遺産分割の方法③~株式の場合~

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1.株式の遺産分割の注意点

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株式とは、株式会社が活動するのに必要な資金を集めるために発行されるものです。

人がお金を払って株式を買うと、そのお金が株式会社の資金となるという仕組みになっているのです。

株式を持っている人は、株主と呼ばれます。

株主の権利、つまり株式を持つことで得られる権利としては、株式会社から配当金を受け取る権利や、株主総会に参加して議決権を行使する権利などがあります。

株式は、一見してその金銭的価値が明確なものではなく、価値が変動する性質を持っています。

また、株式は、株主として会社の経営に参加する権利を伴うため、遺産分割がなされていないと株主総会決議ができない事態に陥ることがあります。

2.株式の相続に関する問題点

株式が相続財産に含まれている場合には、以下のことについて注意する必要があります。

(1)株式は相続人の共有となる

株式それ自体は、不可分、つまり複数人で分けられない性質のものです。

そのため、相続が生じると同時に、共同相続人全員で株式を共有(厳密には「準共有」と呼ばれるものです。)している状態となります。

(2)共有している株式の議決権の行使

株式を共有している場合、株主総会の議決権を行使するためには、共有者の中から権利を行使する者を1人決めて、会社にそれを通知する必要があります。

この場合、この権利行使者が、自己の判断で、株主として権利行使を行うことができます。

この権利行使者を決めることは、共有物の管理行為と考えられているため、持分価格の過半数で決まります。

そのため、特に実際の話し合いを行わずとも、持分価格の過半数をもつ共有者の意向次第で権利行使者が決まってしまうことになりますが、裁判例の中には、そのように全く協議を行わず権利行使者を決めたことやその権利行使者の議決権行使を権利濫用として許されないとしたものもあります。

3.株主総会決議と相続の関係

株主総会決議とは、株主が会社の経営等を決定するものです。

株主総会決議には、「定足数」と呼ばれる要件を満たす必要がある場合があります。

この定足数とは、その株主総会に出席する株主たちの持っている議決権の総数が一定数に達しなければならないというものです。

最も一般的な「普通決議」と呼ばれる株主総会決議の場合を例にとると、1株式1議決権、会社が発行している株式の総数が110株で、それをAさんが10株、Bさんが40株、Cさんが60株という内訳で持っている場合、定足数は110株の過半数、つまり56株です。

そのため、AさんとBさんだけでは、合計50株で過半数に満たないため、株主総会決議を行うことができません。

そこで、Cさんの株式が相続されて、未だ遺産分割されていないという場合、Cさんの株式について、相続人の誰が権利行使するのか定まらなければ、この会社で株主総会決議を行うことができないことになります。

4.株式の遺産分割の方法

(1)株式を売却して、その売却代金を分ける(換価分割)

株主として権利行使したい相続人がいない場合には、株式をお金に変えて分割してしまうことができます。

この方法は、分けやすく、かつ、公平な遺産分割が可能です。

具体的な手続としては、まずは、相続人のうち誰か一人が相続株式を取得するものとして、株式会社や証券会社と手続を進めます。

そして、その相続人が株式を売却して、売却代金を皆で分けるのです。

誰が株式を取得し、売却するのか、売却代金の分け方はどうするのかを事前に協議して決めておく必要があります。

もっとも、上場株式で、株券を「ほふり」に預託していない場合には、株券の電子化で、信託銀行等に開設された「特別口座」に株式があることになります。

しかし、株式は特別口座にあるままでは売却等ができません。

そこで、この特別口座にある株式を売却する場合には、前もって、相続人自身が証券会社に取引口座を開設し、その取引口座に振り替える(移す)必要があります。

(2)誰か一人や複数人が相続し、相続人間の平等は調整金や他の相続財産で処理する(代償分割・現物分割)

