勧誘行為に関する独占禁止法の規制

以前の記事で契約締結段階における情報提供義務について中小小売商業振興法の規定を紹介しましたが、同法のほか、フランチャイズ契約の締結段階における情報提供に関する規制として、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(以下「独占禁止法」といいます。)があります。

情報提供に関する規制~独占禁止法19条 ぎまん的顧客誘引行為の禁止

独占禁止法第19条は、事業者に対して、「不公正な取引方法」を禁止しています。これに関連して、いわゆる「一般指定」(昭和57年6月18日公正取引委員会告示第15号)の第8項では、「不公正な取引方法」の一つとして、「欺瞞的な顧客誘引行為」(ぎまんてきなこきゃくゆういんこうい)を挙げています。

公正取引委員会のフランチャイズ・ガイドライン(正式名称「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」(平成14年4月24日))では、フランチャイジーの募集にあたり、「十分な開示を行わず、又は、虚偽もしくは誇大な開示を行い、これらにより、実際のフランチャイズ・システムの内容よりも著しく優良または有利であると誤認させ、競争者の顧客を自己と取引するように不当に勧誘する場合」には、先述した「欺瞞的な顧客誘引行為」に該当するとしています。

具体的には下記のような事項についての開示が望ましいとされています。

・加盟後の商品等の供給条件に関する事項(仕入先の推奨制度等)

・加盟者に対する事業活動上の指導の内容、方法、回数、費用負担に関する事項

・加盟に際して徴収する金銭の性質、金額、その返還の有無及び返還の条件

・加盟後、本部の商標、商号等の使用、経営指導等の対価として加盟者が本部に定期的に支払う金銭(以下「ロイヤルティ」という。)の額、算定方法、徴収の時期、徴収の方法

・本部と加盟者の間の決済方法の仕組み・条件、本部による加盟者への融資の利率等に関する事項

・事業活動上の損失に対する補償の有無及びその内容並びに経営不振となった場合の本部による経営支援の有無及びその内容

・契約の期間並びに契約の更新、解除及び中途解約の条件・手続に関する事項

・加盟後、加盟者の店舗の周辺の地域に、同一又はそれに類似した業種を営む店舗を本部が自ら営業すること又は他の加盟者に営業させることができるか否かに関する契約上の条項の有無及びその内容並びにこのような営業が実施される計画の有無及びその内容

 

また上記項目のほかに、必要な場合には次の情報開示も望ましいとしています。

・加盟募集に際して、本部が予想売上げ又は予想収益を提示する場合は、類似した環境にある既存店舗の実績など根拠ある事実、合理的な算定方法等に基づくことが必要であり、また、本部は加盟希望者に、これらの根拠となる事実、算定方法を示す必要がある。

・営業時間や臨時休業に関する説明にあたり、その時点で明らかになっている経営に悪影響を与える情報については加盟希望者に当該情報を提示することが望ましい。

まとめ

フランチャイズ契約の勧誘行為においては、過度に誇大なセールス・トークや、説明不足によって、開店後に想定していた売上が上がらず本部と加盟店間でトラブルになるケースが多くみられます。

本記事で紹介した、ガイドラインには「開示が望ましい」として推奨されているに留まり、開示しなかったことをもって直ちに独占禁止法違反となるわけではありません。

しかし、結果として加盟後のフランチャイジーが期待した売上を上げられずに、フランチャイザーに損害賠償を求めた際、ガイドラインに記載の内容がきちんと説明されていなかったことが「情報提供義務違反」と評価される場合があります。フランチャイザーとしては、勧誘する際に希望者に渡す資料などの営業ツールや、契約前に加入希望者に提供する書面は上記項目を踏まえた作成を行うなどの必要性があるでしょう。