フランチャイジーが破産したらFC契約はどうなるのか?

執筆者 花吉 直幸 弁護士

所属 第二東京弁護士会

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「フランチャイジー(加盟店)が破産したらFC契約はどうなるのか」
「フランチャイジーが破産したらフランチャイザー(本部)にどんな影響があるのか」

フランチャイズの本部を運営をしている企業の中には、加盟店であるフランチャイジーが破産した場合、FC契約がどうなるのか気になっている方もいるのではないでしょうか。

本記事では、フランチャイジーが破産した場合のFC契約についてご紹介します。

1.フランチャイジー(加盟店)が破産した場合

フランチャイジー(加盟店)が破産した場合

フランチャイジー(加盟店)の破産手続が開始された場合、フランチャイズ契約書に破産解除特約が規定されていると、フランチャイザーである本部は加盟店の破産を理由にFC契約を解約することが考えられます。

つまり、フランチャイズ契約書に破産解除特約が設けられていれば、本部はフランチャイジーが破産したときに契約を解約するのかどうか選択することになるでしょう。

フランチャイザー(本部)がフランチャイジーに店舗を賃貸してるようなケースについても、フランチャイズ事業以外に使用しない旨の特約やフランチャイズ契約の終了と共に賃貸借契約も終了する旨の特約が有効とされれば賃貸借契約も終了する場合があります。

他方で、破産解約特約が規定されていない場合や特約があっても本部が解約権を行使しない場合は、加盟店が破産手続を開始しても、破産手続の開始によって自動的にFC契約が消滅しません。

破産手続が開始されると、破産管財人が契約を続行するか判断を行うため、フランチャイズ契約の存続は破産管財人の意向に従うことになります。

なお、フランチャイジーが破産手続を開始するほど追い込まれていれば、ロイヤリティの未払いなどのフランチャイズ契約上の債務不履行が生じている可能性が高いです。

破産申立より前のこの時点で本部は債務不履行を理由にFC契約の解除を検討することになるでしょう。

2.フランチャイジーの破産が本部に与える影響

フランチャイジーの破産が本部に与える影響

フランチャイジーが破産をするとフランチャイズ契約を締結している本部に対して与える影響が少なからず生じます。

破産管財人がフランチャイズ契約を解約するか継続するかで、本部の方針が異なる点に注目です。

FC契約の解約と継続でどのような状況になるのかチェックしておきましょう。

(1)FC契約を解約する場合

破産管財人や本部が解約することを選択した場合、本部がフランチャイジーに対して何らかの財産上の請求権を有している場合には、破産債権として裁判所に届け出て、破産管財人に配当を求めることになります。

ただし、もともとフランチャイズ契約を締結するにあたって、フランチャイジーはフランチャイザーに対して加盟保証金を支払っているケースが多いです。

加盟保証金が支払われている場合は、フランチャイザーは未回収の債権をこの保証金と相殺する形で回収することができます。

未回収の債権を全額回収できない場合は未回収分を破産債権として扱い、相殺後に保証金の残額がある場合は残りを破産管財人に返還しなければなりません。

破産法では他の債権者との関係で平等を害する相殺を禁じているケースがあります。

本部は保証金を預かっているからといって、破産手続開始の申立てがあった後に生じた債権など相殺が認められないようなケースもあるため、時期や内容を問わずに必ず相殺が認められるわけではないことには注意しましょう。

予めロイヤリティの回収ができなくなるリスクを把握した上で、フランチャイジーの経済状況は常に気をつけておくことが大切です。

(2)FC契約を継続する場合

本部がフランチャイズ契約の解除を行わず、破産管財人が契約を続行することを選択した場合は、本部は引き続き、フランチャイジーに対して商品・材料やノウハウの提供を行う義務を負います。

フランチャイジーに対して未回収の債権を有していた場合でも、本部は債務不履行を理由に商品・材料やノウハウの提供を拒むことができないのが原則です。

また、破産法78条2項3号では、破産管財人がフランチャイジーによる事業継続が困難と判断した場合は、営業又は事業の譲渡を行うことが規定されています。

ただし、FC契約は本部とフランチャイジーとの信頼関係の下で成立するものなので、破産管財人は本部の承諾を得た上で譲渡を行う必要があるでしょう。

そのため、破産管財人の意向ですべてが決まるわけではないということができます。

本部にとってはフランチャイズ契約が消滅するよりも、第三者に引き継いで事業を継続してもらった方がロイヤリティ収入が継続するため、利点があるということができます。

したがって、破産管財人がフランチャイズ契約の継続を選択した場合、本部自ら加盟希望者への事業譲渡を仲介したり、事業を買い取って直営店舗化したりするなど破産管財人に協力することが本部にとって有益と言えるでしょう。

3.解約した場合の競業避止義務・秘密保持義務について

解約した場合の競業避止義務・秘密保持義務について

フランチャイジーは、フランチャイズ契約の契約期間中、契約書に規定された競業避止義務や秘密保持義務を負いますが、フランチャイズ契約が解約した場合はどうなるでしょうか。

競業避止義務とは、所属するフランチャイズチェーンと競業する事業を行うことや属することなどを禁止する義務のこと禁止する義務のことであり、秘密保持義務とは、所属するフランチャイズチェーンで得た秘密情報を他に漏洩することを禁止する義務のことです。

フランチャイズ契約では、契約が解約された後も競業避止義務や秘密保持義務が存続することが規定されていることも少なくありません。

フランチャイジーが法人の場合、個人の場合で、フランチャイジーが破産した場合の競業避止義務や秘密保持義務がどうなるか説明します。

(1)加盟店が法人

フランチャイジーが法人の場合は、破産手続の終了によって義務を負う主体が法人が消滅するので、法人に対する競業避止義務や秘密保持義務の拘束力がなくなります。

法人に所属していた代表者や従業員が、競業を開始したりノウハウを漏洩したりした場合には、不法行為等に基づく責任を追及することが可能ですが、内容に不明確な点があることや立証も容易ではありません。

そこで、競業やノウハウの流出を防ぐために、フランチャイジーである法人に所属する代表者などの個人に対してもフランチャイズ契約終了後も競業避止義務や秘密保持義務が規定された契約内容にしておくことが有効です。

(2)加盟店が個人

フランチャイジーが個人の場合は、契約時に定められた期間中及び契約終了後の期間中、競業避止義務や秘密保持義務の効力が及びます。

フランチャイジーである個人が破産をしても、法人とは異なって、人格が消滅するわけではないため、フランチャイズ解約後も契約中と同様に競業避止義務や秘密保持義務が認められます。

フランチャイズ契約書に定められている競業避止義務や秘密保持義務の期間が終了すれば義務が認められる期間も終了します。

なお、破産管財人によって第三者にフランチャイジーの事業が譲渡された場合は、その譲受人(第三者)がフランチャイズ契約の当事者の地位を承継するため、競業避止義務や秘密保持義務も負うことになります。

まとめ

フランチャイジーが破産手続を開始すると、本部はフランチャイズ契約の解除を行うか否かの検討や未回収の債権を加盟保証金と相殺するという対応が必要になります。

ただし、相殺については、フランチャイジーが破産手続開始や債務不履行状態にあることを知った上で得た債権に関しては、他の債権者の権利を害することを防止するために、保証金との相殺が禁じられているので注意しましょう。

また、競業や秘密情報の漏洩を防止するために、フランチャイズ契約を解約しても競業避止義務や秘密保持義務の効力が存続するようにフランチャイズ契約で定めていくことも大切です。

執筆者 花吉 直幸 弁護士

所属 第二東京弁護士会

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