個人再生における官報公告とは?影響や公告がされるタイミングなどについて弁護士が解説

「個人再生をして官報に個人情報が掲載される影響は何なのか」
「個人再生後、官報にいつ掲載されるのか」
借金の返済が滞り、債務整理の手続を行うことを検討されている方の中には、個人再生についてこのような不安やお悩みをお持ちの方もいると思います。
個人再生を行うことで、借金の大幅な減額を受けることが可能です。
もっとも、個人再生は裁判所を介して行う手続であり、さまざまな制約や注意点があります。
そのうちの1つが官報公告と呼ばれるものであり、個人再生を行うことで氏名や住所が国の機関誌である官報に掲載されることに注意が必要です。
本記事では、個人再生における官報公告の概要や影響、掲載のタイミング等について解説します。
1.個人再生における官報公告
個人再生を行うと、申立人の氏名や住所などの情報が官報という国の機関誌に掲載されます。
個人再生は、借金の返済が困難であることを裁判所に申し立て、借金の総額に応じて減額された金額を原則3年(最長で5年)にわたって返済する内容の再生計画案の認可を受けて、その内容に従って返済を行う手続です。
手続の対象となる債務は、金融機関や貸金業者などの法人に対するものはもちろん、友人や親族などの個人に対するものも含まれます。
つまり、すべての債権者が手続の対象となります。
個人再生において官報公告が行われるのは、このようにすべての債権者が手続に加わる機会を保障するためであるといえます。
なお、個人再生における官報公告は、民事再生法の定めに従って行われます。
申立人が官報公告を拒否する権利や手続は用意されておらず、個人再生を行うと、官報に掲載されてしまうことは避けられない点にも注意が必要です。
個人再生の手続の概要やメリット・デメリットなどについては、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
2.官報公告が行われることによる影響
結論から述べると、官報公告が行われることで生活や仕事に影響が生じることはほとんどないといえます。
官報には、主に法令の公布や公務員の人事異動などの情報について掲載されているものの、これらの情報を日常的に閲覧している人はそれほど多くありません。
具体的には、官報を閲覧するのは、以下のような人や職業にほぼ限定されます。
- 弁護士や司法書士
- 金融業者
- 信用情報機関
- 市区町村の税務担当者
- 警備会社
- 保険会社 など
これらの職業の人たちも、とりたてて用もないのに毎日閲覧しているわけではありません。
そのため、官報を経由して個人再生を行ったことが知られる心配はほとんどありません。
また、そもそも官報は各都道府県に1か所ずつしかない「官報販売所」のみで販売されており、一般の書店などでは入手することができないようになっています。
閲覧に関しては、直近90日以内であれば、インターネットで無料で閲覧することができるものの、それ以前の分については有料会員しか閲覧ができません。
このように、官報は日常的に閲覧する人が限られており、また、一般的に入手する方法も限られていることから、家族や職場の人に知られる可能性はほとんどないといえるでしょう。
3.官報に掲載されるタイミング
個人再生では、官報公告は3回行われます。
具体的には、以下のタイミングで行われます。
- 個人再生手続開始決定のとき
- 再生計画案について債権者への決議または意見聴取を決定したとき
- 再生計画の認可決定のとき
なお、個人再生の手続の流れについては、以下の記事もあわせてご参照ください。
(1)個人再生手続開始決定のとき
個人再生の手続を裁判所に対して申し立て、裁判所が手続開始決定を下した際に官報公告が行われます。
手続開始決定の際に官報に掲載される事項は、以下のとおりです。
- 申立人の氏名・住所
- 開始決定の年月日
- 開始決定の主文
- 再生債権の届出期間
- 一般異議申述期間
- 決定を下した裁判所名
先ほども述べたように、個人再生の官報公告には、債権者を手続に参加させることによって、債権者の利益を保障する目的があります。
そのため、債権者が裁判所に対して意見を述べるための期間などについても、開始決定の際の官報公告に記載されているのです。
(2)再生計画案について債権者への決議または意見聴取を決定したとき
申立人は、返済金額や返済期間などの事項について記載した再生計画案と呼ばれる書面を裁判所に提出しなければなりません。
裁判所は、再生計画案が提出されたとき、官報公告を行いますが、小規模個人再生手続と給与所得者等再生手続のいずれかによって、その内容は異なります。
小規模個人再生手続では、再生計画案が認可されるためには債権者の同意が必要となり、具体的には、以下のいずれかの場合に認可されます。
- 債権者の過半数が再生計画案に同意している
- 債権額が借金総額の2分の1を超える債権者が同意している
そのため、小規模個人再生手続の場合には、債権者に対して再生計画案の決議を行うことを知らせる目的で官報公告がなされます。
これに対して、給与所得者等再生手続では、債権者の同意は必要ではないものの、再生計画案に対する意見申述の機会を保障するために意見聴取が行われます。
そのため、意見聴取の期日が決定した時点で官報公告が行われるのが特徴です。
