雇用契約書作成時に必要な記載事項や記載を変更をするときの注意点を弁護士が解説

執筆者 青山 侑源 弁護士

所属 東京弁護士会

法律トラブルというものは、いつも身近に潜んでいるものです。
はじめのうちは「大したことないだろう」と思っていたことが、そのうち大事になってしまうというケースも多くありますので、少しでも「法律トラブルに巻き込まれたかもしれない」と感じている場合には、お早めにご相談いただくことをおすすめいたします。
法律トラブルへの対処方法や解決方法は、個人の方、法人の方ごとに千差万別ですが、お早めにご相談いただくことで、選べる選択肢も多くなります。
どのような解決方法があなたにとって最適な選択となるのか、一緒に検討していきましょう。

「雇用契約書には記載しなければいけないことがあるの?」
「変更するときは好きなように変更してもいい?」

本記事をご覧の方の中には、雇用契約書について、どのような記載事項を定めなくてはいけないのか、分からずに困っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

本記事では、雇用契約書の作成・変更にあたって、必ず書かなければならない事項や、注意しなければならない点について説明いたします。

本記事が、雇用契約書の作成・変更をする際に少しでも参考になりましたら幸いです。

1.雇用契約書について

雇用契約書は、会社と従業員との間の契約内容を文書にしたものです。

雇用契約書がどのような性質のものか、どのような効力を持つものかなどについて、最初に説明いたします。

(1)雇用契約書とは

「雇用契約」とは、雇用される者(従業員など)が労務を提供し、雇用する者(会社や使用者)がその労務に対し賃金を支払うことを約束する契約のことをいいます。

雇用契約書は、この雇用契約の内容を文書にし、会社と従業員の双方が記名押印したものです。

契約自体は、口頭でも成立しますので、雇用契約を締結する際に、必ず雇用契約書を作成しなければいけない、というものではありません。

(2)雇用契約書の法的効力について

以上のとおり、雇用契約書の作成自体は、法律上義務付けられているわけではありません。

しかし、労働基準法は従業員が入社する際、労働条件を書面により明示することが求められています(労働基準法15条)。

雇用契約書に似たものとして、会社側が作成し、従業員に提示する形で交付される労働条件通知書があります。

雇用契約書や労働条件通知書によって、労働条件の明示がされていないと違法となり、30万円以下の罰金を科される可能性があります(労働基準法120条)。

雇用契約書は、双方が署名押印することで作成されますが、労働条件通知書は使用者側が労働者に対して交付するもので、労働者側の署名押印が不要である点で違いがあります。

雇用契約書は、会社と従業員が労働条件について合意したことを示す書面になります。

したがって、雇用契約書の作成がされていないと労働条件に合意したかどうかを示す証拠がないことになり、のちのトラブルを回避することが難しくなってしまいます。

2.雇用契約書の記載内容

先ほどご説明したとおり、雇用契約書自体の作成は必ずしも法律上は義務付けられていませんが、書面の交付が義務付けられている労働条件通知書を兼ねた雇用契約書(雇用契約書兼労働条件通知書)を作成する方法も認められています。

そこで、ここでは、労働条件通知書や雇用契約書等、労働条件を示す書面を作成する場合に記載が必要となる事項について、ご説明いたします。

(1)絶対的明示事項

労働条件通知書には、必ず記載しなければならない事項があり、これを「絶対的明示事項」といいます。

絶対的明示事項は、以下のとおりです。

  • 労働契約の期間
  • 就業場所
  • 従事する業務の内容
  • 有期労働契約を更新する場合の基準(通算契約期間または契約更新回数に上限の定めがある場合には当該上限を含む)
  • 始業時刻・終業時刻
  • 所定労働時間を超える労働の有無
  • 休憩時間、休日、休暇に関する事項
  • 賃金(退職手当及び臨時賃金などを除く)の決定、計算・支払方法、賃金の締日・支払の時期および昇給に関する事項
  • 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

また、短時間労働者・有期雇用労働者(パートやアルバイト、契約社員など)の場合、上記に加えて以下の事項も明示する必要があります。

  • 昇給の有無
  • 退職手当の有無
  • 賞与の有無
  • 相談窓口の担当者の部署、役職、氏名

(2)相対的明示事項

常に記載が必要というわけではありませんが、該当する制度がある場合には記載する必要がある事項のことを、「相対的明示事項」といいます。

相対的明示事項は、以下のとおりです。

・退職手当の定めが適用される従業員の範囲、退職手当の決定、計算、支払方法、支払時期に関する事項
・臨時に支払われる賃金(退職手当を除く)、賞与、労働基準法施行規則第8条各号に掲げる賃金、最低賃金額に関する事項
・従業員が負担する食費、作業用品その他に関する事項
・安全衛生に関する事項
・職業訓練に関する事項
・災害補償および業務外の傷病扶助に関する事項
・表彰および制裁に関する事項
・休職に関する事項

