遺産分割の方法④~動産の場合~

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1.動産とは

動産とは、簡単に言うと「動かすことができる物」のことです。

それに対して、不動産は「動かすことのできない物」で、土地と建物が不動産に当たります。

言ってしまえば、相続財産となる形ある物体のうち、土地と建物以外はみんな動産に当たると考えることができます。

2.動産の相続の注意点

動産が相続されると、いわゆる「形見分け」など、遺品整理の一貫として処理されることも多いものです。

しかし、動産は、相続開始と同時に、相続人全員で法定相続分にしたがって共有する状態となりますので、一部の相続人間で勝手に「形見分け」してしまうことは問題です。

また、動産は、思い出のアルバムから、些細な日用品、家財道具、ピアノ、自動車、貴金属等に至るまで、その大きさも価値も非常に多彩です。

そのため、小さく高価な物は、容易に持ち出せてしまいますし、大きく金銭的価値の低い物は、相続人の誰も欲しがらず、処分費用が嵩むなど、紛争の原因となることも多いものです。

さらに、このような動産たちにも、相続税がかかってきますし、遺産分割の方法によっては、相続税以外の税金がかかる場合があるのです。

家庭の動産に関する相続税については、1個または1組の金銭的価値が5万円以下の物は一世帯ごとにまとめて価値を申告すれば足りますが、金銭的価値が5万円を超える物については、1つ1つで相続税の対象物として評価しなければならないため、そのためにも、少なくとも5万円以上の価値が見込まれる動産については、専門家の査定を取っておくべきです。

財産の価値や遺産分割の仕方により、相続人の方が支払う相続税等も変わってくるので、税金のことまで見越して遺産分割を行うことが理想的です。

そこで、相続が発生したら、できるだけ早期に、亡くなった方がどんな動産を残していったのか、相続人間で情報を共有し、特に貴金属や自動車など、一般的に金銭的価値の高い動産については、査定を取り、相続人間で価値を把握したうえで、分割方法を定めることが大切です。

3.動産の遺産分割方法

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(1)動産をもらう人が、調整金を支払ったり(代償分割)、金銭以外の財産を他の相続人に渡す(代物分割)

貴金属や自動車等の金銭的価値のある動産の場合、その物ごとに誰か一人がもらうこととし、法定相続分等と比べもらいすぎとなった場合に、調整金を支払ったり、自分の財産を渡すことでバランスをとる方法があります。

どのくらい「もらいすぎ」なのかを考えるうえで、専門家の査定価格が重要となるため、できれば複数の査定をとることをおすすめします。

この遺産分割方法は、調整金を支払えるだけの資力または価値ある財産が、その相続人にあることが前提となります。

また、金銭ではない自分の財産で調整した場合には、自分の財産で調整金相当額の債務を免れることとなるために、譲渡所得税等が課税されるので、注意が必要です。

(2)動産ごとに、もらう人を決める(現物分割)

動産ごとに、もらう人を決めて分けてしまうのか、価値のバランスを考えなければ、一番自然でやりやすい分け方です。

結果として金銭的には法定相続分とはかけ離れた分け方となる可能性もありますが、金銭的価値よりも、思い出としての価値が高い動産は、このように「形見分け」として分けてしまうのが適切かもしれません。

もっとも、一見、金銭的価値が全然ないように見える書籍や古道具等が、実は、高値で取引されうるコレクターズアイテムだったことが判明し、相続人の間でもめ事が発生することもあります。

その物の価値を一番よくご存じのはずの被相続人(亡くなった方)が、その価値を示す資料や情報を残しておいてくだされば、そのようなトラブルは防げますが、そうでない場合にも、念のために査定を取っておくと安心です。

(3)動産を売却して、その売却代金を分ける(換価分割)

実際に売却してしまい、お金となったものを分ければ、金額的な紛争を避けられます。

特に、美術品や骨董品等、価値が分かりにくい動産に関しては、お金に変えてしまうことで価値を明確にすることが、遺産分割をスムーズにするひとつの手となります。

その後の争いを避けるためにも、できれば複数の査定を取り、誰が売却手続を担当するか、どこの業者に売るか、売却代金を分ける割合などを事前に相続人全員で決めておくことが大切です。

また、古い家電製品やたんす等、処分費用が嵩んでしまい、マイナスの価値しか残さないような動産もありますが、そのような動産についても、同様に、誰が処分手続を担当するか、どこの業者に処分するか、処分費用を負担する割合などを事前に相続人全員で決めておけば後々の紛争を避けることができます。

さらに、この場合も、財産を売却して金銭という利益を得ることとなるために、譲渡所得税等が課税されるので、注意が必要です。

まとめ

以上のとおり、動産は量も多く、その大きさも価値も様々で、一律な処理が適さない面があります。

税金のことを含め、後々のトラブル・紛争を防ぐためにも、早期に、動産の全体像を把握し、それぞれの動産に適した遺産分割の方法をとっていく必要があります。

また、どうしても欲しい動産がある場合には、適正な価格を資料で示し、調整金や他の財産・遺産でバランスをとり、他の相続人を説得する努力も必要です。

さらに、高価な動産については、予め遺言により相続する方を定めておけば、相続人の方が負う手続負担をぐっと減らしてあげることができます。