ローンで過払い金が発生する条件とは?請求時の注意点や請求の流れ

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。

「ローンの返済でも過払い金が発生することはあるのか?」
「ローンで過払い金が発生していた場合は、どうしたらいいのか?」

現在ローンを組んでいる方の中には、過払い金が発生しているのではないかと思われている方もいるのではないでしょうか。

本記事では、ローンで過払い金が発生する条件やローンの返済中に過払い金返還請求をする際の注意点、請求の主な流れについてご紹介します。

過払い金が発生していても、いくつかのリスクが発生するので、弁護士と相談しながら検討してみましょう。

1.全てのローンが過払い金の対象ではない

全てのローンが過払い金の対象ではない

カードローンや消費者金融から借入れを行っている場合は、過払い金が発生している可能性があります。

しかし、銀行でローンを組んでいる場合(住宅ローンなど)、過払い金が発生することはありません。

のちほどご紹介しますが、過払い金が発生するかどうかは利息制限法の制限利率より高い金利で借入れしていることが条件になります。

銀行は、貸金業者に比べて金利を低く設定しており、もともと過払い金が発生するほどの金利で貸付けを行っていません。

そのため、銀行でローンを組んでいる方は、過払い金を請求することは難しいでしょう。

2.ローンで過払い金が発生する条件

ローンで過払い金が発生する条件

ローンで過払い金が発生する条件についてご紹介します。

主な条件は以下の2点です。

  1. 平成22年6月17日より前に借入れをしている
  2. 契約時の利率が利息制限法の制限利率を超えている

これらの条件に該当している方は、過払い金を請求できる可能性が高いです。

過払い金発生の条件を満たしていないか、契約内容を確認してみましょう。

(1)平成22年6月17日より前に借入れをしている

平成22年(2010年)6月17日より前に借入れをしていることが1つ目の条件です。

平成18年より前は、多くの貸金業者が、利息制限法の上限利率15~20%を超え(上限を超えていると無効とされます。)、出資法の上限利率29.2%を超えない(上限を超えると業者が刑事罰を受けます。)範囲の利率(「グレーゾーン金利」といいます。)での貸付けを行っていました。

グレーゾーン金利で計算した利息を受け取っても、貸金業法のみなし弁済規定により、有効になるものと考えられていたためです。

しかし、平成18年(2006年)1月13日、最高裁判所は、グレーゾーン金利での貸付けについて、みなし弁済は無効であるとし、グレーゾーン金利部分の利息については貸金業者に受け取る根拠がなく、無効であるとする判決を出しました。

この無効となったために債務者に返還しなければならなくなった利息が過払い金です。

その後、平成22年6月17日に改正出資法および貸金業法が施行されるまでの間に、貸金業者は金利の見直しを行っています。

そのため、平成22年6月17日より後に借入れを行っている場合は、過払い金が発生しません。

逆に言えば、貸金業者が金利を見直す前であれば、過払い金が発生している場合があります。

特に平成18年1月13日の最高裁判決が出るまでは、銀行を除く多くの貸金業者がグレーゾーン金利を利用していました。

まずは、いつ借入れを行ったのか確認してみましょう。

(2)契約時の利率が利息制限法の制限利率を超えている

契約時の利率が利息制限法の制限利率を超えていることも必要です。

利息制限法の制限利率は、以下のように定められています。

借入れ元本の額 年間の上限利率
10万円未満 20%
10万円以上100万円未満 18%
100万円以上 15%

参照:利息制限法 | e-Gov法令検索(第一条)

先ほどご紹介したように、平成18年(2006年)1月13日より前の時期は、多くの貸金業者が上記の利率を超えた金利で貸付けを行っていました。

契約時の金利が利息制限法の制限利率を超えている方は、高い確率で過払い金が発生しているでしょう。

3.過払い金返還請求をするときの3つの注意点

過払い金返還請求をするときの3つの注意点

過払い金返還請求をするときに注意しなければならないことがあります。

特に把握しておくべきことは以下の3点です。

  1. 過払い金返還請求には時効がある
  2. クレジットカードが利用できなくなる可能性がある
  3. 残高と相殺される

順にご紹介するので、いくつかリスクがあることを頭に入れておきましょう。

(1)過払い金返還請求には時効がある

過払い金返還請求には時効があることに注意しましょう。

請求期間は、完済日から10年と定められています。

そのため、すでに完済している方は、完済日から10年経過していないか確認しましょう。

ちなみに、2020年4月に民法が改正され、「権利を行使できることを知った日から時効を5年とする」という規定が追加されました。

つまり、2020年4月以降に完済した場合は、10年ではなく5年が消滅時効期間となります。

2020年4月以降に完済している方で、時効が成立している方はまだいませんが、最短で2025年4月には過払い金の請求ができなくなる方も現れるので、なるべく早めに過払い金返還請求の手続を進めましょう。

(2)クレジットカードが利用できなくなる可能性がある

クレジットカード会社やその系列会社に対して過払い金返還請求をすると、解約処理がされるため、その会社のクレジットカードが利用できなくなります。

ただし、過払い金返還請求の対象以外の会社のクレジットカードは継続して使用することが可能です。

そのため、クレジットカードに関連する会社を対象に過払い金返還請求する場合は、ほかの会社のクレジットカードを所持しておくことをおすすめします。

(3)残債務と相殺される

ローンを完済している場合は、過払い金がそのまま戻ってきますが、残債務がある状態で過払い金を請求する場合は残高と相殺されます。

過払い金が残債を上回っている場合は、上回った部分の支払を受けることができますが、残債を下回っている場合は、債務整理を開始した扱いとなるため注意が必要です。

債務整理を開始した事実は、信用情報機関に事故情報として登録されます。

信用情報機関に事故情報が登録されている間は、クレジットカードやローンの新規契約ができなくなり、過払い金返還請求の対象以外の会社のクレジットカードもいずれ使えなくなります。

残債より過払い金が多い場合は特に気にする必要はありませんが、過払い金の方が少ない場合は生活に支障が出る可能性があるため、弁護士に相談して過払い金返還請求後の対策をしておきましょう。

4.過払い金返還請求の主な流れ

過払い金返還請求の主な流れ

過払い金返還請求をするときの流れをご紹介します。

主な流れは以下のとおりです。

  1. 弁護士に相談
  2. 取引履歴の開示請求
  3. 引き直し計算による過払い金の調査
  4. 貸金業者への過払金返還請求
  5. 貸金業者との交渉・訴訟提起
  6. 過払い金の返還

まずは、過払い金の請求が可能か明らかにするため、弁護士に相談しましょう。

弁護士の調査により過払い金返還請求が可能と判明したら、弁護士と委任契約を締結して、弁護士に貸金業者へ受任通知を発送してもらいます。

その後は、弁護士が過払い金の調査や貸金業者との交渉を行い、場合によっては過払い金の返還請求訴訟を提起することになるでしょう。

貸金業者と交渉がスムーズに進めば、最短で半年も経たない内に過払い金が戻ってきますが、交渉が滞り訴訟を提起することになれば、1年以上かかる可能性があります。

長期的なスケジュールになる場合があるので、少しでも早めに行動に移しましょう。

まとめ

カードローンや消費者金融と契約したローンは、2つの条件を満たす必要はありますが、過払い金が発生している可能性があります。

ただし、過払い金返還請求には期限があり、クレジットカードの停止や信用情報機関への事故情報の登録などのリスクを意識しなければなりません。

自分で判断するのは難しいので、まずは弁護士に相談して、何をすべきなのかアドバイスをもらうようにしましょう。

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執筆者 野沢 大樹 弁護士

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私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。