交通事故によってむちうち症になったら弁護士に依頼?慰謝料の相場などについて解説

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。

「交通事故に遭ってむちうちと診断されたけど、弁護士に依頼した方がいい?」
「むちうちでも慰謝料は請求できる?」

交通事故によって、むちうち症となってしまった場合、上記のような疑問を抱かれることも多いと思います。

本記事では、交通事故におけるむちうち症に対してどのような賠償がされるのかや、むちうち症の治療についての注意点、弁護士へ依頼するべき理由等についてご説明します。

本記事が、交通事故によって生じたむちうち症に対して適正な賠償を受けるための参考になれば幸いです。

1.むちうち症とは

通院期間90日の交通事故の慰謝料の相場

むちうち症とは、追突等により車両の速度に急激な変化が加わった結果、頭部が前後に振られて、骨折や脱臼に至らない、首の筋肉などの損傷によって生じる症状全般を指します。
整形外科で診察を受けた際、「頚椎捻挫」や「外傷性頚部症候群」などと診断されるものがこれに該当します。

症状としては、首、肩、背中などの痛み、筋肉の張りやしびれのほか、頭痛、吐き気、めまいといったものがあらわれることもあります。

むちうち症は傷病名ではなく、様々な傷病名、症状を含むものなのです。

2.むちうちの慰謝料と弁護士に依頼するべき理由

「後遺障害慰謝料」とは

むちうち症となってしまった場合は、加害者の保険会社との交渉を弁護士に依頼することをおすすめします。

その理由は以下のとおりです。

(1)弁護士基準での慰謝料算定ができる

弁護士に依頼することにより、弁護士基準による慰謝料の請求ができ、被害者にとって有利な金額での示談をしやすくなります。

交通事故によってむちうち症となった場合、入通院の期間に応じて傷害慰謝料を請求できます。

また、後遺障害の認定を受けた場合には、その後遺障害の等級に応じた慰謝料を請求することができます。

この慰謝料の算定基準には、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の三つがあり、このうち自賠責基準がもっとも低額であり、弁護士基準が最も高額となります。

弁護士基準は、裁判所基準ともいい、裁判所が訴訟の際に用いる基準です。

弁護士が加害者側と交渉する際も、この基準で算出した金額をもとに交渉を行うため、その他の基準よりも高額な慰謝料を請求できることになります。

以下、ご説明します

#1:傷害慰謝料

交通事故によって怪我をした場合、後記の理由により、入通院の期間に対応した傷害慰謝料を請求できます。

この金額は、自賠責基準では、4300円(2020年3月31日以前の事故の場合は4200円)に入通院開始からその終了までの期間(通院期間)と実際に病院に通院した日数(実通院日数)の2倍との少ない方をかけた金額になります。

例えば3日に1回通院し、通院終了まで180日かかった場合、通院期間は180日、実通院日数の2倍は120日ですので、慰謝料の金額は、
4300円×120日=51万6000円
となります。

一方、弁護士基準では、裁判所によって算定表が作成されており、これをもとに金額を算定することになります。

以下の表は、むちうち症の場合に、裁判所が用いている算定表です。

(単位:万円)

入院 1 2 3 4 5 6 7
通院 35 66 92 116 135 152 165
1 19 52 83 106 128 145 160 171
2 36 69 97 118 138 153 166 177
3 53 83 109 128 146 159 172 181
4 67 95 119 136 152 165 176 185
5 79 105 127 142 158 169 180 187
6 89 113 133 148 162 173 182 188
7 97 119 139 152 166 175 183 189
8 103 125 143 156 168 176 184 190
9 109 129 147 158 169 177 185 191
10 113 133 149 159 170 178 186 192
11 117 135 150 160 171 179 187 193
12 119 136 151 161 172 180 188 194
13 120 137 152 162 173 181 189 195
14 121 138 153 163 174 182 190
15 122 139 154 164 175 183

入院及び通院それぞれの期間に対応したマスの金額が基準となる慰謝料の金額になります。

例えば、6か月通院した場合の基準額は89万円となります。
自賠責の基準と比較すると、高額な基準額が算定されることになります。

#2:後遺障害慰謝料

治療を続けても症状が一進一退の状態となってしまい、改善が見込めない状態(「症状固定」といいます。)となった場合、その残った症状を後遺症といいます。

この後遺症が、自賠法上の後遺傷害等級のいずれかに該当すると認められると、その等級に応じた慰謝料を請求できます。

むちうちの場合に認められる後遺障害の等級は、14級9号か12級13号となることがほとんどです。

自賠責基準の場合の上記等級に対する慰謝料の金額は以下のとおりです。

14級9号……32万円

12級13号……94万円

一方、弁護士基準の場合の慰謝料の金額は以下のとおりです。

14級9号……110万円

12級13号……290万円

このように、後遺障害慰謝料についても弁護士基準の方が高額な慰謝料を請求できることになります。

#3:弁護士に依頼する必要

弁護士基準で請求すればよいのであれば、弁護士に依頼せずに被害者自身がその金額で請求すればよい、とお考えかもしれません。

しかし、加害者側の保険会社は、被害者自身が弁護士基準での請求を行ったとしても、これに応じることはなく、ほとんどの場合自賠責基準か、それよりも少し高額な任意保険基準での提示しかしてきません。

