任意整理をしない方がいいケースとは?メリットやデメリットを解説

執筆者 花吉 直幸 弁護士

所属 第二東京弁護士会

社会に支持される法律事務所であることを目指し、各弁護士一人ひとりが、そしてチームワークで良質な法的支援の提供に努めています。

「任意整理をしない方がいいケースとは?」

「任意整理にはどんなデメリットがある?」

借金問題を解消する債務整理の手続の一つである任意整理をすべきか迷っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

本記事では、任意整理をしない方がいいケースや、任意整理のメリット、デメリットなどについてご説明します。

1.任意整理をしない方がいいケースとは

任意整理は、破産や個人再生など他の債務整理の手段とは異なり、裁判所を介さずに借金の整理を行う手続きであるため、比較的行いやすい手続というのが特徴です。

しかし、任意整理を行うべきではないケースがいくつかあります。

  • 車や住宅のローンなど金利が低い借金を対象とする場合
  • 親族や近しい関係の方が保証人になっている場合
  • 預金している銀行のカードローンを対象にする場合
  • 3〜5年で元金を返済することができない場合

それぞれご説明しますので、どのようなケースがあるのかチェックしておきましょう。

(1)車や住宅のローンなど金利が低い借金を対象とする場合

車や住宅のローンなど金利が低い借入金については、任意整理をしない方が良いケースが多いです。

任意整理の1つのメリットは借入金の利息をカットできることですが、金利が低い場合はその利息のカットという部分で大きなメリットが生じません。

また、マイカーローンや住宅ローンの任意整理をすると、車の引き揚げや家の競売などによって自動車や住宅を失うリスクがあります。

予め計画的に行う場合は別ですが、家や車が任意整理によって失うことにあってしまうと、生活の変更を余儀なくされ、より費用が掛かってしまうこともあります。

このような場合、任意整理では借入先を選べるため、マイカーローンや住宅ローンを避けることをおすすめします。

(2)親族や近しい関係の方が保証人になっている場合

親族や近しい関係の方が保証人になっている場合、任意整理を行うかどうか事前によく検討することが必要です。

保証人つきの借金を任意整理すると、保証人が返済を迫られることになります。

その結果、保証人である親族や近しい関係の方も債務整理を検討せざるを得ないケースもあるため、事前に一緒に債務整理を行うかどうかなど慎重に検討しましょう。

(3)預金している銀行のカードローンを対象にする場合

預金している銀行のカードローンを任意整理の対象にする場合、預金口座を凍結されるリスクがあります。

現金を引き出せないのはもちろん、給与の振込や引落しなどにも不都合を生じる可能性があります。

一旦凍結されると解除に数ヶ月かかるので、生活に支障を来します。

預金している銀行のカードローンを任意整理の対象とする場合については、事前に弁護士に預金や給与の振込先、各種公共料金の引落先などについてよく相談して行う必要があります。

(4)3〜5年で元金を返済することができない場合

任意整理した場合、借金の支払いスケジュールについて取り決めをし直すことができますが、その期間は3~5年になることが多いです。

そのため、3~5年で元金を返済することができない場合は、任意整理はおすすめできません。

債権者に合意してもらえない可能性が高いです。

借金の元金を約60回に分割した金額を毎月支払えるか検討しましょう。

支払える見込みがない場合は、その他の債務整理の方法を行う必要があります。

2.任意整理のデメリットとは

任意整理には、いくつかのデメリットがあります。

  • クレジットカードを利用できなくなる
  • 一定期間ローンを組めない
  • 返済が滞ると一括請求される
  • 元本の返済義務は残る
  • 債権者が任意整理に応じないケースがある

任意整理を検討する前に、デメリットについて把握しておきましょう。

(1)クレジットカードを利用できなくなる

任意整理をすると、任意整理の対象としたクレジットカードが利用できなくなり、一定期間、新規に他社のクレジットカードの申込みをしても審査に落ちてしまいます。

任意整理を行ったことが信用情報機関に事故情報として登録されるためです。

以下の点でクレジットカードが利用できなくなります。

  • 任意整理の対象としたクレジットカードはその時点で利用できなくなる
  • 任意整理をしても他のクレジットカードは使えるものの、いずれ利用できなくなる可能性がある
  • 新規で他社のクレジットカードの審査に通らなくなる

任意整理の対象としたクレジットカードはその時点で利用できなくなります。

任意整理の対象としていない他のクレジットカードは使い続けることができますが、更新の際などに信用情報機関に事故情報の確認を行う可能性があるため、そのクレジットカードがいずれ使用できなくなる可能性が高いです。

