自己破産を行うと銀行口座はどうなる?口座が凍結されてしまうケースや手続後の銀行口座の取扱いについても解説
「自己破産をすると銀行口座はどうなるのか」
「自己破産後に銀行口座は新規開設できるのか」
借金の返済ができなくなり、自己破産を行うことを検討されている方の中には、銀行口座についてこのような不安や疑問をお持ちの方もいると思います。
自己破産は、借金の返済が困難であることを裁判所に申し立て、裁判所から免責許可決定を受けた上で借金の返済義務を免除してもらう手続です。
税金などの一部の支払義務を除いて、すべての借金の返済義務から解放されるため、メリットの大きい手続といえます。
なお、自己破産によって免責の対象となる借金には、法人だけでなく個人からの借入れも含まれるため、債務者が自由に選ぶことはできません。
そのため、自己破産を申し立てたときに銀行のカードローンの残債務が含まれている場合には、カードローンを利用している銀行の口座に影響が生じます。
本記事では、自己破産を行うことによって銀行口座に生じる影響や手続中に注意すべきポイントについて解説します。
なお、自己破産の手続の概要や流れについては、以下の記事で詳しく解説しています。
1.自己破産と銀行口座の関係

自己破産を行うことで、銀行口座に影響が生じるケースがあります。
具体的には、銀行のカードローンを利用しており、その返済を滞納している場合です。
このような場合には、自己破産を行うことで、カードローンを利用している銀行の口座が凍結されてしまいます。
なお、同じ銀行の別の支店で口座を有している場合でも、その口座も凍結されてしまうことに注意が必要です。
銀行口座が凍結されてしまうと、凍結が解除されるまでは入金も出金もできません。
自己破産を進めることによって銀行の口座が凍結されるのは、銀行が返済が滞ったカードローンの残債務を預金残高と相殺して回収するためです。
例えば、カードローンなどの債務額が30万円であり、銀行口座の中に10万円が残っている場合には、銀行は口座を凍結することで10万円を回収します。
また、銀行口座が凍結されるタイミングですが、弁護士からの受任通知が銀行に届いた時点であることが多いです。
自己破産の手続は、弁護士に依頼して行われることが多いです。
弁護士に手続を依頼すると、弁護士から債権者に対して受任通知という書類が送付されます。
銀行のカードローンの残債務がある場合には、その銀行が債権者となるため、銀行が受任通知を受け取った時点で債務者の口座が凍結されてしまうのです。
もっとも、口座の凍結は永久的にされるわけではなく、1~3か月程度で解除される傾向があります。
そのため、凍結が解除された後であれば、その口座を引き続き利用することが可能です。
なお、カードローンなどの借金をしていない銀行の口座については、弁護士から受任通知を送付しないため、凍結されません。
上記のとおり、借入をしている銀行の口座が凍結されるタイミングは、自己破産手続を申し立てたタイミングではなく、弁護士から受任通知を出してそれが銀行に到達した段階であることに注意しましょう。
2.銀行口座が凍結されることが判明した場合の対処法

上記で述べたように、カードローンなどの債務を負っている銀行については、自己破産を行うことによって口座が凍結されてしまいます。
凍結されている間は入金も出金もできなくなってしまうため、弁護士が受任通知を送付する前に以下のような対応を行うことが大切です。
- 生活費の引落し口座になっている場合は口座変更をする
- 支払口座になっている場合にはお金を引き出しておく
順にご説明します。
(1)生活費の引落し口座になっている場合は口座変更をする
凍結される可能性がある銀行口座を家賃や光熱費などの引落し口座として登録している場合には、あらかじめ引落先の口座変更を行うことが大切です。
引落し口座が凍結されてしまうと、凍結が解除されるまでは入金も出金もできなくなるため、家賃などの生活費を支払うことができなくなってしまいます。
生活費の支払が滞れば、電気や水道などのライフラインを停止されたり、家賃の滞納によって賃貸借契約を解除されたりするリスクが生じてしまうのです。
自己破産の手続中であっても生活費の支払は必要となるため、あらかじめ口座変更の手続を行っておくことで生活への影響を回避することが可能です。
