兄弟姉妹の遺留分は認められない?認められない理由と相続財産を受け取る方法

執筆者 実成 圭司 弁護士

所属 第二東京弁護士会

皆さまのご相談内容を丁寧にお聞きすることが、より的確な法的サポートにつながります。会話を重ねながら、問題解決に向けて前進しましょう。

「兄弟(姉妹)だけど遺留分の請求はできるの?」
「亡くなった姉をずっと介護していたけど相続財産はもらえるの?」

結論からいうと、我が国の法律では、亡くなった方の兄弟姉妹には遺留分は認められていません。

本記事では、亡くなった方の兄弟姉妹に遺留分が認められない理由と、兄弟姉妹が相続財産を受け取る方法についてご説明していきたいと思います。

この記事を読むことで、亡くなった方の相続財産について、兄弟姉妹にはどのような権利があり、また、相続財産を受け取ることができるのはどのような場合なのか、少しでもお悩みの解消に役立てることができましたら幸いです。

1.遺留分について

遺留分とは、一定の相続人に対して、最低限認められている相続財産の取り分のことをいいます(民法1042条以下)。

例えば、亡くなった夫が、長男に全ての財産を引き継ぐとの遺言を残していたとしても、妻や次男など一定の範囲の相続人は、相続財産のうち最低限の割合の財産を取得することができます。

これは、相続財産について、一定の範囲の相続人の利益を保護しようとする制度で、残された近しい家族の生活保障を行うことが目的とされています。

なお、民法改正により、令和1年(2019年)7月1日より前に相続開始した場合には旧法が、令和1年7月1日より後に開始した場合には新法が適用されます。

以下では遺留分について、新法を前提にご説明します。

2.兄弟姉妹に遺留分が認められていない理由

遺留分は、亡くなった方の兄弟姉妹には認められていません。

上述のとおり、遺留分は、最低限認められている相続財産の取り分のことを言い、残された近しい家族の生活保障を目的に認められる権利です。

しかしながら、兄弟姉妹は、他の法定相続人と比べて、亡くなった方との生活関係や相続人としての法的な関係が一般的には遠いといえるため、亡くなった方の財産による生活保障を及ぼす必要性が低く、最低限の取り分まで認めるのは必ずしも必要とはいえないと考えられているのです。

3.兄弟姉妹が相続財産を受け取る方法

それでは、被相続人の兄弟姉妹が、相続財産を受け取るためにはどのような方法があるのでしょうか。

以下、順にご紹介いたします。

(1)寄与分の請求をする

寄与分とは、被相続人の財産(相続財産)の維持又は増加に特別な貢献をした相続人に対し、貢献した程度に応じて相続分が上乗せされる制度のことをいいます。

たとえば、被相続人の兄弟姉妹が、長年にわたり、被相続人の事業を無償で手伝うことで被相続人が利益を得ていた場合、被相続人の財産の増加に特別の貢献をしたといえます。

また、長期間被相続人を無償で療養介護していた場合、同じような療養介護を施設など他人に頼むとしたらかかっていたであろう費用分がかからなくて済んだ、ということになるため、このような場合にも、相続財産の維持又は増加に貢献をしたといえます。

このように、被相続人の相続財産の維持又は増加に一定の貢献をしていたにもかかわらず、他に何も被相続人に対して貢献していない相続人との間で、相続において同等に扱ってしまうのは、相続人間で不公平が生じることになります。

そこで、このような相続人間の実質的な衡平を図るべく、寄与分の制度が存在します。

寄与分については、遺産分割協議や調停、審判などの場において決定します。

そのため、兄弟姉妹としては、これらの場で、自己の寄与分を認めてもらうための主張・請求を行う必要があります。

もっとも、寄与分にはさまざまな成立要件があり、その算定方法など、法的にも複雑な考慮を要する場合があります。

そこで、寄与分の請求をお考えの方は、弁護士にご相談になることをお勧めします。

(2)遺言無効の主張をする

相続が生じることを見据えて、被相続人が遺言書を作成している場合があります。

このような場合には、相続は、被相続人の意思を尊重するために、遺言の内容に従って行われることが原則となります。

そのため、本来であれば法定相続人として相続財産を受取ることができるはずであったのに、遺言書によってそれが否定されていたり、取り分が減少してしまっている場合、まずはその遺言が本当に有効なのかどうか、検討してみる必要があります。

遺言書は法に定められた厳格な方式に則って作成する必要があるため、適式に作成されていないとその遺言書は法的に無効になります。

たとえば、遺言する人が、遺言の内容等を自書し、押印して保管するという遺言方式(自筆証書遺言、民法968条)を採る場合、遺言者は次のようなことを守って作成する必要があります。

