交通事故で頚椎を骨折した場合の完治期間は?症状が残った場合の対処法

執筆者 金子 周平 弁護士

所属 栃木県弁護士会

法律は堅苦しいという印象はあるかと思います。しかし、そんなイメージに阻まれて、皆さんの問題や不安が解決されないのは残念でなりません。
私は、そんな法律の世界と皆さんを、柔和に橋渡ししたいと思っています。問題解決の第一歩は、相談から始まります。
皆様が勇気を振り絞ってご相談をしていただければ、後は私どもが皆様の緊張や不安を解消できるよう対応し、法的側面からのサポートができればと思います。敷居はバリアフリーです。あなたの不安を解消するために全力でサポート致します。

「交通事故で頚椎を骨折した場合、完治までにはどのくらいかかる?」
「治療を継続しても関節の曲がりにくさなどが残ってしまったらどうすればいい?」

交通事故に遭い、頚椎(首の骨)を骨折してしまった方の中には、このような不安や悩みをお持ちの方もいらっしゃると思います。

本記事では、頚椎骨折が完治するまでの期間の目安や治療方法、治療を継続した後に症状が残った場合の対処法などについてご説明します。

1.頚椎骨折の完治までの目安期間と主な治療方法

頚椎は、背骨(脊柱)のうち、首の部分を構成する骨です。

交通事故などで強い衝撃が首に加わることで、頚椎を骨折することがあります。

頚椎の骨折を「頚椎損傷(けいついそんしょう)」と言ったりもします。

似た言葉である「頚髄損傷(けいずいそんしょう)」は、骨折ではなく神経の損傷を意味します。

頚椎は、頭を支え、可動させるという重要な機能があることから、この部分に骨折が生じると、可動域の制限や強い痛みが生じるなど、日常生活に大きな支障が生じます。

以下では、頚椎を骨折した場合に完治までに要する目安の期間や主な治療方法について解説します。

(1)完治までの目安の期間

頚椎の骨折が完治するまでは、個人差も大きいですが、概ね6か月程度が目安です。

まず、骨が癒合するまでに1~3か月程度かかることが多いです。

骨の割れ方やずれ方などによっても変動しますが、特に高齢の場合には3か月以上かかる場合も珍しくはないので、医師とも相談しながら適切な期間にわたって治療を継続することが重要です。

また、骨が癒合すれば治療が終了するわけではなく、多くの場合その後にリハビリ治療を行う必要があります。

そのため、完治までの期間には、骨が癒合するまでの期間とリハビリ治療の期間が含まれていることを押さえておきましょう。

(2)主な治療方法

頚椎は首の部分の骨であり、7つの骨から構成されています。

どの部位がどのように折れているかによって、採られる治療方法も変わってきますが、大きく分けると以下のような治療方法があります。

頚椎骨折の主な治療方法

  • 保存療法
  • 手術療法

順にご説明します。

#1:保存療法

保存療法とは、ギプスや添え木により首回りを固定し、骨癒合をするのを待つ方法です。

骨折が比較的軽く、受傷患部が安定している際に行われます。

もっとも、患部を固定する場合は安静にすることが求められるため、数週間から数か月程度の入院が必要な場合が多いです。

#2:手術療法

骨折後の破片が転移してしまっていたり、骨折後の骨がずれてしまっていたりすると、ギプスによって固定をしているだけでは治癒しません。

そのため、手術により骨折部をボルトなどで固定する必要があります。

骨折の症状が重度で、頚髄を傷つけるおそれがあるなど、受傷患部が不安定な際に特に行われます。

この治療によって頚椎の不安定性が除去できれば、数週間から1か月程度で入院が終了する場合が多いです。

2.治療が終了しても症状が残っている場合の対処法

目安となる6か月にわたって治療を継続した後、症状が完治する場合もあれば、何らかの症状が残る可能性もあります。

治療が終了しても何らかの症状が残っている場合には、後遺障害等級の認定申請を行ったうえで加害者側と示談交渉を行いましょう。

(1)後遺障害等級の認定申請を行う

頚椎の骨折による後遺症で認定される可能性がある等級と内容は以下のとおりです。

後遺障害等級 認定基準
6級5号 脊柱に著しい変形又は著しい運動障害を残すもの
8級2号 脊柱に中程度の変形又は運動障害を残すもの
11級7号 脊柱に変形を残すもの
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号 局部に神経症状を残すもの