なお、変更をする場合には、カードローンなどの債務を負っていない銀行や金融機関の口座を引落し先に設定するようにしましょう。
(2)支払口座になっている場合にはお金を引き出しておく
弁護士からの受任通知が銀行に到着した時点でその銀行の口座が凍結されてしまうため、必要な生活費等を確保するために口座の残高は引き出しておく必要があります。
また、借入をしていない銀行口座であったとしても、その銀行口座がクレジットカードなどの支払口座である場合には、あらかじめお金を引き出し、残高を0にすることが大切です。
自己破産の手続中にクレジットカードの支払額が自動引き落としされてしまうと、裁判所に偏頗弁済にあたると評価される可能性があります。
偏頗弁済とは、特定の債権者のみに返済を行うことです。
自己破産ではすべての債権者を平等に扱うべきとする「債権者平等の原則」という考え方に従って手続が進行します。
そのため、偏頗弁済は債権者平等の原則に反する行為であり、破産法上で禁止されています。
意図していなくても偏頗弁済と評価されてしまえば、裁判所から免責許可決定を受けることができず、借金の返済義務が免除されないリスクがあるため、注意しましょう。
あらかじめ口座のお金を引き出し、残高を0にしておくことで、自動引落しの処理が行われることを回避することが可能です。
もっとも、一度に多額のお金を口座から引き出すと、裁判所に財産隠しや浪費を疑われる可能性もあります。
財産隠しや浪費についても免責許可を与えない事由(免責不許可事由)として破産法に定められているため、引き出したお金の管理には注意が必要です。
そのため、引き出したお金の全額を借入れなどの債務を負っていない別の銀行口座に入金するなど、財産隠しや浪費と評価されないような対応を行いましょう。
なお、どのような対応を行うことが望ましいかは専門知識がなければ判断が難しいことも多いといえます。
ご自身で適切な対応の判断がつかない場合には、まずは弁護士にクレジットカードの引落しなどがあることを正直に説明し、対応についてアドバイスを受けましょう。
自己破産の手続中に避けるべき行為や免責不許可事由については、以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
3.凍結されない銀行口座の取り扱い

先ほども述べたように、カードローンなどの債務を負っていない銀行口座については、自己破産の手続の中で凍結が行われることはありません。
しかし、自己破産を申し立てる際には、凍結の対象とはならない銀行口座についてもすべて申告する必要があることに注意が必要です。
具体的には、預金通帳のコピーまたは取引明細書を提出することになります。
凍結の対象ではない銀行口座をすべて申告するのは、債務者が財産隠しを行っていないかを裁判所が調査する必要があるからです。
裁判所は、提出された預金通帳のコピーや取引明細書の内容から、預金残高やお金の使途などを調査し、財産隠しや浪費などの免責不許可事由に該当するような事情の有無を調査します。
そのため、凍結されない銀行口座からの入出金については必要最低限に留めておくことが望ましいです。
取引履歴は都度通帳に記載されるため、入出金の頻度が高い場合や金額が大きい場合には財産隠しや浪費を疑われる可能性があります。
さらに、免責不許可事由に該当すると判断されれば、借金の返済義務の免除を受けることができず、自己破産を行った意味が失われてしまうリスクがあるのです。
もっとも、生活に必要な支出であれば問題はありません。
この時に出金が高額な場合には裁判所から説明を求められることもあるため、どうしても口座から出金する必要がある場合には、説明を求められたときに備えて領収書などを保管し、使途について記録するなどの対処が必要となるでしょう。
なお、自己破産を申し立てる際には、通帳のコピーなどのほかにもさまざまな書類や資料を提出しなければなりません。
必要となる書類や資料については、以下の記事で詳しく解説しています。
4.自己破産の手続中や手続後に新規で口座を開設することはできるか

結論から述べると、自己破産の手続中や手続後に銀行口座を新たに開設することは可能です。
