相続放棄照会書って何?手続の流れや書き方を解説

執筆者 花吉 直幸 弁護士

所属 第二東京弁護士会

社会に支持される法律事務所であることを目指し、各弁護士一人ひとりが、そしてチームワークで良質な法的支援の提供に努めています。

被相続人に借金などのマイナスの財産が多くあった場合、相続放棄の手続を選択する方が多いと思います。

この相続放棄の手続きは、家庭裁判所へ相続放棄の申述書を提出するだけでは終わりません。

申述書提出後に、裁判所から「相続放棄照会書」が送られてきますので、その中にある相続放棄の申述に関する質問事項について「相続放棄回答書」で回答する必要があります。

不適切な回答をしてしまった場合、最悪の場合相続放棄の手続が認められないなど、相続放棄の手続に大きな影響を及ぼす可能性があります。

本記事では、相続放棄をする際に送付される「相続放棄照会書」や「相続放棄回答書」について、相続放棄の流れとともにご紹介します。

この記事を読んで、相続放棄が適切に受理されるように手続を進めていただけますと幸いです。

1.相続放棄照会書とは

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相続放棄照会書とは、相続放棄の申述後に家庭裁判所から申述人(相続放棄の申立を行う人物)に対して送付される照会書のことを言います。

裁判所から「照会書」といった題名の書面で送られてくるものです。

相続放棄は、家庭裁判所へ申立を行うことで、被相続人の財産・債務の相続を放棄することができる手続です。

一度申述が受理された場合、後から相続放棄を撤回することは出来ません。

このような重大な手続であるため、相続放棄の申述が申述人本人の意思によってなされた手続であるかどうかを確認する必要があります。

そのため、相続放棄照会書は、相続放棄の申述があった場合に申立を受けた家庭裁判所から、申述人に対して、申述人の名義で相続放棄の申述があったことを通知するとともに、相続放棄回答書の記載方法を案内する書類となります。

2.相続放棄手続の流れ

相続放棄は、「自己のために相続が開始したことを知ったとき」から3か月以内に手続を終わらせる必要があるとされています。

この3か月という期間は、相続人に当たる人が、遺産を相続するか放棄するかを検討する「熟慮期間」と言われています。

この3か月の期間内で、被相続人の遺産や負債の額を調査して、相続するか放棄するかを判断することになります。

続いて、相続放棄を行うための、必要な書類や手続の流れについて説明いたします。

(1)相続放棄の申述先

被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申立を行います。

(2)書類の準備

相続放棄の申立を行う人物と、死亡した方の関係性によって必要な書類が変わってきます。

本記事では、被相続人の子供に当たる方が相続放棄をする場合の必要書類等を説明していきます。

全員共通で必要な書類

  1. 相続放棄申述書
  2. 被相続人の住民票の除票(若しくは戸籍の附票)
  3. 申述人(相続放棄をする人)の戸籍謄本
  4. 申立郵券(申述先の家庭裁判所へ確認して、準備します。)
  5. 申立印紙(800円)

申述書の雛形は、裁判所のHPにデータがアップされていますので、活用しましょう。

前述の書類に加えて、申述人と被相続人との関係性によって、必要に応じた以下の書類を添付します

申述人が、被相続人の子又はその代襲者の場合

  1. 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改正腹戸籍)謄本
  2. 申述人が代襲相続者(孫/ひ孫等)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

書類一式を準備したら、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ提出します。

(3)提出後、裁判所から「照会書」「回答書」が届く

申立書一式を裁判所へ提出すると、数日から2週間程度すると裁判所から「照会書」及び「回答書」という題名の書面が届きます。

相続放棄照会書と相続放棄回答書です。

照会書には照会事項、回答書には回答欄があります。

照会書の内容を読んで、回答書へ記載していきます。

照会書の内容は、今回の相続についていつ知ったか、相続放棄の申述は自身の意思かなど、相続放棄を行う理由や、遺産の全部や一部を処分していないか等の質問が記載されていることが一般的です。

記載した回答書を、家庭裁判所へ返送します。

回答書には返送期限が設けられています。

この相続放棄照会書に「令和●年●月●日までにご返送下さい。」や「この書面の右上にある日付から10日以内にご回答をお願いいたします。」等と記載されていることが多いです。

