本部が行う指導・研修の問題点

<指導・研修は何のために行われるか>
フランチャイズは、本部が開発したノウハウ、システム、サービスマーク等(以下では、単に「ノウハウ等」と言います。)を加盟店に提供し、加盟店は、本部に対してロイヤリティを支払って本部の持つノウハウ等を使用して事業を行うものです。加盟店にとっては、既に開発、確立されたノウハウ等を利用して事業を行うことで、新たなノウハウ等の開発にかけるコストを抑え、かつ本部の有する社会的な知名度、信用性の庇護のもとに事業を開始できる点にメリットがあります。
加盟店が上記のようなメリットを享受する上で、技術指導や経営指導、研修が重要な意義を持つことになります。これは、本部にとっても重要な意義があります。なぜなら、加盟店が、本部のノウハウ等を十分に利用できずに開業後にすぐに事業に行き詰ってしまっては経済的な損害が出ますし、一部の加盟店が、一定の水準に達しない事業を行ってしまっては、同様のサービスマークを使用している以上、その加盟店の信用の低下が、フランチャイズ全体の信用が低下してしまいます。

このように、フランチャイズにおける指導・研修は、加盟店のサービスの水準を保ち、安定した経営が行われるようにするために行われる重要なものです。

<指導・研修の内容>
指導・研修が行われる時期、内容は多岐にわたります。
加盟店が事業のスタート時点から安定した経営を行えるようにするためには、開業前に研修を行う必要があります。また、安定した経営を長く続けるためには、サービスを一定の水準に維持するための定期的な指導・研修が必要になります。
内容に関していえば、商品やサービスの知識、経営・会計、接客サービス、品質管理、安全衛生管理、労務管理、マーケティング論の座学研修や、本部の直営店等での実務研修(OJT)があります。

<指導・研修の費用>
指導・研修が行われる場合、その費用は、加盟金に含まれている場合や、加盟金とは別途の費用が必要な場合があります。裁判例では、開業後のノウハウの提供の対価がロイヤリティであるとした裁判例があります。

<指導・研修の問題点>
指導・研修を巡るトラブルで多いのが、適切な指導・研修が行われなかったために、事前に受けていた説明どおりの売上、収益があがらずに、フランチャイズ契約を解消し、損害賠償を求める、といった場合です。指導・研修は、加盟店が適切に事業を運営していくうえで必須のものですから、適切な指導・研修が行われない場合は、本部の債務不履行責任を問いうる場合もあります。