脊髄損傷になったら弁護士に相談を!そのメリットとは

執筆者 実成 圭司 弁護士

所属 第二東京弁護士会

皆さまのご相談内容を丁寧にお聞きすることが、より的確な法的サポートにつながります。会話を重ねながら、問題解決に向けて前進しましょう。

「脊髄損傷になってしまったが、誰に相談するべきかわからない」

交通事故に遭い脊髄損傷を負ってしまい、このようなお悩みを抱えていらっしゃいませんか?

こちらの記事では、脊髄損傷や、脊髄損傷について弁護士に相談するメリットについてご説明します。

1.脊髄損傷とは

脊髄は脳から連続する神経の束で中枢神経に分類され、脳と身体の各部位を連携する非常に重要な神経であり、脊髄に力が加えられ損傷することを脊髄損傷と言い、身体のさまざまな部位に影響が出ます。

(1)症状について

脊髄損傷は、損傷の状態によって完全麻痺と不完全麻痺の二種類に分けられます。

完全麻痺とは、脊髄の損傷部位より下にある部位の運動機能や感覚機能が消失した状態です。

脊髄が完全に断裂しているため、手足が動かなかったり何も感じなかったりし、日常生活が困難になります

不全麻痺とは脊髄の損傷部位より下にある部位の運動機能や感覚機能が低下はするものの一部残存している状態です。

脊髄が完全には断裂せず一部が残った状態にあるため、リハビリなどによってある程度機能が回復する可能性があります。

脊髄損傷によって生じる症状には、以下のようなものがあります。

#1:運動麻痺、知覚麻痺

運動麻痺とは、筋肉を動かせなくなることです。

完全麻痺の場合は、下肢(股関節・膝関節・足関節と足指の部分)を動かせなくなってしまいます(頸椎の場合、四肢を動かせなくなります)。

知覚麻痺とは、触られている感覚に麻痺が生じている状態です。

麻痺が生じる程度はさまざまですが、痛みを感じる痛覚のほか、重度の知覚麻痺では触られている感覚も無くなる場合があります。

#2:排尿、排便障害

排尿や排便は膀胱や括約筋によって制御されていますが、脊髄損傷によって通常どおりの働きができなくなることがあります。

脊髄の一番下には、膀胱に尿を溜めたりする排尿中枢がありますが、脊髄のどこを損傷しても影響を受けてしまうため、排尿障害を引き起こしやすくなります。

頻尿や出しづらくなるなどの症状がありますが、溜めることができず膀胱変形が進行し腎不全などを引き起こすこともあるのです。

排便障害では、直腸の感覚が鈍くなったり括約筋がコントロールできなくなることで、便秘や便失禁を引き起こします。

#3:自律神経症状

自律神経とは、交感神経と副交感神経の総称です。

自律神経は大脳皮質や脳幹のほか、脊髄でも管理されています。

よって、脊髄が損傷すると血圧や頭痛、冷や汗などの影響が生じます。

(2)脊髄損傷と後遺障害等級

#1:認定される可能性のある等級

脊髄損傷による後遺障害が認められる場合、以下の等級に該当する可能性があります。

後遺障害等級 認定基準 主な症状
別表第一

(要介護等級)

1級1号 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの ①高度の四肢麻痺が認められる

②高度の対麻痺が認められる

③中等度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要する

④中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要する

2級1号 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの ①中等度の四肢麻痺が認められる

②軽度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要する

③中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要する

別表第二 3級3号 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの ①軽度の四肢麻痺が認められる

②中等度の対麻痺が認められる

5級2号 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの ①軽度の対麻痺が認められる

②一下肢の高度の単麻痺が認められる

7級4号 神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 一下肢の中等度の単麻痺が認められる
9級10号 神経系統の機能または精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 一下肢の軽度の単麻痺が認められるもの
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの ①運動性、支持性、巧緻性および速度についての支障がほとんど認められない程度の軽微な麻痺が残っている

②運動障害は認められないものの、広範囲にわたる感覚障害が認められる

#2:後遺障害等級認定のためのポイント

脊髄損傷による後遺障害等級を認定してもらうためには、医師が作成する診断書が非常に重要です。

脊髄損傷は中枢神経障害にあたりますので、適切な等級を認定されるためには必要な検査を受け、その結果を正確に診断書に記載しなければなりません。

脊髄損傷になった場合に受ける検査には、以下のようなものがあります。

 

神経学的検査

神経学的検査では、運動機能や歩行能力、感覚機能の状態や意識状態の異常がないかどうかなどを確認します。

脊髄などの中枢神経による障害を負った場合、病的反射と呼ばれる反応が見られます。

正常な状態であれば出現しないため、脊髄損傷について判断するうえで重要なテストです。

 