上記のとおり、株式を共有すると非常に身動きがとりにくいため、株式を取得する人を決めてしまい、その他の相続人には、調整金を支払ったり、他の相続財産を割り当てることで話をつける分割方法があります。

この場合は、その株式を何円の財産として評価するかが問題となります。

この点、相続税の場合は、株式の評価方法が例えば以下のように決まっています。

#1:上場株式の場合

以下の①~④のうちもっとも低い価格で評価します。

① 相続開始日の取引所の最終価格(終値)
② 相続開始日の属する月の終値の月平均額
③ 相続開始日の属する前月の終値の月平均額
④ 相続開始日の属する前々月の終値の月平均額

#2:①登録銘柄・店頭管理銘柄として指定されている株式や、②公開途上にある株式

①②合わせて、「気配相場等のある株式」と呼ばれます。

①登録銘柄・店頭管理銘柄の株式については、上場株式に準じて評価され、②公開途上にある株式については、公開価格により評価されます。

#3:上記以外の株式(取引相場のない株式)

株式を相続した相続人にとって、①同族株主のいる会社か否か、②同族株主グループに属しているか否か、③会社の規模等の組み合わせによって、①類似業種比準価額方式、②純資産価額方式、③①②の併用方式、④配当還元価額方式のいずれかの評価方法が用いられます。

5.名義書換

 

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遺産分割によって、株式を相続した方は、その氏名・住所を株主名簿に記載又は記録しなければ、会社に対して、株主であることを対抗できません。

そのため、株主としての議決権行使を行ったり、利益配当を受けるためには、株主名簿上の記載も相続人に変えておかなければならないのです。

そこで、会社が、株式振替制度(株券が廃止された株式について、振替機関・口座管理機関が作成する振替口座簿の記録によって、株主を把握する制度。株券の電子化(平成21年1月5日)以降は、すべての上場株券が電子化され、振替制度を利用して管理されています。)を利用している場合には、振替機関等へ届出し、株券が発行されている場合には、会社に株券を呈示して名義書換したうえで、権利行使しましょう。

なお、上場株式で、株券の電子化(平成21年1月5日)までに、証券保管振替機構(通称「ほふり」)に株券を預託していなかった場合には、会社が信託銀行等に被相続人(亡くなった方)名義で特別口座というものを開設して権利を保全しくれているのですが、この特別口座を相続した方の名義に変えなければならないので、その信託銀行等に株券や相続を証する書面等を提出することになります。

6.売渡しの請求

これは、株式を相続した相続人の方目線というよりは、相続された株式の会社目線でのお話ですが、相続した株式が、譲渡制限株式(譲渡する場合に、会社の承認が必要な株式。会社にとって好ましくない人が株主にならないようにするために作られるもの)である場合、会社は、定款に定めれば、その相続人に対して、との株式を会社に売り渡すように請求することができます。

この売渡しの請求をする場合には、株主総会の特別決議(重要な意思決定の場合に使われる決議方法なので、決議要件が普通より厳しくなっています。)による必要があり、売渡しの請求をする期限も、会社が、相続があったことを知った日から1年以内という制限があります。

売渡しの価格については、原則として、会社と相続人との間で話し合って決めることになりますが、会社または相続人から、裁判所に対して価格決定の申立てを行うことで、裁判所に決めてもらうことができます。

この価格についても、会社と相続人との間で話し合いがまとまらず、価格決定の申立てもないまま20日が経過した場合には、売渡しの請求の効力が無くなってしまうので、注意が必要です。

まとめ

以上のとおり、株式の相続は、法律関係・手続ともに非常に複雑となります。相続人の方々の負担を軽減し、会社の経営を円滑にするためにも、生前に遺言で定めておくことが望ましいです。

しかし、仮に遺言で定めていなかった場合でも、ひとつひとつの手続を進めていけば、解決していくことができます。

株式について、遺言を作成したい場合や、相続が発生した場合等、お気軽に弊所にご相談ください。