このように、手続の違いによって官報公告が行われる目的が異なる点も押さえておきましょう。
なお、小規模個人再生手続と給与所得者等再生手続の特徴や違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。
(3)再生計画の認可決定のとき
再生計画について、裁判所が認可決定を下したときも官報公告が行われます。
裁判所は、再生計画案の内容を審査し、返済金額が適切に定められていることや申立人の収入状況などから返済の遂行が可能であるかどうかを判断します。
裁判所が再生計画案に問題がないと判断した場合に認可決定が出され、このタイミングで官報に情報が再度掲載されるのです。
4.個人再生を行うことに伴うそのほかの注意点
すでに述べたように、個人再生を行うことで官報公告が行われるものの、官報を経由して個人再生を行った事実が周りの人に知られることはほとんどありません。
そのため、官報に掲載されること自体を過度に気にする必要はないといえます。
もっとも、個人再生には官報公告が行われること以外に注意すべきポイントがあります。
具体的には、以下のとおりです。
- 要件を満たさなければ手続を行うことはできない
- 手続を行うためには費用が必要となる
- 必ずしも最低弁済額まで減額を受けられるとは限らない
- 保証人が一括請求を受ける
- 信用情報機関に事故情報が登録される
順に見ていきましょう。
(1)要件を満たさなければ手続を行うことはできない
個人再生は、法律の定めに従って手続が進行するため、誰でも申立てができるわけではなく、要件を満たさなければ手続を行うことができません。
また、手続を申し立てるための要件は小規模個人再生手続と給与所得者等再生手続で異なることにも注意が必要です。
双方の手続に共通する要件は、以下のとおりです。
- 支払不能となるおそれがあること
- 住宅ローンを除く借金総額が5000万円を超えないこと
- 継続的に安定した収入を得る見込みがあること
また、給与所得者等個人再生では、上記に加えて以下の要件が求められます。
- 収入の変動幅が少ないこと
- 過去7年以内に自己破産による免責や個人再生の再生計画の認可を受けていないこと
このように、手続によって満たすべき要件が異なるため、個人再生を申し立てる際にはあらかじめ確認しておくことが重要です。
申立要件の詳細については、以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてご参照ください。
(2)手続を行うためには費用が必要となる
個人再生では、裁判所を介して手続を行うため、裁判所に費用を納める必要があります。
また、手続を弁護士に依頼した場合には、これに加えて弁護士費用も必要です。
裁判所費用には、申立費用のほか、官報公告の費用も含まれ、申立ての時点で納付することが求められます。
万が一、裁判所に費用を納付することができなければ、手続はそれ以上進めることができなくなってしまうため、必ず手続を申し立てる前に必要な費用を捻出できるようにしましょう。
なお、弁護士に手続を依頼すると、債権者に対して受任通知が送付されます。
債権者は受任通知を受け取ると、それ以降は債務者に対して直接督促や取立てを行うことが禁止されます。
これによって、一時的に返済を止めることができるため、今まで返済に充てていたお金を積み立てて裁判所費用を捻出することが可能です。
個人再生に必要な裁判所費用の項目については、以下の記事も参考になるので、あわせてご参照ください。
(3)必ずしも最低弁済額まで減額を受けられるとは限らない
借金の総額に応じて最大で10分の1まで減額を受けることができる点に個人再生の大きなメリットがありますが、必ずしも最低弁済額まで減額されるとは限りません。
具体的には、以下のように減額幅(最低弁済額)が定められています。
借金総額 | 最低弁済額 |
100万円未満 | 借金総額 |
100万円以上500万円以下 | 100万円 |
500万円超え1500万円以下 | 借金総額の5分の1 |
1500万円超え3000万円以下 | 300万円 |
3000万円超え5000万円未満 | 借金総額の10分の1 |
しかし、これはあくまで「この金額以上は返済しなければらない」という最低弁済額です。
特定の条件の元では、最低弁済額よりも大きな金額を返済しなければならないケースもあります。
具体的には、債務者が住宅や車、一定額以上の預貯金などを有している場合には、これらの評価額の合計が弁済額となるため、これが最低弁済額を超えている場合にはその金額を分割で支払わなければなりません。
これは、「清算価値保障原則」という考え方によって、最低弁済額が修正を受けることに理由があります。
清算価値保障原則は、個人再生で定められる最低弁済額は、債務者が自己破産を選択した場合に債権者に配当される金額を下回ってはいけないという考えに基づいています。
自己破産では、債務者が一定額以上の財産を所有している場合には、手続の中で換価処分が行われ、債権者に配当が行われます。
しかし、個人再生では換価処分は行われず、財産を債務者が引き続き手元に残しながら手続を行うことが可能です。
そのため、財産が債務者の手元に残されることを考慮に入れずに借金の減額を認めてしまうと、破産手続と個人再生手続との間で公平性を保つことができなくなってしまいます。
