求するためには、後遺障害等級の認定を受ける必要があります。

その概要と認定基準、具体的な手続について見ていきましょう。

#1:後遺障害等級と認定基準

後遺障害には等級とそれに応じた認定基準があります。

以下に脊髄を損傷した場合の具体的症状とともにまとめています。

後遺障害等級 認定基準 主な症状
1級1号

(要介護等級)

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの ①高度の四肢麻痺が認められる

②高度の対麻痺が認められる

③中等度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要する

④中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要する

2級1号

(要介護等級)

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの ①中等度の四肢麻痺が認められる

②軽度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要する

③中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要する

3級3号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの ①軽度の四肢麻痺が認められる

②中等度の対麻痺が認められる

5級2号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの ①軽度の対麻痺が認められる

②一下肢の高度の単麻痺が認められる

7級4号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 一下肢の中等度の単麻痺が認められる
9級10号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 一下肢の軽度の単麻痺が認められるもの
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの ①運動性、支持性、巧緻性および速度についての支障がほとんど認められない程度の軽微な麻痺が残っている

②運動障害は認められないものの、広範囲にわたる感覚障害が認められる

後遺障害の等級は、受け取れる後遺障害慰謝料や逸失利益の算定の基準にもなるので、症状に合わせた適切な等級認定が必要となります。

#2:認定の手続とポイント

次に、後遺障害等級の認定を受けるための手続とポイントについてご紹介します。

後遺障害等級の認定手続は書面によって行われます。

そのため、適切な等級認定を受けるためには、どのような書面を準備するかが重要と言えます。

たとえば、担当医が作成する後遺障害診断書に記載された内容が自身の症状と適合しているか否かについては詳細に確認しましょう。

医学的・客観的に後遺障害の症状を示す資料をどれだけ提出できるかが重要ですので、MRIやCTなどによる画像検査や電気刺激に対する反応を測定する電気生理学的検査なども受けておくことをおすすめします。

(3)弁護士に依頼するメリット

後遺障害に関する手続は、医学的・法律的な専門知識を必要とします。

脊髄を損傷してしまった場合には、なんらかの後遺障害に該当する可能性も高く、特に以下の2つの手続においては、ご自身で対応することはおすすめしません。

  • 後遺障害等級認定の申請
  • 示談交渉

順に見ていきましょう。

#1:後遺障害認定

適切な等級認定を受けるためには、必要な書面を過不足なく収集・提出することが重要です。

交通事故を専門とする弁護士は後遺障害の等級認定に関する手続にも精通していますので、後遺障害診断書の作成から専門的なアドバイスとサポートが受けられます。

後遺障害等級の認定手続を検討している方は、早めに弁護士へ相談・確認するとよいでしょう。

#2:示談交渉

後遺障害として認定を受けたら、次に加害者側(保険会社)と示談交渉を行うことになりますが、弁護士に依頼をすることで弁護士基準(裁判所基準)をベースにした示談交渉を行うことができます。

弁護士基準(裁判所基準)は、一般的に保険会社の基準(自賠責基準や任意保険基準)よりも高額になりやすく、特に後遺障害として認定を受けた場合には、その差も顕著です。

交通事故によって脊髄を損傷してしまった場合には、事故後、早い段階で弁護士に依頼をすることで、複雑な手続や交渉をすべて一任することができ、怪我の治療などに専念することができます。

まとめ

本記事では交通事故を原因とする脊髄の損傷について、具体的な症状や損害賠償における損害項目、後遺障害の等級認定に関する手続についてご説明しました。

脊髄の損傷による後遺障害の症状や後遺障害の等級認定手続などには高度な専門知識や実務経験が必要とされます。

後遺障害の等級認定の手続でお悩みの方は、まずは弁護士へ相談してみることをおすすめします。

弁護士法人みずきでは、これまでに数多くの交通事故を原因とする後遺障害の問題に対応してきました。

経験豊富な弁護士が丁寧にお話を伺いますので、ご検討の方はお気軽にご相談ください。

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執筆者 青山 侑源 弁護士

所属 東京弁護士会

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