個人再生を行うと車はどうなる?手続に及ぼす影響や手元に残す方法について解説

「個人再生をすると車は処分されるのか」
「個人再生によって車にどんな影響が生じるのか」

借金の返済ができなくなり、個人再生を行うことを検討されている方の中には、所持している車についてこのような疑問をお持ちの方もいると思います。

個人再生は、借金の返済が困難であることを裁判所に申し立て、借金総額に応じて減額された金額を原則3年で返済する再生計画案の認可を受け、それに従って返済する手続です。

借金総額が5000万円を超えないことや安定した収入を得る見込があることなどが手続を行う要件となりますが、最大で10分の1まで借金の減額を受けることができます。

そのため、同じ債務整理の手続である任意整理と比較すると、借金の返済負担を大幅に軽減させることが可能です。

また、自己破産とは異なり、資産価値の高い財産も換価処分が行われることはないため、手元に残しながら手続を行うことができる可能性が高い点にも特徴があります。

もっとも、車については、自動車ローンの返済状況によって生じる影響に違いがあることに注意が必要です。

本記事では、個人再生を行うことで車にどのような影響が生じるのかについて解説します。

なお、個人再生の詳細については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。

2025.01.31

個人再生とは?弁護士が手続の概要やメリット・デメリットなどを解説

また、債務整理を行うことと車のローンの関係については、以下の記事も参考になります。

2022.08.31

債務整理をすると返済中の車のローンはどうなる?債務整理と車のローンの関係性について

1.個人再生を行うことによる車への影響

結論から述べると、個人再生を行ったとしても、原則として車に影響が生じることはありません。

そのため、手続中も問題なく車を利用することができます。

一方で、車を購入する際には自動車ローンを組むことが一般的で、ローンが残っている場合には個人再生の影響が生じる点に注意が必要です。

個人再生では、すべての借金を対象として手続を行う必要があり、自動車ローンについても対象に含められます。

したがって、自動車ローンの返済状況によっては、影響が生じる可能性があるのです。

具体的には、以下の2つのパターンによって生じる影響が異なります。

個人再生を行うことによる車への影響

  1. 自動車ローンを完済している場合
  2. 自動車ローンの残債務がある場合

順にご説明します。

(1)自動車ローンを完済している場合

個人再生を申し立てた時点で自動車ローンを完済している場合には、車の利用に影響は生じません。

その理由は、自動車ローンの残債務がない場合には、販売会社や信販会社が車を引き上げることがないからです。

そのため、手続中であっても、今までと同じように利用し続けることができます。

もっとも、その車の評価額が高額になる場合には注意が必要です。

これは、個人再生における最低弁済額は、「清算価値保障原則」という原理に従って修正されることに理由があります。

清算価値保障原則とは、個人再生による最終的な返済額は、債務者が自己破産を選択した場合に債権者に配当される金額を下回ってはならないという考え方です。

自己破産では、債務者が一定額以上の財産を所有している場合には、手続の中で換価処分が行われ、債権者に配当が行われます。

したがって、債務者が一定額以上の車を所有している場合には、これをお金に換えて債権者に配当されてしまうため、自己破産を行うと車を手放さなければならない可能性が高いです。

しかし、すでに述べたように、個人再生では換価処分が行われることはなく、高額な資産がある場合にも引き続き手元に残すことができます。

そのため、自動車が高額であれば、債務者が個人再生よりも自己破産をした方が債権者はより多く返済してもらえるケースも起こりえるのです。

そうなれば、自己破産と個人再生の間で公平性を保てなくなるため、債務者が個人再生を行う際に高額な財産を所有している場合には、一定額が最低弁済額に上乗せされるようになっています。

