離婚事件を弁護士に相談するべきか?相談するメリットを解説
「法は家庭に入らず」という法諺(法律上の格言)があります。
たとえば、子どもが親の財布から勝手にお金を抜き取ったりした場合、客観的には完璧な窃盗ですが、刑法では刑罰が免除されることになっています。
婚姻関係で問題が生じたときにも、
「そんな大事ではないし…」
「家族の問題だし…」
「恥ずかしいし…」
と、第三者を交えずに対処しようとがんばってしまう方が多いように感じます。
もちろん、それでうまく進むのであれば問題ありません。
当事者同士のお話し合いでうまく収まるのであれば、それが何よりです。
しかし、「法は家庭に入らず」は、あくまで「家庭」として円満に協同できている場合です。
残念ながら、「家庭」という集まりが存続の危機に瀕しているときには、「家族だから」という想いが通じなくなってしまうことも、往々にしてあります。
そのような場合には、代理人として弁護士を介入させることで、お話し合いが円滑に進むようになることもあります。
では、弁護士が介入すると、具体的にはどのようなメリットがあるでしょうか。
1.弁護士介入のメリット
一言で離婚事件と言っても、その内容は十人十色です。
どのような事案でも、弁護士が介入するメリットは存在するとは思いますが、代表的な例をいくつか挙げてみます。
(1)感情的な諍いになってしまっている場合
離婚問題は、契約紛争などとは違って、その根底に「好き」「嫌い」という感情があります。
「好きだから、別れたくない」
「嫌いだから、別れたい」
という対立が構造的に生じてしまうのです。
また、双方が「嫌い」同士だと、さらに激しい対立を生じます。
どっちが悪いか、どれだけ悪いか、といったところを指摘しあい、お話合が前に進まなくなってしまうことが多いです。
このような時に、第三者である弁護士が間に入って交渉窓口になることにより、感情的になって建設的、前向きな話しができずにいた状況から前進することがあります。
(2)相手方からの要求が過剰と思われる場合
意外とこのご相談も多いです。
ちょっとした出来事や、過去の出来事をもって、高額な慰謝料を要求されたり、過分または過小な財産分与を示されたり、ということが少なからずあります。
要求を受ける側としても、確かに弱みもあり、あまり強く意見もできず、かといって二つ返事で応じることもできない金額だ…どうしよう…、と考えてしまいます。
弁護士が代理人となれば、相手方の主張が法的に正しいのか、過剰だとすれば法的に適切な基準どこなのか、という点を判断できます。
また、こちらが応じる必要がないような要求なのであれば、法的な考え方を説明して、毅然とした対応もできます。
相手方としても、弁護士が「法律的にはその要求は叶えられないんだ」ということをきちんと説明すれば、納得してもらいやすいです。
(3)取り決めをきちんとした形で残しておきたい場合
夫婦間で激しい対立もせずに、うまく条件面のお話し合いができることもあります。
しかし、それだけでは少々不安も残ります。
法律上は、原則として「口約束でも契約は成立する」のですが、仮に後々争いになったときには、それを立証(証明)しなければなりません。
そのため、取り決めた内容をきちんと書面に残しておくことが大切になります。
協議離婚の場合には、「離婚協議書」を作成したり、より万全を期するのであれば「公正証書」を作成したりすることが考えられます。
弁護士にご依頼いただければ、双方の合意内容を、後々争いが生じないように、適切な文言でこれらの書面作成をお手伝いします。
(4)調停や裁判になった場合
これは言わずもがなですね。
離婚裁判は、法律上この二人を離婚させるべきか否か、ということを判断することになります。
したがって、当事者の意見、主張を法律的な主張にして裁判上に提出する必要があります。
一般の方が対応するのは非常に大変です。
離婚調停は、裁判のように裁判所が判断をくだすわけではなく、夫婦間の話し合いの場です。
そのため、弁護士をつけずに個人で対応している方も少なからずおられます。
しかし、私としては、調停でもなるべく弁護士に依頼いただいたほうがいいのではないかと思います。
というのも、調停は話し合いが基盤となるがゆえに、主張すべきことを、受け入れてもらいやすい形で主張できるか、という点で大きな差が生まれるのです。
したがって、スムーズに調停を成立させたい、適切な条件で離婚したいという場合には、調停においても弁護士を代理人とした方がよいかと思われます。
(5)対象財産に意見の対立が生じてしまった場合
離婚は、それまでの共同生活を解消するので、財産分与が行われます。
夫婦間でどのように財産分与を行うか決める必要があります。
何が財産分与の対象になるのか?
その財産の評価基準時はいつか?
分けるとしてその割合は?
割合が決まったとして分け方は?
などなど、たくさん考えるべきことが出てくるのです。
夫婦間で円滑に取り決めることができればよいのですが、もし意見の対立が生じた場合にこれを夫婦で法律にしたがって取り決めようとすると簡単ではありません。
その上、①のように感情的な対立もあると、離婚自体を進める大きな障害になってしまいかねません。
このような場合には、弁護士が資料に基づいて計算し、分与の方法等をご提案するという形をとることで、円滑な解決が目指せます。
離婚に関する問題にお悩み、ご不安を抱えている方は、この不安を取り去るために、弁護士の「相談」を活用してください。
相談の結果、問題がなければそのまま進めていただけばよいですし、何か問題があればご依頼を検討いただけばいいと思っています。
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