また、後遺障害等級の認定を受けることで、等級に応じた後遺障害慰謝料や逸失利益を受け取ることができます。

認定の手続の流れは、以下のとおりです。

後遺障害等級の認定申請の流れ

1.症状固定の判断を受ける
2.医師に後遺障害診断書を作成してもらう
3.認定申請を行う

具体的に見ていきましょう。

#1:症状固定の判断を受ける

症状固定とは、一定期間治療を継続した後に症状が一進一退となり、これ以上治療を継続しても症状がよくならない状態をいいます。

そして、症状固定後残存している症状が後遺症であり、症状固定していることが後遺障害等級の認定申請を行う前提となります。

そのため、医師とこれ以上の有効な治療がないか等について相談をし、症状固定であるという判断をしてもらう必要があります。

症状固定の意義については、以下の記事で詳しく解説していますので、合わせてご確認ください。

症状固定とは何?重要性やその後の流れについてご説明します

#2:医師に後遺障害診断書を作成してもらう

症状固定の診断を受けた後は、後遺障害診断書を作成してもらいましょう。

後遺障害診断書には、以下の項目が記載されます。

後遺障害診断書の記載項目

  • 被害者の基本情報
  • 受傷日時
  • 症状固定日
  • 入通院期間
  • 傷病名
  • 既往症
  • 自覚症状
  • 他覚所見および検査結果
  • 緩解の見通し

頚椎の骨折では、まず事故直後に骨折があることが画像上判断ができることが大前提です。

そして、その骨折が治療を経てどのように変わったかという画像所見が重要となります。

骨折の程度がレントゲンやCT、MRIなどの画像検査の結果から明らかになっていることが必要です。

また、骨折による痛みや痺れといった神経症状による等級認定を目指す場合には、画像検査の他にも、神経学的検査を受ける必要がある場合もあります。

このように、認定を目指す等級に応じて、必要な検査を受けておくことが大切です。

また、日常生活や仕事を行う上でどのような支障が出ているかについても、具体的に伝えて記載してもらうようにしましょう。

後遺障害診断書の作成が終わった段階で内容を確認し、自分の症状と矛盾がない記載となっているかについて確認しておくことが何よりも大切です。

#3:認定申請を行う

後遺障害診断書の作成を受けた後には、認定申請を行いましょう。

認定の方法は、加害者側の任意保険会社に後遺障害診断書を提出する事前認定と加害者側の自賠責保険会社に必要書類を提出して行う被害者請求があります。

事前認定では、後遺障害診断書以外の必要書類については加害者側の任意保険会社が準備して審査機関に提出するため、書類作成や収集の手間が省けます。

もっとも、書類の内容確認や追加資料の添付・提出ができない点で、被害者にとっては不透明性が残る方法といわざるを得ません。

これに対して、被害者請求では、等級認定に必要な書類の作成・収集を被害者自身が行うため、適切な等級認定を受けるために書類の記載や添付資料などに工夫をこらすことができます。

適切な後遺障害等級の認定を受けるためには、被害者請求による方法がおすすめです。

(2)認定結果をもとに示談交渉を行う

後遺障害等級の認定を受けた後には、認定結果に基づいて加害者側と示談交渉を行いましょう。

認定された等級に応じて、後遺障害慰謝料の相場や逸失利益が変動します。

#1:後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料は、後遺障害を負ったことによる精神的苦痛に対する補償です。

頚椎の骨折については、後遺障害慰謝料の相場は以下のとおりです。

後遺障害等級 自賠責基準 裁判所(弁護士)基準
6級5号 512万円(498万円) 1180万円
8級2号 331万円(324万円) 830万円
11級7号 136万円(135万円) 420万円
12級13号 94万円(93万円) 290万円
14級9号 32万円(32万円) 110万円

※()内は2020年3月31日以前に発生した交通事故の場合

裁判所(弁護士)基準とは、過去の裁判例に基づいて定められた基準で、最も高額となる基準です。

弁護士が示談交渉を行う際には、この基準を用いて交渉を進めます。

被害者自らが示談交渉の際に用いることもできますが、ほとんどの場合、相手方保険会社がこれに応じることはありません。

そのため、裁判所(弁護士)基準による適切な金額を受け取るためには、弁護士に交渉を依頼することがおすすめです。

#2:逸失利益

逸失利益は、後遺障害を負ったことによる将来の収入の減少に対する補償です。

金額は、「1年あたりの基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」という計算式に基づいて算定されます。