自己破産を含む債務整理の手続を行うと、その事実が事故情報として信用情報機関に登録されます(いわゆる「ブラックリスト入り」)。
信用情報機関は、加盟する金融機関から顧客の借入れや返済などの情報について提供を受けてこれを管理し、照会があれば開示する機関です。
与信調査が必要となるローンや借入れの申込みがあった場合には、金融機関は信用情報機関に照会を行うため、事故情報が登録されていることを知られてしまいます。
事故情報が登録されていることは、その人の支払能力に問題があると判断されてしまうため、申込みを断られてしまう可能性が高いです。
しかし、銀行口座の新規開設を行う際には、このような与信調査は行われません。
そのため、事故情報が登録されていたとしても、問題なく銀行口座を新たに開設することができます。
また、自己破産の手続中であっても、新規で銀行口座を開設することも可能です。
一方で、口座が凍結された銀行では新たに口座を開設することができないケースもあるため、新規で口座を開設したいときは、別の銀行や金融機関を利用しましょう。
なお、自己破産を申し立てる前に新規で開設した銀行口座についても、申立ての際に忘れずに裁判所へ申告する必要があります。
これを怠ってしまうと、財産隠しを疑われ、手続に影響が生じる可能性があるため、十分に注意しましょう。
5.自己破産について弁護士に相談・依頼するメリット

上記のとおり、借入れの返済が残っている銀行については、自己破産の手続を進めることで、その口座が凍結されてしまいます。
そのため、その口座を生活費などの引落し口座にしている場合には、自己破産の準備中に口座変更などの対応を行う必要があることに注意が必要です。
しかし、預金の使途等に注意を払わないと、裁判所から財産隠しや浪費を疑われてしまい、借金の返済義務の免除を受けられないリスクも生じてしまいます。
このように、自己破産の手続を適切に進め、最終的に免責許可決定を受けるためには、注意しなければいけない点もあります。
しかし、知識や実務経験がなければ、どのような点に注意して対応すべきかについての判断を行うことは困難です。
そのため、自己破産を行うことを検討されている場合や自己破産による影響などに不安を抱いている場合には、一度弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談し、手続を依頼するメリットは以下のとおりです。
- 自己破産を行うことが適しているかアドバイスを受けることができる
- 弁護士に依頼することで借入の返済が停止する
- 破産手続の準備をスムーズに進めることができる
- 免責不許可事由に注意しながら手続を行うことができる
順に解説します。
(1)自己破産を行うことが適しているかアドバイスを受けることができる
弁護士に相談することで、自己破産を行うことが適しているかどうかについて説明を受けることが可能です。
借金の解決方法は自己破産だけではなく、債務整理の手続としてはほかにも任意整理と個人再生があります。
また、自己破産の申立てを行うためには、一定の要件を満たさなければなりません。
さらに、自己破産では債務者が一定額以上の財産を所有している場合には、手続の中で換価処分が行われ、債権者に配当されてしまう点にも予め注意しておくことが必要です。
換価処分の対象となるのは住宅や土地などの不動産、車やバイクなどの動産など、さまざまな財産が含まれます。
そのため、自己破産を行った場合には、これらの財産については手元に残すことが難しくなるケースが多いです。
このように、自己破産にはメリットのほかにもデメリットがあり、生活や仕事への影響などを考慮し、慎重に手続を選択する必要があります。
そこで、弁護士に相談することで、自己破産を行うための要件を満たしているかはもちろん、借入総額や収入状況、生活などの事情を総合的に考慮した上で自己破産を行うべきか説明やアドバイスを受けることが可能です。
自己破産を申し立てるための要件については、以下の記事で詳しく解説しています。
また、任意整理と個人再生の概要やメリット・デメリットについては、以下の記事もあわせてご参照ください。
(2)弁護士に依頼することで借入の返済が停止する
弁護士に相談のうえで手続を依頼すると、その時点で借金の返済が停止します。
