過払い金を自分で計算する方法とは?発生の条件や注意点も解説

過払い金を自分で計算する方法とは?発生の条件や注意点も解説

執筆者 花吉 直幸 弁護士

所属 第二東京弁護士会

社会に支持される法律事務所であることを目指し、各弁護士一人ひとりが、そしてチームワークで良質な法的支援の提供に努めています。

「過払い金って自分で計算できるのだろうか」
「昔の借金に過払い金が発生しているなら請求したい」

過払い金は自分で計算することができますが、請求できる金額の計算が大変であったり、法的争点を考慮して正確に計算するのが難しかったりするので、注意しなければなりません。

この記事では、過払い金を自分で計算する方法のほか、過払い金が発生する仕組みや条件について解説します。

1.自分で過払い金を計算する方法

自分で過払い金を計算する方法

自分で過払い金を計算する前に、利息を算出するための基礎知識を確認しましょう。

<利息の計算方法>
利息=借入金×金利÷365×利用日数

<法律上の上限金利>

借入金 上限金利(年間)
10万円未満 20%
10万円以上100万円未満 18%
100万円以上 15%

利息を求める式に貸金業者との約定利率と法律上の上限金利を当てはめて計算し、その二つを差引することで払いすぎている過払い金を算出できます。

過払い金の具体的な計算方法を借入の状況ごとに見ていきましょう。

(1)完済している場合の計算方法

借金を完済している場合の計算方法を確認しましょう。

たとえば、30万円を年20%の利息で借り、2年かけて返済したとします。

この場合、すでに支払った利息は、以下のとおりです。

  • 30万円×20%÷365×730日(2年)=約12万円

法律で定められた上限金利に当てはめて、正しい利息を計算します。

  • 30万円×18%÷365×730日(2年)=約10万8000円

次に、すでに支払った利息から正しい利息を差し引いて、過払い金を算出します。

  • 12万円-10万8000円=1万2000円

このケースだと、過払い金は約1万2000円です。

ただし、実際の過払い金の計算において、毎月多く支払った分の過払い金の金額はその時点で残っている借入金の元金に支払ったものとして計算しており、翌月の支払いの際には少なくなった元金に利息制限法所定の18%の年利で計算するため、差額は元金を一緒にしたときと比べて大きくなります。

また、その貸付金の元金は毎月金利の差額分さらに減っていくため、差額も毎月広がっていきます。実際には先ほど計算した額よりも大きくなると考えましょう。

(2)借金が残っている場合の計算方法

同じ会社で借入と完済を繰り返している場合の計算方法を確認しましょう。

120万円を年25%の利息で借り1年かけて完済したものの、期間を空けずに5万円の借入をして返済中だとします。

一連の借入をすべて同一の借金と認められた場合の計算方法は、以下のとおりです。

まず、完済した借金での過払い金を算出します。

すでに支払った利息を求めましょう。

  • 120万円×25%÷365×365日(1年)=約30万円

法律上の上限金利を当てはめて、正しい利息額を算出します。

  • 120万円×15%÷365×365日(1年)=約18万円

すでに支払った額から正しい額を差引いて、仮の過払い額を求めましょう。

  • 30万円-18万円=約12万円

今回のケースだと、現在も借入金が残っていることがわかります。

この場合、過払い金は借入金と相殺します。

  • 12万円-5万円=約7万円

過払い金と借入金を相殺したことにより、2回目の借入は完済扱いにでき、返済する必要はありません。

さらに、約7万円を過払い金として返還請求することができるという結果になります。

2.過払い金が発生する仕組みと条件

過払い金が発生する仕組みと条件

過払い金が発生する仕組みと条件を確認しましょう。

そもそも過払い金とは、消費者金融やクレジット会社に対してカードローンやキャッシングの返済で過剰に支払ったお金のことです。

過払い金が発生する理由として、グレーゾーン金利で貸付を受けていたことが理由になります。

グレーゾーン金利とは、利息制限法と出資法でそれぞれ定められた上限金利の差のことです。

上限金利の低い利息制限法だと、上限を超えても刑事罰はありません。

一方、出資法の上限金利は利息制限法より高めに設定され、上限を超えると刑事罰の対象です。

このような利息制限法の上限利率を超える違法な利率でありながら出資法の上限利率は超えない利率で過去多くの消費者金融やクレジットカード会社が貸付を行っていました。

このグレーゾーン金利での貸付は、出資法の上限利率は超えていませんが利息制限法の上限利率は超えていますので、違法な金利として返還を求めることができるのです。

グレーゾーン金利を超える利率での借入をしていた経験のある方は、過払い金請求できる可能性があります。

過払い金請求できる可能性のある条件を確認しましょう。

(1)2010年6月以前に借入をしている

2010年6月18日よりも前に一番最初の借入をしていた場合は、過払い金を請求できる可能性があります。

なぜなら、2010年6月18日に貸金業法改正が完全施行され、多くの消費者金融やクレジットカード会社がグレーゾーン金利での貸付を止めたため、それ以降は利息制限法の上限利率内で貸付をしているためです。