つまり、債権者に対しては破産をした場合と同等の回収ができ、債務者に対しては財産を残せるという双方へのメリットを示せることとなります。

なお、清算価値として計上されるのは、車だけでなく、住宅や預貯金などの財産も対象となります。

個人再生における清算価値保障原則の詳細や清算価値の算定方法などについては、以下の記事もご覧ください。

2023.12.27

清算価値保障原則とは?弁護士が伝えたい個人再生の留意点

(2)自動車ローンの残債務がある場合

自動車ローンの残債務がある状態で個人再生を申し立てると、車を手元に残すことは困難なケースが多いといえます。

その理由は、自動車ローンを組んでいる場合には、債権者が車に所有権留保を設定しているのが一般的であるからです。

所有権留保とは、債務者が返済できなくなった場合に債権者が目的物を引き上げ、そこから残債務を回収することができる権利です。

債権者は、債務者が返済できなくなった場合に、所有権留保を行使すると、目的物を引き上げ、そこから残債務を回収することができます。

つまり、所有権留保が付されている場合には、ローンの返済が完了するまでは債務者に所有権がなく、信販会社や販売会社に権利が留められているということになるのです。

さらに、債務者が個人再生を申し立てたという事実は、返済ができなくなったことを意味するため、債権者は所有権留保に基づいて車を引き上げてしまいます。

これによって、車を利用し続けることができなくなってしまう可能性があることに注意が必要です。

なお、自動車ローンを完済できていないケースでも、所有権留保が付されていない場合には車が引き上げられることはありません。

例えば、銀行や信用金庫などで組んだ自動車ローンの場合には、所有権留保が付されないことも多くあります。

車に所有権留保が付されているか否かについては、車検証の「所有者の氏名又は名称」を確認すれば分かります。

所有者の欄に債務者ご自身の名前が記載されている場合には、所有権留保が付されていないことを意味するので、事前に確認しておくことが大切です。

このように、自動車ローンの残債務がある場合でも、すべてのケースで車が引き上げられるわけではないことも押さえておきましょう。

2.自動車ローンの残債務がある場合に避けるべき行為

上記で述べたように、自動車ローンを完済していない状態で個人再生を申し立てると、車が引き上げられてしまう可能性が高いです。

これに対して、ローンを払い終えている場合には、車を失ってしまうことはないといえます。

しかし、以下のような行為は個人再生の手続に重大な影響を与えることがある点に注意が必要です。

自動車ローンの残債務がある場合に避けるべき行為

  1. 自動車ローンの残債務だけを優先的に返済する
  2. 自動車ローンを裁判所に申告しない

車を手放したくないことを理由にこのような対応をとることがないようにしましょう。

(1)自動車ローンの残債務だけを優先的に返済する

自動車ローンの残債務だけを優先的に返済する行為は避けなければなりません。

車に所有権留保が付されている場合、自動車ローンを完済することで、所有権は債務者に移転します。

しかし、それを目的として自動車ローンの残債務のみを返済することは避けましょう。

このような対応は、一部の債権者のみを優遇する行為であり、「偏頗弁済」にあたります。

個人再生の手続は、すべての債権者を平等に扱うべきとする「債権者平等の原則」という考えに基づいて進められます。

そのため、一部の債権者のみを優遇する偏頗弁済は、この債権者平等の原則に反するものとして、法律によって禁止されているのです。

万が一、偏頗弁済を行ったことが個人再生の手続中に判明した場合には、支払った金額が最低弁済額に上乗せされてしまう可能性があります。

また、不誠実な申立てと裁判所に評価され、手続を棄却されることもあるため、注意が必要です。

個人再生の手続が認められなかったり途中で終了したりすれば、借金問題を解決することにはなりません。

そのため、車を手元に残したいという理由でローンの残債務を優先して支払い終わることは避ける必要があります。

なお、個人再生において偏頗弁済を行うリスクについては、以下の記事もあわせてご覧ください。

2024.01.30

個人再生中に偏頗弁済をするとどうなる?

(2)自動車ローンを裁判所に申告しない

自動車ローンの存在自体を裁判所に申告しないことも避けるべき行為です。

個人再生を申し立てる際には、裁判所に対して債権者一覧表という書類を提出する必要があります。

裁判所は、債権者一覧表に記載されている内容をもとにして借金の減額を認めるか否かなどについて判断します。

また、債権者は債務者が個人再生を行うことで、貸し付けたお金の全額を回収できなくなるリスクがあります。

そのため、裁判所は債権者に対して、手続に参加して意見を述べたりする機会を保障しなければなりません。

その際にも、債権者一覧表の記載内容が基準とされるため、債権者一覧表を正確に作成することは、裁判所および債権者に対しても重要な意味を持ちます。

車を引き上げられてしまうことを懸念し、自動車ローンについて債権者一覧表に記載しない行為は法律で禁止されており、これが発覚した場合には申立てが棄却されてしまう可能性が高いです。

