加害者が複数いる場合、誰にどれくらいの賠償金を請求すればいい?

交通事故に遭ってしまったけれど、その加害者が複数いるという場合があります。

加害者が複数いる主なケース

  1. タクシーにお客さんとして乗っていて事故に遭い、相手の車の運転手と自分の乗っていたタクシーの運転手にも落ち度があって事故になってしまった場合
  2. 玉突き事故に遭ってしまった場合
  3. 交通事故に遭って怪我をしたので、病院に通院していたら、もう1度交通事故に遭ってしまった場合

これらの場合に、「だれに」「どれだけ」損害賠償請求をすることができるのかが問題となります。

(1)それぞれの加害行為が、同一の時と場所で起こった場合

タクシーにお客さんとして乗っていて事故にあったけれど、相手の車の運転手にも、自分の乗っていたタクシーの運転手にも落ち度があって事故になってしまった。(それぞれの加害行為が、同一の時と場所で起こった場合)

この場合、相手の車の運転手も「加害者」、自分の乗っていたタクシーの運転手も「加害者」となり、民法上の「共同不法行為」というものが成立すると考えられています。

「共同不法行為」が成立する場合、被害者の方は、上記2人の加害者それぞれに、損害の全部を賠償請求することができます。

つまり、治療費で100万円かかった場合、相手の車の運転手にも、自分の乗っていたタクシーの運転手にも、それぞれ100万円を請求することができるのです。

ここで気をつけなければいけないのは、“二重取り”はできないということです。

というのは、上記の例で発生した治療費の損害は100万円ですので、100万円までしか賠償は受けられません。

そこで、相手の車の運転手が治療費のうち40万円を支払ってくれた場合、自分の乗っていたタクシーの運転手に請求できる金額は60万円(=100万円-40万円)になるのです。

そうすると、「共同不法行為」といっても、被害者の方にはあまり得がないように思える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、加害者それぞれに全額請求できるということは、たとえば、自分の乗っていたタクシーの運転手はあまりお金の無い人だったけれど、相手の車の運転手はお金持ちだった場合などに、相手の車の運転手から全額回収する道が残されるということを意味します。

この点で、「共同不法行為」が成立すると、被害者の方に有利といえますね。

まとめると、治療費100万円について以下のように請求できることになります。

だれに どれだけ
相手の車の運転手 100万円
自分の乗っていたタクシーの運転手 100万円

※ただし、二重取りはできないので、総額100万円までしか賠償は受けられない。

(2)それぞれの加害行為の時間はずれるけれど、時間も場所も近い場合

玉突き事故に遭ってしまった。(それぞれの加害行為の時間はずれるけれど、時間も場所も近い場合)

この場合、①と同じように「共同不法行為」が成立するか否かは、裁判例でも判断が分かれます。

もっとも、「共同不法行為」が成立するとしている裁判例のほうが多数派のようです。

とすると、この場合も、それぞれの加害者に対して、損害の全部を賠償請求できるのでしょうか。

実はこの場合は、①の場合と違い、「寄与度」という概念を使って、それぞれの加害者が負うべき損害額が“分担”されることがあります。

上記の治療費100万円を例にとれば、加害者Aによる衝突の寄与度8割、加害者Bによる衝突の寄与度2割の場合、被害者の方は、加害者Aには80万円、加害者Bには20万円しか請求できなくなります。

まとめると、治療費100万円について以下のように請求できることになります。

だれに どれだけ
加害者A 80万円
加害者B 20万円

※寄与度が、加害者Aによる衝突:加害者Bによる衝突=8:2の場合。

(3)それぞれの加害行為が、時間も場所も別々の場合

交通事故に遭って怪我をしたので、病院に通院していたら、もう1度交通事故に遭ってしまった。(それぞれの加害行為が、時間も場所も別々の場合)

この場合、①や②と同じように「共同不法行為」が成立するでしょうか。

この場合でも裁判例は分かれていますが、②と異なり、「共同不法行為」が成立しないとする裁判例のほうが多数派のようです。

共同不法行為が成立しない場合、それぞれの加害者との間で別々の不法行為が成立し、それぞれの不法行為に基づき、それぞれに損害賠償責任が発生します。

しかし、たとえば、1事故目でも2事故目でも、同じ部位を怪我してしまった場合、部分的に分けて、これは1事故目のせい、それは2事故目のせいと考えることができません。

そんなときにも「寄与度」という概念が使われます。

この場合、「寄与度」をいくつと認定するかは、下記の事情を総合的に考慮して判断されます。

寄与度の認定事情

(ア)①事故目による怪我の内容や程度、
(イ)(ア)に対する治療の状況と回復の経過、
(ウ)②事故目前の症状、
(エ)②事故目直後の症状、
(オ)②事故目後の治療の状況と回復の経過、
(カ)①事故目と②事故目のそれぞれの衝撃の程度

それだけでなく、①事故目・②事故目において、被害者の方の過失割合が発生する場合には、この過失割合も請求金額に影響します。たとえば、上記治療費100万円(この場合は2事故目移行の治療費とします)について、①事故目の寄与度が8割、②事故目の寄与度が2割だとして、①事故目での過失割合が9:1(被害者の方に1割の過失)、②事故目での過失割合が7:3(被害者の方に3割の過失)の場合は、①事故目の加害者には72万円(=100万円×8割×9割)、②事故目の加害者には14万円(=100万円×2割×7割)しか請求できなくなるのです。

まとめると、治療費100万円について以下のように請求できることになります。

だれに どれだけ
1事故目の加害者 72万円
2事故目の加害者 14万円

※2事故目の治療費が100万円とする。
※寄与度が、1事故目:2事故目=8:2、過失割合が、1事故目で9:1(被害者の方に1割の過失)、2事故目で7:3(被害者の方に3割の過失)の場合。

目次

まとめ

以上、できるだけ簡単にまとめてみましたが、加害者が複数いる場合、「だれに」「どれだけ」請求できるかという問題は、非常に複雑です。

そして、加害者本人や加害者側の保険会社との交渉、裁判所への訴訟提起の際にどのように主張していくべきかの判断も難しいものです。

だからこそ、当事務所の弁護士にご相談ください。

被害者の方が適正な賠償を得るために全力を尽くします。

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