情報提供義務(売上予測)違反と損害賠償

1.売上予測

フランチャイズシステムは、経営の知識や経験のない人でも、本部の培ったノウハウを利用することで、経営の失敗のリスクをなるべく小さくすることができる経営システムです。

フランチャイズシステムは、このような特性を持ちますから、フランチャイズシステムに参入して事業を行おうとする人は、参入、新規出店にあたり、本部から提示される情報(ノウハウ)を基に、ここで事業を営んで儲けが出るかどうかを考え、参入、新規出店を決断することになります。

しかし、実際に事業を始めてみたところ、本部が示した売上予測とはかけ離れた売上しか上げられなかったという事態がよく発生します。

このような事態が発生した場合、加盟店としてはこのまま事業を続けても赤字が増えるばかりなので、本部と契約を解消し、賠償金を請求したいと考えるでしょう。

では、仮に、本部の情報提供が杜撰なもので、契約違反(情報提供義務の違反)として損害賠償が認められる場合、具体的にどのような損害を請求することができるのでしょうか。

2.請求できる損害賠償の範囲

本部の情報提供義務違反が認められる場合に請求できる損害の範囲は、法律用語を用いていえば、情報提供義務違反と「相当因果関係」のある範囲ということになります。

不正確ではありますが、大まかに言えば、杜撰な情報提供がなければ通常は支払わなかった費用や、生じなかった損害をいいます。具体例を見てみましょう。

(1)加盟金

多くの裁判例で損害として請求できるとされています。

(2)(加盟)保証金

請求できないと考えられます。

ただし、情報提供義務違反が問題となった場合には、フランチャイズ契約の解約を伴うことが多いため、契約関係解消という理由に基づいて預け入れた保証金の返還として認められることがあります。

(3)(店舗)保証金:店舗を賃借するにあたって差し入れる保証金

預け入れた金額と返却された金額の差額は損害として請求することが可能です。

ただし、加盟店が故意や重大な過失で店舗を壊したり汚したりした場合の修繕分については、損害として請求できないと考えられます。

(4)開業にあたって支出した内装費用、什器備品のリース・購入費等

損害として請求できると考えられます。

(5)営業上の損失、赤字

損害として請求できるとする裁判例、請求できないとする裁判例で分かれています。

なお、損害として請求できる場合でも、加盟店が本部とは別個の独立した事業主体であって、自分で行う事業について一切のリスクを負わないということは言えませんから、過失相殺(減額)をされるケースが殆どです。

(6)逸失利益

逸失利益とは、フランチャイズ契約を締結しておらず他の仕事をしていれば得られたであろう利益をいいます。通常は損害として請求できないとされています。

(7)慰謝料

通常は請求できません。