個人再生の家計収支表の書き方を解説!気をつけるべき点は?

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。

「個人再生の申立てのために家計収支表をつけなければならないけど、あまり書き方がわからない。」
「そもそも、なぜ個人再生で家計収支表を提出する必要があるの?
個人再生の手続を行うにあたっては「家計収支表」と呼ばれる家計簿のような書類の提出を裁判所から求められますが、これに対して上記のような疑問を抱かれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、具体的な家計収支表の作成方法や記入例、裁判所に家計収支表を提出しなければならない理由についてご説明します。
個人再生の手続を進める上でのご参考になれば幸いです。

1.個人再生に家計収支表作成が必要な理由


個人再生では、申立てを行う際に家計収支表を裁判所へ提出する必要があります
では、どのような理由で提出が求められ、裁判所はこれをどのような観点でチェックするのでしょうか。
順にご説明します。

(1)なぜ家計収支表を提出するのか

個人再生は、裁判所から再生計画案の認可を得て債務を一定の割合に圧縮した再生計画に沿って原則3年間(例外的に5年間を認められる場合もあります。)で返済を行っていく手続です。

裁判所は再生計画の認可決定を行うにあたり、債務者が再生計画に定められたとおりに返済を行っていけるかどうかを判断することになります。その判断を行うにあたっては、裁判所が債務者の収支状況を把握する必要があります。
そこで必要になるのが家計収支表です。

家計収支表と債務者の収入資料、光熱費等の支出に関する資料を合わせて見ることにより、裁判所は、債務者が月々どの程度の金額を返済にあてられるかどうか判断するのです。

このように、裁判所が再生計画の認可決定をする際の資料とするため、家計収支表の提出が必要になっているのです。

(2)裁判所はどのような観点で家計収支表を確認するか

では、裁判所は、債務者から提出された家計収支表をどのような観点からチェックするのでしょうか。

個人再生において重要視されるのは、債務者が再生計画のとおりに返済していけるのかどうかです。
裁判所は、家計収支表や、債務者の収入に関する書類などの記載を確認し、これを判断します。

家計収支表の記載からは、不必要な支出の有無や収支状況の安定性などを見ることになります。
例えば、娯楽費や交際費などが高額になっている場合、債務者が余計な支出をすることにより、返済にあてる分を手元に残せなくなる可能性があるのではないかと考えることになります。

また、収入が少ないかあるいは不安定で余裕がないように見える場合、なんらかの理由で支出が増加するだけで返済ができなくなる可能性があるのではないかと思われてしまいます。
このように、裁判所は家計収支表から、債務者が返済を行っていけるかどうかを判断しています。

個人再生の手続のために家計収支表を作成する際は、裁判所が以上の観点でチェックしていることを考慮する必要があります。
弁護士に依頼して個人再生を行う場合、家計収支表の作成の段階でも、弁護士と相談しながら家計の収支を改善しつつ、再生計画の認可決定を得られやすくなるように準備を進めることができます。

2.個人再生における家計収支表の作成方法


実際に家計収支表を作成する場合、どの程度の期間について作成する必要があるのでしょうか。
また、収入、支出はどのような項目に分ける必要があるのでしょうか。

家計収支表を作成する際に気を付けるべき点についても合わせ、順に説明します。

(1)家計収支表を作成する期間

裁判所への申立ての際には、直近数か月分程度の家計収支表を提出する必要があります。

実際に何か月分の提出が必要になるかはお住まいの地域の管轄裁判所によってまちまちですが、2か月分の家計収支表が必要になる場合が多いです。
また、弁護士に依頼した場合、弁護士側で個人再生の方針で進めてよいか判断する必要もありますので、申立てに必要ない期間についても、家計収支表を作成することが求められることがあります。

個人再生を検討し始めた時点で、ご自身の家計について気を配っておくとよいでしょう。

また、申立て後も、裁判所から、個人再生の手続が終了するまでの間、家計収支表をつけるように指示を受ける場合もあるため、準備期間も合わせると都合10か月近く継続して家計収支表をつけることになる場合もあります。