また、悪質性が高いと裁判所に評価された場合には、詐欺再生罪に問われるリスクもあります。

そのため、自動車ローンの残債務だけでなく、借金についてはすべて正直に申告しなければなりません。

なお、個人再生における官報公告の意義や官報に掲載される内容・タイミングについては、以下の記事で詳しく解説しています。

2022.09.30

個人再生における官報公告とは?影響や公告がされるタイミングなどについて弁護士が解説

3.車を手元に残しながら借金問題を解決する方法

自動車ローンの残債務がある場合には、上記のような対応を個人再生の準備中や手続中に行ってしまうと、手続の進行に影響を及ぼす可能性があります。

特に申立てが認められずに手続が終了してしまうと、借金問題を解決できなくなる可能性が高いです。

もっとも、車を手放すことなく手続を行う方法がまったくないわけではありません。

具体的には、以下のような対応によって車を手元に残しながら借金問題を解決できる可能性があります。

車を手元に残しながら借金問題を解決する方法

  1. 親族や友人に残債務を払ってもらう
  2. 債権者との間で別除権協定を結ぶ
  3. 任意整理を行う

順にご説明します。

(1)親族や友人に残債務を払ってもらう

所有権留保が付されている場合にも、親族や友人などに第三者弁済をしてもらうことで車を手元に残すことができます。

債務者本人が残債務を返済してしまうと偏頗弁済にあたるものの、第三者が支払った場合には偏頗弁済にはあたりません。

もっとも、親族に払ってもらう場合には、同居している家族以外に依頼するようにしましょう。

同居家族は債務者と同一の家計を営むことから、第三者弁済とは評価されないことがあるため、注意が必要です。

なお、親族や友人に第三者弁済を依頼するときは、裁判所から借入れと評価されないように十分に注意することも求められます。

あくまで、援助として、後日の返済を約束してはいけません。

以上のことから、第三者弁済を検討する場合も、まずは弁護士に相談することが重要です。

(2)債権者との間で別除権協定を結ぶ

第三者弁済のほかには、販売会社や信販会社などの所有権留保を付している債権者との間で別除権協定を結ぶことで引き上げを回避できる場合があります。

別除権協定とは、ローンの残債務を支払い続ける代わりに車の引き上げを行わないことを約束するものです。

ただし、これは個人再生における債権者平等の原則に反してしまうため、当事者間で勝手に決めることはできず、裁判所の許可を得る必要があります。

そして、この別除権協定が認められるためには、これを認めることがその他の債権者のためにもなるという状況が必要となります。

例えば、運送業やキッチンカーなど、車を引き上げられることで債務者の収入が著しく減少してしまうなどの例外的な事情が認められる場合にのみ認められる可能性があるにとどまります。

(3)任意整理を行う

個人再生ではなく、任意整理を行うことで、自動車ローンの残債務を手続の対象から除外することができます。

任意整理は、将来的に発生する利息のカットと長期分割返済(概ね5年程度)を債権者と直接交渉し、合意に基づいて返済を行う手続です。

個人再生では借金の元本部分まで減額を受けることができる一方、任意整理では将来的に発生する利息のみが減額の対象となるため、減額幅は大きくない傾向にあります。

一方で、任意整理の場合には、債務者が手続の対象とする債務を選ぶことができる点が大きな特徴です。

つまり、自動車ローンを手続の対象から除外し、引き続き返済を続けることができれば、車を引き上げられることなく借金問題を解決することができます。

なお、自動車ローンの残債務を対象から除外した場合には、従来の契約内容に従って返済を続けなければなりません。

さらに、任意整理を行ったとしても、自動車ローンの返済が滞ってしまった場合には、信販会社や販売会社などの債権者に所有権留保に基づいて車を引き上げられてしまうことになるため、注意しましょう。