また、信用情報機関から事故情報が削除されるまでは、新規でクレジットカードの審査に通らず、カードの発行を受けることはできません。

信用情報機関から事故情報が削除されるまでの期間についてこの記事をご参照ください。

●No.482 任意 整理 ブラックリストへの内部リンク

(2)一定期間ローンを組めない

任意整理をすると、一定期間ローンを組めなくなります。

信用情報機関に事故情報が登録されるので、クレジットカードと同様、審査に通らなくなるのです。

ただし、信用情報機関から事故情報が削除されれば、ローン契約を結ぶことは可能です。

(3)返済が滞ると一括請求される

任意整理後は、新たに決まったスケジュールで返済を続けていく必要があります。

任意整理後に生活に苦しくなり、任意整理で定めた毎月の金額を返済できないでいると、期限の利益の喪失という債務を一括請求されてしまう状態になります。

一括請求があってそれに対応しないでいると、裁判を起こされ、給与や銀行預金等の財産の差押えをされてしまう恐れもあります。

任意整理では継続的な返済が必要です。もしそれが困難な場合は、債務整理の他の手続きである破産や個人再生といった手続を行うなどの対処が必要です。

(4)元本の返済義務は残る

任意整理では、借金の利息分の減免を弁護士が交渉することができますが、元本に関しては見直したスケジュールで全て返済義務があります。

もし3~5年の分割払いでも元金を全て返済できる見込みがない場合は、任意整理はできず、他の債務整理の方法を検討することになります。

(5)債権者が任意整理に応じないケースがある

債権者が任意整理に応じないケースがあります。

任意整理は弁護士が毎月の返済金額やスケジュールの交渉を弁護士が債権者と行いますが、債権者が応じない場合には新たなスケジュールに組みなおすことができません。

とはいえ、任意整理に応じないでいると他の債務整理方法である破産や個人再生を行うことになるため、債権者としても元金を回収できなくなってしまいます。

そのため、一部の債権者を除いて多くの場合、新たな返済スケジュールに応じて任意整理ができます。

3.任意整理のメリットとは

上記のようなデメリットはあるのですが、任意整理は借金の返済に問題を抱えた方の経済的な再起を助けるメリットの大きな手続です。

  • 債権者からの督促が止まる
  • 個人再生や自己破産よりも生活への影響が少ない
  • 裁判所を介さずに早期の解決が見込める
  • 介入先の借金を選択することができる

それでは任意整理のメリットについて解説します。

(1)債権者からの督促が止まる

任意整理のメリットの一つは、債権者からの催促が止まることです。弁護士は任意整理の依頼を受けると、債権者に対し、受任通知を送付します。

債権者は受任通知を受け取ると、全て弁護士を介してやり取りを行うことになります。

債務者側は催促されなくなり、精神的なストレスの軽減が図れます。

家族に借金を知られたくない方にとっても、この点は大きなメリットといえると思います。

(2)個人再生や自己破産よりも生活への影響が少ない

任意整理は、個人再生や自己破産よりも生活への影響が少ないという特徴があります。個人再生や自己破産では、住宅や自動車、保険などの財産を残すことが難しいケースがあります。

任意整理では、クレジットカードやローンは利用できなくなるものの、財産はそのまま持ったまま行うことができます。

任意整理によって新たに定まった返済スケジュールを守ることでそれまでと変わらない生活を送ることができます。

(3)裁判所を介さずに早期の解決が見込める

任意整理は、裁判所を介さずに比較的早期の解決が見込めます。

任意整理は弁護士と債権者との交渉になるので、破産や個人再生と異なり、裁判所は関与しません。

また、裁判所を介する債務整理を行う場合は手続が始まってから3~6ヶ月程度の期間がかかりますが、任意整理では、債権者に合意を得られた時点で手続完了となるため、比較的早期の解決が見込めます。

(4)介入先の債権者を選択することができる

任意整理では、対象とする介入先の借金を選択することができます。

複数の借金がある場合、特定の借金のみ任意整理を行い、その他は通常通り返済するというのも状況に応じて有効な手段です。

とくに、保証人つきの借金を任意整理すると保証人に影響するので、任意整理の対象から外すなどの対応が可能です。

まとめ

任意整理は、利息のカットや支払いスケジュールの再調整ができますが、元金は3~5年程度で分割して全額返金する必要があるので、3~5年間返済を継続できる見込みがない場合は行うことができません。

また、住宅や車のローンや保証人つきの借金など任意整理を行うと支障をきたす借金は、任意整理の対象から外すなどそれぞれの方の事情に応じた柔軟な対応ができる特徴があります。

任意整理のメリット、デメリットを把握し、任意整理を行うか、別の債務整理の方法を検討するのが良いのか弁護士から事情にあった説明を受けることができますのでお気軽に相談してください。

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執筆者 花吉 直幸 弁護士

所属 第二東京弁護士会

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