万が一、期限までに回答書の返送が間に合わない場合には、必ず事前に家庭裁判所へ連絡し、担当の書記官へ相談しましょう。家庭裁判所の担当部署や書記官の氏名は、相続放棄照会書へ記載されています。

(4)受理・不受理の審査

提出された回答書を踏まえて、相続放棄申述の受理・不受理の判断がされます。

(5)受理後相続放棄申述受理通知書が届く

相続放棄が無事に受理されると、「相続放棄申述受理通知書」が届きます。

相続放棄の証明書が必要な場合は、別途裁判所へ申請が必要です。

申述受理通知書と同封して、証明書の申請書式が送付されることが一般的です。

申請書を記入し、申述受理通知書の写し、手数料印紙(150円/1通)を添付して申請します。

※申述受理通知書は、必ず手元で保管をしましょう。

3.相続放棄回答書の書き方

相続放棄回答書とは、相続放棄照会書が送付される際に一緒に送付される回答書のことを言います。

裁判所から「回答書」といった題名の書面で送られてくるものです。

前述した通り、相続放棄では、相続放棄の申述人の意思によって行われた手続かどうかが重要となります。

申述人の意思を確認するために、申述人は裁判所からの照会事項に回答する必要があります。

相続放棄回答書には、裁判所からの照会事項が記載されていますので、申述人は照会の内容に対して回答を記載し、裁判所へ返送する流れになります。

相続放棄回答書では、相続放棄が熟慮期間内になされたものであるか、単純承認に該当する事由が存在するかどうかを確認する内容となっています。

相続放棄回答書は、裁判所が相続放棄の申述を受理するかどうかを判断するにあたってとても重要な書類になります。

そのため、回答に当たっては十分に注意が必要です。

(1)相続放棄回答書の書き方

相続放棄回答書の内容は、家庭裁判所ごとに文言が違ってきますが、基本的な内容は同じです。

一般的に、以下のような質問内容が記載されています。

  1. あなたは相続人とどのような身分関係にありましたか
  2. あなたは相続人の死亡をいつ知りましたか。
  3. あなたは相続人の死亡をどの様な経緯で知りましたか。
  4. あなたは遺産の全部又は一部について、これまでに、処分、隠蔽又は消費したこと(例えば、遺産の預金をおろして使ったり、遺産の土地を売却したこと)がありますか。
  5. あなたが本件申述をした理由は何ですか。
  6. 現在、あなたの名義で、当裁判所に対して相続放棄をしたいという申し込みがされていますが、これはあなたの意思によるものですか。
  7. 本件申述書(又は委任状)の署名捺印はあなたがしたものですか。
  8. 現在も、あなたは相続放棄をする意思に変わりはありませんか。

質問事項の下に、チェック項目が設けられている事が一般的です。該当する項目へチェックを付けます。

(2)相続放棄回答書における注意点

相続放棄回答書については、質問内容をよく読んだ上で、事実通りありのままに記載していけば問題ありません。

ただし、相続放棄申述書の記載と、回答書の内容に食い違いが生じては問題となるため、申述書はあらかじめ写しをとっておくとよいでしょう。

4.相続放棄は弁護士にご相談がおすすめ

弁護士法人みずきで無料相談できる内容

相続放棄は、ご自身で裁判所へ手続をとることも可能です。

しかし、相続放棄の手続を確実に進めるためには、弁護士へ相談することを推奨いたします。

相続放棄を行う場合には、準備しなければならない書面が多くあり、尚且つ期限が定められている手続となります。

弁護士へ相続放棄の手続を依頼した場合、申述書の作成や、添付書類を収集する手間を省くことができます。

また、照会書や回答書の対応についても弁護士が行うことができるため、相続人の負担がとても少なくなると言えます。

5.まとめ

本記事では、相続放棄を申述する際に送付される相続放棄照会書と回答書に関する概要をご説明しました。

二つの書類は、相続放棄を無事に受理してもらう上で、重要な役割を果たすと言えます。

相続放棄は、必要書類が多かったり熟慮期間があったりするため、相続放棄をご検討の際は、是非、弁護士へご相談下さい。

執筆者 花吉 直幸 弁護士

所属 第二東京弁護士会

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