任意整理と個人再生の違いや選択する際のポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。

2023.08.31

任意整理と個人再生の違いは?手続の概要や適しているケースも解説

4.弁護士に相談・依頼するメリット

車を所有している状態で個人再生を行う場合には、自動車ローンが完済できているか否かに関わらず、何らかの影響が生じる可能性があります。

しかし、任意整理を行うことで、車が引き上げられるリスクを回避することが可能です。

もっとも、どのような手続を行うべきかは、債務整理に関する知識や経験がなければ判断が難しい場合がほとんどといえます。

そのため、財産や収入状況を踏まえて、ご自身がどのような手続を行うべきか判断できない場合には、なるべく早期に弁護士に相談することがおすすめです。

弁護士に相談・依頼することのメリットには、以下のようなものがあります。

弁護士に相談・依頼するメリット

  1. 自身に適した解決方法の提案を受けることができる
  2. 弁護士に依頼することで債権者の督促や取立てが停止する
  3. 手続の準備のサポートを受けることができる
  4. 裁判所などへの対応を一任できる

順に解説します。

(1)自身に適した解決方法の提案を受けることができる

弁護士に相談することで、自身に適した解決方法の提案を受けることができます。

債務整理には、個人再生のほかに任意整理や自己破産など、いくつかの選択肢があり、どれを選択するべきかは、債務者の残債務額や返済能力によってさまざまです。

そのため、どの解決方法が最適かについて、債務者本人が判断することは難しいといえます。

弁護士であれば、債務者に最適な解決方法を提示することが可能です。

(2)弁護士に依頼することで債権者の督促や取立てが停止する

弁護士に債務整理の依頼をすることで、債権者からの督促や取立てを停止させることができます。

債務者から債務整理の依頼を受けた弁護士は、各債権者に対して受任通知を送付します。

この通知を受けた債権者は、それ以降、債務者に対して直接督促等をすることができません。

そのため、一時的に債権者に対して返済する必要がなくなり、その間を利用して生活を立て直したり、弁護士費用や裁判所費用を積み立てたりすることができます。

(3)手続の準備のサポートを受けることができる

弁護士に依頼することで、手続の準備のサポートを受けることもできます。

債務整理を行う場合、手続によっては必要な書類や資料を揃えなければなりません。

専門的な知識がなければ、準備の段階で挫折することもあり、解決に至るまで時間がかかる可能性が高いです。

特に個人再生と自己破産は裁判所を通して行うため、書類や資料に不備があれば、手続が途中で失敗してしまう事態にもなりかねません。

弁護士であれば、手続に必要な書類や資料について熟知しているため、そのようなリスクを回避しつつ準備を進めることが可能です。

そのため、弁護士のサポートを受けることで、スムーズに手続の準備を進めることができ、借金問題の早期解決を図ることにもつながります。

(4)裁判所などへの対応を一任できる

弁護士に裁判所などへの対応を一任することもできます。

任意整理であれば、債権者と直接交渉しなければならず、個人再生や自己破産であれば、裁判所を介して手続を進めなければなりません。

これらの対応を行う際には専門的な知識や経験が求められることもあり、債務者本人で対応を進めることには困難が伴います。

特に個人再生の場合には、裁判所への対応を誤ると、手続が途中で中止(終了)となったり、再生計画案が取り消されたりして、手続に失敗するリスクがあります。

弁護士に対応を一任することで、そのようなリスクを回避することが可能です。

また、債務者本人が対応を行わなければならない場合にも、あらかじめ弁護士からアドバイスやサポートを受けることができ、手続が失敗してしまう可能性を抑えることができます。

まとめ

自動車ローンの返済状況によって、個人再生を行うことが車の利用に与える影響は異なります。

ローンの返済が残っている状態で個人再生を行う場合には、車を手放さなければならない可能性がある点に注意が必要です。

また、自動車ローンを完済していても、車に一定額以上の査定がつく場合には、最低弁済額が高額になる可能性もあります。

このように、車を所有している場合に個人再生を行うと、影響が生じるケースもあります。

そのため、どのような解決方法が適しているかの判断が難しい場合には、まずは弁護士に相談することがおすすめです。

弁護士法人みずきでは、債務整理に関する相談を無料で受けて受けておりますので、個人再生を行うことを検討されている方は、お気軽にご相談ください。

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執筆者 金子 周平 弁護士

所属 栃木県弁護士会

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