  • 日付を記載すること
  • 自書すること(財産目録部分以外、パソコンやスマホ等で作成したものは無効)
  • 遺言者本人が作成すること
  • 訂正箇所にはその場所を指示し、これを変更したことを付記して、特にこれに署名して変更箇所にも印を押すこと 等

このような方式を守らない遺言書が作成されている場合、被相続人の兄弟姉妹は、遺言無効の主張を行い、無効が認められれば、法に定められたとおりの相続分を手にすることが可能となります。

遺言書に法的な効力があるのかどうかの判断は難しい場合がありますので、弁護士に相談してみることをお勧めします。

なお、遺言書を発見したとしても、勝手に開封しないように注意しましょう。

なぜなら、勝手に開封してしまった場合には、過料(行政上の金銭罰)を科せられる可能性があるからです。

また、遺言書を発見したら、家庭裁判所に届出をして確認(検認)してもらいましょう。

よく勘違いされやすいのですが、家庭裁判所によって検認の手続きが行われたからといって、その遺言書が有効であると決まったわけではありませんので、その点も注意が必要です。

(3)あらかじめ遺言書を作成してもらう

(1)および(2)は、被相続人が亡くなった後の対処方法ですが、もし被相続人がご存命の場合は、あらかじめ遺言書を作成してもらうことも有効です。

被相続人に対し、兄弟姉妹が相続分を有する旨(又は財産を渡さない旨)を遺言書に記載してもらうことで、一定の相続財産を受け取れるように事前に備えておくことができます。

たとえば、被相続人がその兄弟姉妹に対し、それまでの寄与分も考慮した一定の範囲の自己の財産について、「相続させる」旨の遺言を残しておくことが考えられます。

もっとも、先ほどご説明したように、その遺言書の有効性が争われてしまう可能性もありますので、無効と判断されてしまわないように、あくまでも被相続人の自由意思で作成してもらうことが大切です。

4.弁護士に相談するメリット

債務整理の主なメリット

ここでは、遺産分割に問題が生じた場合に、弁護士に相談するメリットを3点ご紹介します。

(1)相続財産を受け取ることができるのかどうか、見込みを教えてもらえる

これまでご紹介してきましたように、被相続人の兄弟姉妹には遺留分は認められていません。

そのため、兄弟姉妹にとっては、遺言書の存在やその効力の有無、寄与分の主張が大切になってきます。

しかし、遺言の効力や寄与分の主張は複雑多様な考慮を要する場合があるため、専門家に相談することをおすすめします。

弁護士であれば、そもそも兄弟姉妹が相続財産を受け取ることができるのかどうかの見込みを検討し、受け取る余地がある場合にはどのような方法を取るべきなのかについて、あらゆる角度から検討・アドバイスすることができます。

(2)ほかの相続人と直接話す必要がないので、ストレスが減る

遺産分割の問題は、当事者同士の話し合いですんなりと解決できれば一番良いとも思えます。

しかし、相続財産が多い場合や、相続財産の金銭的な評価が難しい場合など、専門的な知見が無ければすんなりと話し合いがまとまらないことも多くあります。

親族同士が直接話し合いをすることで感情的なトラブルに発展し収拾がつかなくなってしまうことも珍しくありません。

親族同士という近しい関係だからこそ、感情的なトラブルになってしまうと直接話をすることも大きなストレスとなります。

そこで、間に弁護士を挟むことによって、お互いの主張を整理しつつ、専門的な知見から冷静・公平な解決を目指すことができます。

このように、弁護士に依頼することで、トラブルを最小限に回避しつつ、当事者のストレスを減らすことができるのは大きなメリットといえます。

(3)書類作成や収集などの作業をまとめて任せられる

適切な手続を行うこと(検認手続や、遺言書の効力を争うなど)や、相続人同士での話し合いにおいて適切な主張を行うためには、様々な調査や資料の収集、必要書類の作成、交渉を行っていく必要がありますが、これらを全て自分で行うのはかなりの労力が必要です。

この点、相続問題の処理に慣れている弁護士に依頼した場合、これらを全て弁護士に一任して任せることができます。

遺産相続の問題は、個々のケースにより対応方法が大きく異なるため、当該事案に合った適切な手続きや主張を行うことがとても大切になります。

そこで、相続が発生した場合には、まず弁護士に相談してみることをおすすめします。

まとめ

本記事では、兄弟姉妹が遺留分を認められない理由や、兄弟姉妹が相続財産を受け取る方法などについてご紹介しました。

弁護士に相談することで、まずは相続財産を受け取ることができるのかの見込みを立て、トラブルを避けることができます。

相続が発生した場合は、専門家である弁護士に一度相談することをおすすめします。

執筆者 実成 圭司 弁護士

所属 第二東京弁護士会

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