弁護士基準は弁護士との交渉の際にしか認めないというのが保険会社の姿勢なのです。

したがって、弁護士基準に従った示談をするのであれば、弁護士に依頼する必要があるということになります。

(2)示談交渉を任せられる

むちうちに限らず、交通事故によって怪我を負った状態で、加害者側の保険会社と話をしながら、怪我の治療のために通院をしなければならないとなると、被害者の方にとっては大変な負担となります。

弁護士に依頼すれば、保険会社とのやり取りを全て任せることができ、通院に専念することができるようになります。

また、保険会社への請求のために準備しておいた方がよい資料についてもあらかじめアドバイスを受けられるようにもなります。

弁護士に依頼することにより、保険会社とのやり取りの負担を軽減し、示談に向けた準備をスムーズに進められるようになります。

(3)弁護士費用特約の利用により負担を軽減できる

加入している自動車保険等に弁護士費用特約が付帯している場合、これを利用することにより、弁護士費用の負担を軽減することができます。

弁護士費用特約は保険会社の商品であるため、その内容は保険会社によって異なります。多くの保険会社の場合、弁護士費用特約により支払われる費用の上限は300万円となっています。

もっとも、むちうち症の場合に弁護士費用の金額がこの上限を超えることはまずありません。

したがって、交通事故によりむちうちの怪我を負った場合に弁護士費用特約があれば、費用の負担なく、弁護士に交渉を依頼することができるでしょう。

なお、弁護士費用特約は、契約者本人だけでなく、同居の親族などの事故でも利用できるようになっています。

したがって、交通事故でむちうちの怪我を負った場合には、ご自身の自動車保険に弁護士費用特約の付帯がなくとも、ご家族の保険に付帯されていないか、その特約を利用できないか、保険会社に確認してみるとよいでしょう。

3.むちうちの場合に受け取れる慰謝料

交通事故による後遺症の慰謝料相場!後遺障害等級ごとに解説

(1)傷害慰謝料

むちうちの場合、だいたい3~6か月で治療は終了します。

上記の期間治療をしたとすると、慰謝料の金額は、50万円~90万円程度となることが多いです。

(2)後遺障害慰謝料

前記のとおり、むちうちの場合、自賠法上の後遺障害として認められる可能性が高いのは、14級9号と12級13号です。

これが認定された場合、慰謝料を含めた金額として、以下の金額が支払われることになります。

14級9号……75万円

12級13号……224万円

この金額には、先に説明した慰謝料のほか、逸失利益(後遺障害によって将来の収入が減少した分)を含んでいます。

繰り返しになりますが、弁護士基準の場合、認定された後遺障害の等級が14級9号なら110万円、12級13号なら290万円が後遺障害慰謝料の基準額になります。

これに加えて、年収を元にして計算した逸失利益も加害者側に請求できるということになります。

逸失利益の詳しい計算方法については、弁護士に相談するとよいでしょう。

4.むちうちの慰謝料請求をする際の注意点

交通事故の医療費における二つの注意点

(1)事故後は必ず医師の診察を受ける

交通事故によってむちうちとなってしまったら、速やかに整形外科の医師の診察を受けましょう。

交通事故によって怪我を負ったことによる損害の賠償を請求するためには、交通事故と怪我との間に因果関係があることが必要です。

その因果関係の判断を行うことができるのは、専門家である医師だけなのです。

もし、事故から時間が経ってから診察を受けた場合には、因果関係がないと判断されてしまい、損害賠償請求が認められなくなってしまうこともあります。

また、交通事故による怪我については、整骨院での施術を受けることもあります。

しかし、整骨院の柔道整復師は医師ではありませんので、診察をすることはできません。

整形外科に通わず、整骨院だけに通ってしまうと、やはり交通事故と怪我との間の因果関係の判断がされないままになってしまいます。

事故後は速やかに整形外科での診察を受けることが必要です。

(2)警察に人身事故の届出をする

警察には人身事故の届出をしましょう。

警察は交通事故について、物件事故と人身事故の二通りの事故処理をしています。

交通事故のあとは警察に通報して報告をすることになりますが、実は、そのままだと物件事故として処理されることになっています。

事故があった事実を証明する書類である事故証明書には、物件事故と人身事故の別が記載されています。

この記載が物件事故のままだと、事故時に怪我をしていなかった、あるいは、非常に軽い怪我しかしていなかったと判断されてしまうことになりかねません。

そのため、人身事故への切替えをしておく必要があるのです。

人身事故の届出は、事故処理をした警察署に医師が作成した診断書を提出して行います。

整形外科での診察を受けたら、診断書を発行してもらい、人身事故の届出もしておくとよいでしょう。

(3)主治医の治療に従って治療を受ける

治療については、主治医の指示に従って行いましょう。

主治医の指示に従わず、独断で治療を中断してしまうと、その後に治療を再開しても因果関係がないとされ、慰謝料算定の根拠となる治療期間が短くされてしまうことがあります。

また、これも支持を無視して整骨院へ頻繁に通うようになると、その治療について過剰なものとして、保険会社から施術費用や治療費の支払を拒否されてしまうこともあります。

主治医の指示に従って、適切な治療を受けるようにしましょう。

まとめ

交通事故でむちうち症となった際の慰謝料請求などについてご説明しました。

むちうち症となった場合には、交渉を弁護士に依頼することで、慰謝料の増額や加害者側保険会社との交渉を任せられるなどのメリットがあります。

また、むちうち症となった場合には受診先などについて注意点があり、これらの注意点に留意しながら治療をすすめることをお勧めします。

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執筆者 野沢 大樹 弁護士

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