清算価値保障原則は、そのような観点から、債務者と債権者の間の利益を調整する機能を持っているといえます。
なお、どのような財産が清算価値として計上されるかについては、以下の記事で詳しく解説しています。
(4)保証人が一括請求を受ける
先に述べたように、個人再生ではすべての債務が手続の対象となり、申立人が自由に選ぶことはできません。
そのため、保証人がついている債務については、その債権者は保証人に一括請求を行うことができるようになり、保証人に支払を強いることとなってしまう点に注意が必要です。
なお、同じ債務整理の手続でも、任意整理では手続の対象とする債務を選ぶことができるため、保証人を立てている債務を除外することで保証人への影響を避けることができます。
個人再生の手続と保証人の関係については、以下の記事もあわせてご参照ください。
(5)信用情報機関に事故情報が登録される
個人再生に限らず、債務整理の手続を行うと、信用情報機関にその事実が事故情報として登録されてしまいます。
これによって、一定期間にわたって新たな借入れやローン、クレジットカードの利用ができなくなってしまうため注意しましょう。
信用情報機関は、金融機関から顧客の借入れや返済に関する情報の提供を受けてこれを管理し、金融機関からの照会があれば情報を開示する機関です。
債務整理の手続を行ったという事実は、その人の返済能力に問題があることを意味するため、借入れやローンの申込みを行っても、拒否されてしまいます。
個人再生を行うことによって事故情報が登録される期間は、信用情報機関ごとに以下のようにさまざまです。
株式会社シー・アイ・シー(CIC) | 株式会社日本信用情報機構(JICC) | 全国銀行個人信用情報センター(KSC) |
完済から5年 | 完済から5年 (ただし2019年9月30日以前の契約は手続開始決定日から5年) |
手続開始決定日から10年か、完済から5年のいずれか遅い方 |
そのため、個人再生の手続で認可された再生計画に従い、完済を行ったとしても、最長で10年間は借入れやクレジットカードの利用ができなくなる可能性があることを押さえておきましょう。
なお、再生計画に基づく返済中や完済後の注意点については、以下の記事でも詳しく解説しています。
5.個人再生を行うことについて弁護士に相談・依頼するメリット
個人再生の手続には、専門的な知識や経験が求められるため、弁護士に相談の上で手続を依頼するのがおすすめです。
弁護士に相談・依頼することで、以下のようなメリットがあります。
- 借入額や収入状況に応じた最適な解決方法の提案を受けられる
- 書類作成や資料収集のサポートを受けることができる
- 裁判所とのやりとりを一任することができる
順にご説明します。
(1)借入額や収入状況に応じた最適な解決方法の提案を受けられる
借入額や収入状況に応じて、最適な解決方法の提案を受けることが可能です。
借金問題の解決手段は、個人再生だけではありません。
債務整理の手続には、任意整理や自己破産なども含まれ、借金総額や現在の収入状況などによっては、個人再生以外の手続を行うことができる場合もあります。
もっとも、どのような方法によって解決を行うべきかは債務者一人ひとりの生活への影響なども考えながら選択を行うことが大切です。
債務整理の対応に慣れた弁護士であれば、実務経験などにも基づきながら、どのような解決を図ることが債務者にとってふさわしいかを見極めた上でアドバイスを行うことができます。
(2)書類作成や資料収集のサポートを受けることができる
弁護士に相談・依頼することで、書類作成や資料収集のサポートを受けることができます。
個人再生の申立てには、さまざまな書類・資料を揃えなければなりません。
しかし、どのような書類や資料が必要となるのかは、資産状況などによっても異なります。
そのため、専門知識や実務経験がなければ、過不足なく作成や収集を行うことは困難な場合がほとんどです。
弁護士からサポートを受けながら準備を進めることで、スムーズに解決に向けて取り組むことが可能です。
個人再生を行う際に必要となる書類や資料の種類、作成のポイントなどについては、以下の記事で詳しく解説しています。
(3)裁判所とのやりとりを一任することができる
弁護士に依頼することで、裁判所とのやりとりを一任することもできます。
個人再生では、申立書類や再生計画案の提出など、裁判所と直接やりとりをしなければならない場面や期日もあります。
債務者ご自身で対応することも可能ですが、裁判所とのやりとりには専門的な知識や実務経験が求められることもあり、対応を誤ると再生計画案の認可が下りない場合も考えられます。
弁護士であれば、債務者の代わりに的確に対処することができるため、個人再生が成功する可能性を高めることが可能です。
まとめ
個人再生をすることで、官報に氏名などの個人情報が掲載されます。
しかし、官報を入手できるルートは限られており、一般の人が目にする機会はかなり少ないため、官報を介して個人再生をした事実が知られる可能性は低いです。
個人再生では、手続を進める上で専門的な知識や経験が求められるため、まずは弁護士に相談するのがおすすめです。
弁護士法人みずきでは、個人再生に関する相談を無料で受け付けておりますので、手続上のことで不安な方はお気軽にご相談ください。
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