借金の返済が停止するのは、自己破産の依頼を受けた弁護士が債権者に対して受任通知を送付し、その通知を受け取った債権者は債務者に督促や取立てができなくなるからです。
これによって、債権者からの連絡がストップし、返済を停止することができます。
特に長期にわたって返済が滞っている場合には、債権者からの連絡が続くことで精神的にも大きな負担となっている方が多いです。
弁護士に依頼することで債権者からの連絡がなくなり、督促の負担に悩まされることなく、落ち着いて手続の準備を進めることができます。
なお、弁護士に自己破産の手続を依頼すると、裁判所費用のほかにも弁護士費用が必要です。
しかし、返済がストップしている間に今まで返済にあてていたお金を分割で支払うなどすることによって無理なく手続費用を捻出することができます。
(3)破産手続の準備をスムーズに進めることができる
弁護士のアドバイスやサポートを受けることによって、破産手続の準備をスムーズに進めることができます。
自己破産を行う場合には、銀行口座をはじめとする財産のすべてについて、裁判所に申告しなければなりません。
また、その際には申立に必要な書類を作成し、資料を収集して、裁判所に提出する必要があります。
しかし、どのような書類を作成するかやどのような資料が必要となるかは、債務者の財産状況などによって異なります。
また、書類や資料に不備や漏れがある場合には、裁判所へ記載の訂正や資料の提出を行う必要があり、手続全体が遅延する事態にもなりかねません。
そこで、弁護士に手続を依頼すると、書類作成や資料収集などの準備段階からサポートを受けることが可能です。
弁護士であれば、必要となる書類や資料についても熟知しているため、不足や不備なく書類作成と資料収集を進めることができ、申立てまで円滑に進めることができます。
(4)免責不許可事由に注意しながら手続を行うことができる
弁護士のサポートを受けることで、禁止されている免責不許可事由に該当するような行為をあらかじめ回避することもできます。
免責不許可事由にはさまざまなものがあるものの、きちんと理解して注意を払うことで未然に防ぐことが可能です。
裁判所から免責不許可事由に該当すると評価された場合には、借金の返済義務を免除してもらえず、引き続き返済を行わなければならない事態に陥ってしまうリスクが高まります。
しかし、弁護士からアドバイスやサポートを受けることで、そのような行為を回避し、免責許可を受けられるように手続を進めることができます。
なお、借入れの原因や経緯について、免責不許可事由に該当するような事情があったとしても、自己破産を行うことを諦めなければならないわけではありません。
免責不許可事由に該当する場合であっても、債務者が真摯に反省し、更生の余地があると裁判所が判断した場合、裁判所の裁量によって免責を受けられる「裁量免責」の制度があるからです。
実務上でも、免責不許可事由に該当する事情があるケースであっても、裁量免責が認められるケースは多くあります。
裁量免責が認められるためには、免責不許可事由に該当する事実を把握したうえで対応を考えるなどの入念な準備が必要です。
弁護士に相談・依頼することで、裁量免責を受けるための対応についてもサポートを受けることができ、自己破産の手続で免責許可を受けられる可能性を高めることにもつながります。
まとめ
自己破産をすることで、借入れをしている銀行の口座が凍結される可能性があります。
そのため、事前に銀行口座への影響を把握し、引落し先を変更するなどの対応が必要となる場合もあります。
なお、借入をしておらず、凍結されない銀行口座の管理にも注意を払うことが必要です。
自己破産手続では持っているすべての口座の履歴を裁判所に提出することが必要なため、入出金の頻度が高い場合や一度に高額な金額の引き出しを行っている場合には、浪費や財産隠しを疑われ、免責許可を受けることができなくなってしまう可能性もあります。
このように、自己破産を行う際には、銀行口座について適切な管理を行う必要があります。
どのような点に注意しながら手続を進めるべきか判断が難しい場合には、まずは弁護士に相談することがおすすめです。
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