労働能力喪失率は、後遺障害等級に応じて以下のように決められています。

後遺障害等級 労働能力喪失率
6級 67%
8級 45%
11級 20%
12級 14%
14級 5%

もっとも、職業や後遺障害の程度、実際の支障の程度などによっては、必ずしも上記の表のとおりになるとは限りません。

そのため、逸失利益について示談交渉で争いが生じた場合には、仕事への実際の影響の程度などを具体的に主張・立証していくことが求められます。

3.頚椎骨折の場合の示談交渉のポイント

交通事故による頚椎骨折の場合には、以下の点に注意しながら示談交渉を進める必要があります。

頚椎骨折における示談交渉のポイント

  • 通院や治療を途中でやめない
  • 入院期間を適切に計算する
  • 逸失利益を適切に計算・主張する

順にご説明します。

(1)通院や治療を途中でやめない

医師の指示に従い、通院や治療を継続することが必要です。

具体的には、医師から完治あるいは症状固定の診断が出るまでは、通院を続けましょう。

骨折の場合、まだ症状が残っているにもかかわらず骨癒合した時点で通院をやめてしまうというケースがあります。

しかし、リハビリなど必要な治療を行わずに治療をやめてしまうと、その後に後遺症が残ったとしても交通事故と後遺症の因果関係が立証できず、後遺障害等級の認定を受けられないリスクがあります。

そのため、治療費の一括支払対応が打ち切られた場合であっても、健康保険を利用するなどして、負担を軽減しながら通院や治療を継続しましょう。

(2)通院期間を適切に計算・主張する

示談交渉では、以下のような損害項目を示談金として受け取ることができます。

主な損害項目

  • 治療費
  • 傷害慰謝料(入通院慰謝料)
  • 休業損害
  • 後遺障害慰謝料
  • 逸失利益

このうち、傷害慰謝料(入通院慰謝料)は、治療期間あるいは通院日数に基づいて算出されます。

頚椎骨折の場合、退院後にギプス装着による自宅療養になったケースでは、通院日数が少なくなり、加害者側から減額の主張がなされる可能性があります。

もっとも、ギプス装着による自宅療養が医師による指示であるといった正当な理由がある場合には、減額の事由とはなりません。

また、頚椎骨折では、固定して安静にすること自体が治療方法となる場合もありうるため、示談交渉では通院期間を適切に計算した上で交渉を行うことが大切です。

(3)逸失利益を適切に計算・主張する

頚椎骨折の場合には、逸失利益の算定で争いとなる場合があります。

具体的には、後遺障害等級11級7号は、背骨の変形障害を内容としていますが、変形自体が労働能力に与える影響や労働能力の喪失が存続する期間などについて争われます。

そのため、後遺障害が残ったことによって、日常生活や仕事を行う上でどのような影響が生じているのかを具体的に主張・立証することが重要です。

もっとも、このような主張・立証を行うことは容易ではありませんので、適切な損害の算定・交渉を行う場合には、弁護士に依頼することがおすすめです。

まとめ

本記事では、交通事故による頚椎骨折の完治期間や治療方法、治療を継続した後に症状が残った場合の対処法などについて解説しました。

適切な期間や方法で治療を受けることで、何らかの症状が残った場合にも、適切な賠償を受けることができます。

交通事故によって頚椎骨折を負った場合には、後遺障害等級の認定手続や示談交渉に備えて、なるべく早期に弁護士へ相談することをおすすめします。

弁護士法人みずきでは、これまでに交通事故の問題や後遺障害等級の認定手続、示談交渉に対応してきました。

経験豊富な弁護士が丁寧にお話を伺いますので、交通事故による頚椎骨折にお悩みの方はお気軽にご相談ください。

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皆様が勇気を振り絞ってご相談をしていただければ、後は私どもが皆様の緊張や不安を解消できるよう対応し、法的側面からのサポートができればと思います。敷居はバリアフリーです。あなたの不安を解消するために全力でサポート致します。