画像検査

損傷した箇所を特定するために、X線検査やMRI検査などを行います。

脊椎が骨折や脱臼している場合、その中にある脊髄も損傷を受けている可能性があります。

X線検査によって骨の異常が認められた場合、高輝度MRIを用いることで実際に脊髄のどの箇所が損傷を受けているのか確認することが可能です。

2.脊髄損傷についてよくある疑問

ここでは、脊髄損傷についてよくある疑問について3つご説明します。

(1)弁護士に相談した方が良いのか

弁護士に相談することで、アドバイスを受けられるだけではなく、必要な手続も任せることができます。

脊髄損傷が後遺障害として認定された場合、後遺障害慰謝料を請求できますが、裁判所(弁護士)基準で請求できる点も大きなメリットです。

裁判所(弁護士)基準とは、慰謝料を算出する際に用いられる基準の中の1つで、他に自賠責基準・任意保険基準があります。

裁判所基準を用いることで3つの中で最も高額の慰謝料を請求できますが、弁護士に依頼しなければなりません。

また、治療を続けていると相手方の保険会社から治療費を打ち切ると言われたり、相場よりも低額の示談金を提示されることがあります。

弁護士は法律の専門家であり、交渉のプロでもありますので、専門知識に基づいて依頼者の代わりに交渉もできるのです。

(2)どのような費用を請求できるのか

脊髄損傷になったとき、治療費のほか以下のような費用について請求できます。

#1:後遺障害慰謝料

交通事故によって怪我を負い後遺障害が残ってしまった場合に、被害者が受けた精神的・身体的苦痛に対して支払われる慰謝料です。

#2:後遺障害逸失利益

交通事故が原因で後遺障害が残り労働能力が低下した場合に、通常どおり働いていれば将来得られるはずであった収入に対する補償です。

職業や年収、事故当時の年齢や後遺障害等級などさまざまな要素を考慮して算出します。

#3:入通院慰謝料

交通事故によって怪我をさせられたことで受けた精神的苦痛に対する慰謝料です。

自賠責基準では「4,300円×日数」の式で金額を算出し、弁護士基準では、別表と呼ばれる表を用いて算出します。

別表にはⅠとⅡがあり、Ⅱは軽傷で他覚症状がない場合などに用いられ、通常は別表Ⅰを用いて算出します。

入通院した期間と日数に応じて慰謝料の金額が定められており、期間や日数が長いほど高額の慰謝料を請求することが可能です。

脊髄損傷は怪我の重さから入通院する期間が長期間になることが予想されますので、入通院慰謝料も高額になる可能性があります。

#4:将来介護費

被害者が脊髄損傷により寝たきりになったり、ひとりで食事や移動などができなくなった場合には、介護が必要になります。

このような場合、将来の介護費用が損害として認められます。

常時介護、随意介護を前提とした後遺障害とされている、自賠責後遺障害の別表第1の1級及び2級に該当する症状が残存した場合には、将来介護費を請求できるとされています。

また、具体的な症状や生活状況等によっては、別表第2の3級以下の障害が残存した場合でも認められる可能性があります。

たとえば、9級10号に該当する障害が残存する被害者について、一人での服の着脱、荷物の持ち運び、字を書くこと、入浴時に自分の体を洗うこと等が困難であり、随時、妻の介護を要するとして、将来介護費が認められた裁判例(大阪地判平成21年8月25日、交民42・4・1051)があります。

将来介護費用は、近親者による介護や職業介護の場合のほか、施設における介護が必要な場合にも認められます。

さらに、後遺障害の内容や被害者の方の生活状況に応じて、自宅の改造費(浴室や便所・出入口・自動車など)や転居費用、仮住居費、家賃差額などを認めた裁判例があります。

脊髄損傷は、損害賠償請求の請求項目が多い傾向にあります。

本来賠償を受けられるはずだったものを漏らさないためにも、賠償請求時は弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

(3)受け取れる慰謝料の金額はどのくらいか

自賠責基準は自賠責保険から支払われる賠償金の基準額であり、最低限の補償を目的としていることから3つの基準の中で最も低額です。

任意保険基準は、各任意保険会社が定めている基準であり、保険会社によって内容は異なりますが自賠責基準と同程度と言われています。

裁判所(弁護士)基準は過去の判例をもとに定めた基準であり、最も高額の慰謝料を請求できます。

後遺障害等級に基づく後遺障害慰謝料の金額の相場は以下のとおりです。

※脊髄損傷によって後遺障害が認められた時に該当しうる等級のみ記載しています。

後遺障害等級 自賠責基準

(2020年4月1日以降の事故の場合)

自賠責基準

(2020年3月31日以前の事故の場合)

裁判所(弁護士)基準
別表第一

(要介護等級)

1級1号 1650万円 1600万円 2800万円
2級1号 1203万円 1163万円 2370万円
別表第二 3級3号 861万円 829万円 1990万円
5級2号 618万円 599万円 1400万円
7級4号 419万円 409万円 1000万円
9級10号 249万円 245万円 690万円
12級13号 94万円 93万円 290万円

まとめ

脊髄損傷は、交通事故による傷病の中で最も重篤な傷病のひとつです。

重篤な後遺障害は被害者の方の将来に及ぼす影響が大きいことから、賠償請求の際に請求しなければならない項目が多岐にわたり、賠償額の計算が複雑になる傾向にあります。

その他、転院や施設への入居など相手方保険会社とのやり取りも煩雑になることも少なくありません。

そのため、交通事故によって脊髄損傷となった方は、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士法人みずきは、交通事故問題に精通している弁護士が数多く在籍しています。

経験豊富な弁護士がご相談者さまのお悩みを真摯に伺いますので、脊髄損傷についてお悩みの方は一人で抱え込まず当事務所にご相談ください。

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執筆者 実成 圭司 弁護士

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皆さまのご相談内容を丁寧にお聞きすることが、より的確な法的サポートにつながります。会話を重ねながら、問題解決に向けて前進しましょう。