フランチャイズ・ガイドラインの改正①~募集時の説明(予想収益等)について

執筆者 岡野 翔太 弁護士

所属 東京弁護士会

法律問題の多くは、皆様にとって全くご縁が無かったものか、あまり意識することが無かったものだと思います。そして、これらの法律問題に直面された皆様は、法律問題が今後どのように進むのか、自分に今後どのような影響があるのか、無事に解決するのか等の不安を抱えているのではないかと推察いたします。
私は、皆様が直面した法律問題に対し、解決に向け丁寧な道案内に努め、少しでも皆様の不安を解消できるよう全力でサポートいたします。決して皆様を一人にはしません。
困ったことがあれば、何でもお気軽にご相談いただければと思います。

1.はじめに

フランチャイズ契約では、商品の仕入れや販売、店舗の営業方法等に関し、フランチャイザー(以下「本部」といいます。)がフランチャイジー(以下「加盟店」といいます。)を拘束する様々な条項が設けられます。

そして、この拘束条項については、独占禁止法に違反しない必要があります。

この点、独占禁止法違反を判断する上では、公正取引委員会が策定・公表しているガイドラインを参考にすることが有益であり、フランチャイズ契約においても、本部が確認する必要があるいくつかのガイドラインがあります。

その中でも、特に重要なものが、「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」(以下「フランチャイズ・ガイドライン」といいます。)ですが、令和3年4月に、約19年ぶりの改正が行われました。

今回は、フランチャイズ・ガイドラインの改正内容のうち、「募集時の説明(予想収益等)」について、解説したいと思います。

2.募集時の説明(予想収益等)について

フランチャイズの加盟店を募集するに当たり、本部は、加盟希望者に対し、予想売上や予想収益(以下「予想収益等」といいます。)を示すことがあります。

しかし、公正取引委員会が令和元年10月から令和2年8月にかけて行った調査によると、本部が加盟希望者に対して行った「予想売上げ又は予想収益の額に関する説明」について、「加盟前に受けた説明よりも実際の状況の方が悪かった」との回答が、41,1%あったとのことです(実態調査報告書・201頁)。

当事務所でも、予想収益等として示されていた売上・収益を上げることができないという加盟店からの相談を受けることは少なくありません。

単に既存の加盟店の収益等の平均を示しているだけの場合等は、「ぎまん的顧客誘引」(独占禁止法第2条第9項第6号ハ、不公正な取引方法の一般指定第8項)に該当し、独占禁止法違反となるおそれがあります。

そのため、今回のフランチャイズ・ガイドラインの改正では、本部が示す予想収益等が出店を予定している店舗の予想収益等でない場合は、加盟希望者に誤認を与えないよう(例えば、モデル収益等であることが分かるように明示する等)注記を新設しました。

まとめ

本部としては、加盟希望者に対し、予想収益等を示している場合は、フランチャイズ・ガイドラインの改正内容をよく確認し、ぎまん的顧客誘引に該当するという疑いが生じないよう対処が必要です。

ご不明な点・ご不安な点があれば、フランチャイズ契約に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。

<参考>2(2)ア(注4)

加盟希望者が出店を予定している店舗における売上げ等を予測するものでないという点で厳密な意味での予想売上げ又は予想収益ではなく,既存店舗の収益の平均値等から作成したモデル収益や収益シミュレーションなどを提示する場合は,こうしたモデル収益等であることが分かるように明示するなどした上で,厳密な意味での予想売上げ等ではないことが加盟希望者に十分に理解されるように対応する必要がある。

なお,中小小売商業振興法は,同法の対象となる本部に対して,周辺の地域の人口,交通量その他の 立地条件が類似する店舗の直近の三事業年度における収支に関する事項について情報開示・説明義務を課しているところ,予想売上げ等ではないことが加盟希望者に十分に理解されるように対応する必要がある。