個人再生を行うのであれば、1年近くの間、ご自身の家計を正確に把握することが必要になるのです。

(2)家計収支表の記入項目例

家計収支表にはどのような項目を記入することになるのでしょうか。
当然ながら、家計「収支」表ですので、記入事項は大きく収入と支出に分かれます。
さらにそれぞれについて、細かな項目ごとに金額を記入していくことになります。

以下は、東京地裁で用いられている家計収支表に記載されている項目です。

収入
・前月の繰越額(現金、預貯金ごと)
・給与・賞与(申立人、配偶者、その他)
・自営収入(申立人、配偶者、その他)
・年金(申立人、配偶者、その他)
・生活保護
・児童手当
・他の援助
・その他
・当月収入計

家計が同一の同居人のものも含め、収入については、これらの各項目に当てはめて記入していくことになります。細かなものでも記載しておかないと、通帳等の記載と照らし合わせた際に漏れがあることを指摘されてしまいます。

支出
・家賃(管理費含む)、地代
・住宅ローン
・食費
・日用品
・水道光熱費
・通信費(電話代等)
・新聞代
・保険料
・駐車場代
・ガソリン代
・医療費
・教育費
・交通費
・被服費
・交際費
・娯楽費
・返済(対業者、対親戚・知人、その他)
・その他
・当月支出計
・次月繰越金(現金、預貯金ごと)

収入同様、家計が同一の同居人のものも含めて記入することになります。
水道光熱費や通信費等については、請求書や領収書を合わせて提出するよう求められる場合が多いので正確な金額を記載する必要がありますが、その他の項目は概算でも(千円単位で切り上げるなど)かまいません。

また、交際費や娯楽費などの金額が大きい場合、そのことを裁判所に指摘される可能性がある上、それをそのままにしておくと浪費のおそれがあるとして再生計画が認可されないこともあります。

個人再生を検討し、家計収支表を作成する段階になったら、家計を見直し、不要な支出は抑えるように心掛けるとよいでしょう。

3.個人再生における家計収支表を作成する際の注意点


個人再生の家計収支表は、裁判所が債務者による再生計画どおりの返済可能性について判断する上での重要な資料になります。

これまでの繰返しになりますが、以下の点に注意する必要があります。

(1)できる限り正確に記入する

個人再生の家計収支表を作成する際は、できる限り正確に金額を記入をするようにしましょう。
特に、同時に資料を提出することが求められる給与・賞与、水道光熱費や通信費については1円単位で金額を記入する必要があります。
どのような資料の提出が求められるかについては、申立てをする裁判所ごとに異なることがありますので、申立ての前に、よく弁護士に確認しておきましょう。

そのほかの項目については概算でもかまいませんが、あまり現実の収入、支出の金額との差が大きいと、裁判所が資料とすることができず修正を求められることになりますし、最悪の場合虚偽の申告があったと判断されてしまいます。

できる限り正確な金額を記入するようにしましょう。

(2)領収書等をとっておく

これも重複しますが、水道光熱費、通信費等については、領収書等の提出が求められます。

その他の支出についても、不明な点がある場合には裁判所から資料の提出を求められることがありますので、支出に関する領収書等については、保管しておくのが望ましいでしょう。
領収書等により、家計収支表についても正確な金額を記載することができますので、個人再生申立ての準備に入ったら、提出の必要があるものに限らず、領収書等をまめに保管しておくことをおすすめします。

まとめ

個人再生において裁判所は、提出された家計収支表を資料の一つとして債務者が再生計画どおりに返済を行っていけるのかどうかを判断します。

再生計画の認可決定を出してもらうためにも適切な家計収支表の作成が必要になります。

ひとくちに家計収支表の作成といっても、その作成には気を付けるべき点がありますので、弁護士のアドバイスを受けながら作成することが望ましいと言えるでしょう。

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