3.雇用契約書の記載内容の変更方法

雇用した当時と現在とでは状況が変わってきて、労働条件を変更したいという場合もあるかと思います。

雇用契約書を作成した場合、当事者はその内容に拘束されることになります。

しかし、後から雇用契約の内容を変更することも可能であり、労働契約法上も、双方の合意があれば、労働条件の変更は認められています。

労働条件を変更する場合には、一定の条件を満たしたうえで就業規則を変更するという方法もありますが、特定の従業員との間の雇用条件を変更する場合には、以下の方法が考えられます。

(1)再度雇用契約書を交わす

雇用契約書の内容を変更したうえで、改めて特定の従業員との間で雇用契約書を取り交わすことで、雇用契約の内容を変更することが可能です。

雇用契約の内容が大幅に変わる場合にはこの方法により変更するべきですが、変更する点が少ない場合などは、次の方法で変更した方が使用者、労働者双方にとっても簡便です。

(2)変更することについての覚書や同意書を作成する

雇用契約書の再作成をしなくとも、従業員から契約内容の変更について同意を得たうえで、覚書や同意書を作成するといった方法でも契約内容の変更は可能です。

なお、「覚書」や「同意書」といった、書面の名称自体にはさほど大きな意味はなく、適切に作成されていれば、「雇用契約書」と同じ効力をもつことになります。

逆に言えば、覚書や同意書を作成しても、適切な内容となっていなければ効力が否定されてしまう可能性があり、後にトラブルを招きかねません。

今では、インターネットを利用すれば覚書や同意書のテンプレートを手に入れることも簡単にできますが、必ずしも自社の状況に見合った内容で作成されているとは限りません。

後の紛争を予防するためにも、専門家である弁護士に相談したうえで作成することをおすすめいたします。

4.雇用契約書の内容を変更する際の注意点

雇用契約の内容を変更する場合、労働者にとって有利に変更するのであればさほど問題にはなりにくいですが、経営不振などで会社が厳しい状況である場合など、労働条件を労働者に不利益に変更しなければならない場合もあるでしょう。

労働条件を労働者にとって不利益に変更する場合、たとえ労働者の同意があったとしても、無効と判断されてしまう場合もあるため、注意が必要です。

(1)労働基準法に違反する内容には変更できない

当然ですが、変更後の契約内容が労働基準法に違反する場合には、たとえ労働者の同意があったとしても、その効力は認められません。

例えば、労働基準法上、原則として1日の労働時間は8時間(法定労働時間)と定められていますが、これに反して1日の労働時間を10時間として定めた場合、法定労働時間を超える部分(2時間分)については無効となり、8時間を超える労働をさせた場合には時間外手当を支払う必要が生じます。

また、労働基準法に違反した場合には罰則の定めもあるため、罰金や懲役が科されてしまうという可能性もあります。

したがって、雇用契約の内容が労働基準法に違反していないかについては、しっかりとチェックしなければなりません。

なお、個別の雇用契約書の内容が、就業規則の内容と矛盾・抵触する場合には、労働者に有利な内容が優先されることになりますので、この点にも注意が必要です。例えば、雇用契約書上では労働時間は8時間とされていても、就業規則上は6時間とされている場合、就業規則の方が労働者に有利な内容であるため、就業規則が優先されることとなります。

(2)自由意思に基づく同意が必要

労働者の同意は、自由な意思に基づく同意であることが必要とされています。

例えば、単に契約内容を変更することについて労働者の同意書があったとしても、その内容について具体的な説明もないまま同意書にサインしただけでは、「自由な意思に基づく同意」とはいえない可能性があります。

まとめ

本記事では、雇用契約書を作成する場合に記載しなければならない事項や、雇用契約書の内容を変更する場合の注意点について、ご説明いたしました。

雇用契約書の内容は、記載した内容が会社と労働者を拘束するだけでなく、労働基準法や労働契約法等によりいくつかの規制が設けられているため、適切に作成・変更しなければ後に大きな問題に発展しかねません。

それぞれの会社によって状況は異なるため、自社の状況に見合った適切な雇用契約書の作成・変更をするためにも、専門家である弁護士に相談することをおすすめいたします。

 

執筆者 青山 侑源 弁護士

所属 東京弁護士会

法律トラブルというものは、いつも身近に潜んでいるものです。
はじめのうちは「大したことないだろう」と思っていたことが、そのうち大事になってしまうというケースも多くありますので、少しでも「法律トラブルに巻き込まれたかもしれない」と感じている場合には、お早めにご相談いただくことをおすすめいたします。
法律トラブルへの対処方法や解決方法は、個人の方、法人の方ごとに千差万別ですが、お早めにご相談いただくことで、選べる選択肢も多くなります。
どのような解決方法があなたにとって最適な選択となるのか、一緒に検討していきましょう。