競業避止義務違反と損害賠償の範囲

1.競業避止義務とは

フランチャイズ契約は、フランチャイズ契約中またはフランチャイズ契約終了後に、加盟店(又は元加盟店)が同種の事業を行うことを禁止する競業避止義務条項が置かれているのが通常です。

競業避止義務条項がおかれる理由は2つあります。

1つは、加盟店が同種の事業を展開することで本部のノウハウ等の機密条項が流失することを防ぐこと、1つは、本部が展開する事業の範囲の顧客を確保することです。

2.競業避止義務に違反した場合にどうなるか

加盟店(又は元加盟店)が、競業避止義務に違反して、本部と同種の事業を行った場合、どのようなリスクがあるのでしょうか。

考えられるのは、加盟店(又は元加盟店)が同種の事業を行ったことで、本部に金銭的な損害を与えたとして、その損害分の賠償請求をされる可能性があります。

(1)損害賠償の予定条項がある場合

フランチャイズ契約で競業避止義務条項が置かれている場合、予めこの条項に違反して同種の事業を営んだ場合に、いくらの損害を賠償しないといけないかという損害賠償の予定条項も置かれている場合があります。

この損害賠償の金額の予定条項が置かれている場合には、その内容をベースに損害賠償額を請求される可能性があります。

もっとも、契約に置かれた損害賠償の予定金額が不相当に高額である場合には、その内容が全部または一部無効となって、支払わなければならない損害賠償額が減少する場合もあります。

したがって、損害賠償額の予定条項が置かれているからといって、絶対にそこに定められた金額(又はその計算式から算出される金額)を支払わなければならないというものでもありません。

(2)損害賠償の予定条項がない場合

上記のように、損害賠償の予定条項が置かれていない場合、どの程度の損害を賠償しなければならないのでしょうか。

この場合には、フランチャイズ契約期間中の1か月分の平均ロイヤリティの金額に、競業避止義務条項に違反して加盟店が同種の事業を行った期間(月数)分を乗じた金額を支払わなければならないとされることがあります。

一度フランチャイズ契約を締結すると、この競業避止義務条項により、契約中または契約終了後には自分が自由に事業を行うことに制約がかかるリスクがありますので、その点のリスクを十分に考えてフランチャイズ契約に臨む必要があります。