言い換えれば、2010年7月以降から初めて借入を行った場合だと過払い金が生じない可能性が高いです。

過払い金を請求できるか確認したい場合は、一番最初の借入時期を確認しましょう。

(2)時効の10年が過ぎていない

借金を完済した日から10年以内であれば、過払い金の返還を請求できます。

なぜなら、過払い金の返還請求の時効は、完済した日から10年以内と民法の規定によって定められているからです。

たとえば、2005年に借入した借金を10年かけて返済をして2015年に完済した場合、時効は2025年のため2022年であれば過払い金の返還請求ができます。

最初の借入時期が古い借入でも完済から10年経っていないケースなら、過払い金の返還を請求できる可能性があるのです。

3.過払い金を自分で計算する時の注意点

過払い金を自分で計算する時の注意点

過払い金を自分で計算する時の注意点を把握しておきましょう。

自力で過払い金を算出した時に不備があると発生する過払い金が不正確になってしまって請求ができずに本来なら戻ってくるはずのお金を取り戻せなくなるかもしれません。

どのような方法で進めるのが良いのか順番に見ていきましょう。

(1)まずは取引履歴の開示を請求する

過払い金を計算するためには、まず借入時の金利や借入額、返済額を調べるために、返済していた期間の取引履歴を貸金業者に請求する必要があります。

正確な過払い金を算出するには、正式な取引履歴をもとに計算しなくてはなりません。

ご自身で貸金業者に取引履歴を請求することもできます。

債務が残っているケースで支払いも停止する旨を伝えてしまうと、事故情報が登録される可能性もあるため、貸金業者とのやり取りでは慎重に取引履歴の開示を求めることを伝えましょう。

取引履歴の開示も弁護士に依頼してスムーズに進めることができます。

(2)シミュレーションや自動チェッカーを鵜呑みにしない

インターネット上にある過払い金の計算シミュレーションや自動チェッカーを鵜呑みにするのは危険です。

以下2つの理由により、インターネット上の計算は正確とは言い切れません。

  • 過払い金の計算は複雑で法的な争点もある
  • 貸金業者によって利率が大きく異なる

法的な争点も考慮して計算をしないと正確な過払い金を算出できないことも少なくありません。

過払い金が生じる貸付取引の多くのケースで、借入と完済を繰り返しています。

中には一度借入金を完済して、しばらくした後新たに借り始めるケースもあります。

この場合、いつまでの期間の取引を1つの取引としてカウントするかが重要になります。

途中で完済がある場合は、そこで取引が途切れてしまってその完済の日から時効が進行してしまうこともあるためです。

また、昔の借入だと貸金業者が倒産をしていて現在存在していないケースもあります。

シミュレーションや自動チェッカーはあくまでも過払い金の目安として確認するものです。

正確な金額は、弁護士に確認することをおすすめします。

(3)過払い金が発生しない借入がある

すべての借入に過払い金が発生するとは限らないので注意しましょう。

たとえば、以下のケースでは、貸付の金利が利息制限法の上限利率内のため、過払い金は発生しません。

  • 銀行や信用金庫からの借入
  • 奨学金や日本政策金融公庫からの借入
  • 法定金利を厳守していた貸金業者からの借入

銀行や日本政策金融公庫などの金融機関は以前から利息制限法の上限利率を守っています。

また、いわゆる消費者金融であっても、2010年以前から利息制限法の上限利率を遵守している業者は存在するため、グレーゾーン金利で貸付をしていたとは限りません。

2010年6月18日以前に消費者金融やクレジットカード会社から一番最初の借入を行ったキャッシングやカードローン、リボ払いのお取引は取引履歴を取り寄せて金利の確認をすることが大切です。

まとめ

過払い金の計算は自分でもできますが、法的争点を考慮して正確に計算するのは難しいです。

計算式が複雑なため、誤った数字で計算してしまうことや、法的な争点を無視してシミュレーションの結果を鵜呑みにしてしまうことには注意をしましょう。

もし、正確な過払い金を把握し請求したいと考えているのであれば、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

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執筆者 花吉 直幸 弁護士

所属 第二東京弁護士会

社会に支持される法律事務所であることを目指し、各弁護士一人ひとりが、そしてチームワークで良質な法的支援の提供に努めています。