フランチャイジー(加盟店)の事業譲渡

1.事業譲渡とは

事業譲渡とは、一定の事業目的のために有機的に一体として機能する財産を他の会社に譲渡して引き継がせ、この財産を譲り渡した会社は、同種事業を営むことができなくなる(=競業避止義務を負う)形態の企業再編行為をいいます。

特徴としては、個々の財産を個別に移転するだけであり、財産を譲り渡す会社の契約上の地位を引き継ぐわけではありません。

すなわち、財産を譲り渡す会社が他の会社と取引関係を有している場合に、その取引関係にある地位までをも引き継ぐものではありません。

2.事業譲渡をするメリット

加盟店がフランチャイズ事業を運営していくと、様々な理由によりフランチャイズ契約を解消する必要がでてくることがあります。

しかし、フランチャイズ契約を解消するには、様々な壁があります。

例えば、フランチャイズ契約には契約期間が設けられている、解約理由が制限されている、解約に際して違約金を支払わなければならない、店舗等の原状回復をしなければならない等です。

運営する事業を第三者にそのまま引き継ぐことができれば、本部との関係を清算する必要は基本的にはありませんし、店舗の原状回復をする必要もありません。

3.加盟店が事業譲渡をする場合の注意点

(1)本部の承諾

フランチャイズ契約には、通常、事業譲渡をする場合には本部の承諾が必要とされています。

フランチャイズシステムは、本部が開発した一定のシステムの下に統一的な事業を行うものですので、本部としては、加盟店の経営者としての資質、能力を把握しておく必要があるからです。加盟店の経営状況が悪化している、加盟店が事業の運営に対する意欲を失っているような場合には、事業譲渡を承諾することが効率的なこともあります。

(2)保証金の引き継ぎ

フランチャイズ契約を締結する場合、契約に関連して発生する本部の加盟店に対する債権を担保するために、保証金を差し入れていることが多くあります。

保証金とは、フランチャイズ契約が終了し、債権債務関係を清算しときに本部から加盟店に返還されるものです。

事業譲渡を行う場合はこの保証金を清算するか、それとも譲渡を加盟店に引き継ぐかをについて定めておきましょう。

(3)競業避止・秘密保持義務

事業譲渡をする場合、事業を譲り渡す加盟店はフランチャイズシステムから脱退するわけですから、契約終了に伴う秘密保持義務、競業避止義務を負うことになります。

事業譲渡を行う場合は、このようなリスクがあることを念頭に入れておく必要があります。

フランチャイズ契約を締結している本部、加盟店が事業譲渡を検討している場合には、上記のような予め定めておく必要がある事項が複数あります。

これらは後に問題を残さないように当事者間で内容を定め、契約書を締結しておくべきです。事業譲渡を検討される本部、加盟店の方は上記の点等お気軽にご相談ください。