労働問題とはどういったものがあるのか?労働問題の解決方法
人が生きていく上で、労働することは避けては通れないものです。
そのため、労働にまつわる法律問題は、私たちに身近な問題であり、その内容も多岐にわたります。
「ブラック企業」という言葉が広く使われるようになって久しいですが、これも生活に密接している労働環境が重要であることを意味しているのでしょう。
この労働環境において何らかの法律問題が生じた場合、日常生活に重大な影響を及ぼすことが少なくありません。
したがって、労働問題は早期に解決することも求められます。
問題が行き詰る前に、弁護士にご相談いただき、適切な対応をしていくことをお勧めします。
1.労働災害
業務中や通勤中に怪我を負った場合、労働災害(労災)に該当する可能性があります。
労災であると認められれば、労災保険から一定の給付を受けられるほか、使用者に対して損害賠償の請求が可能となる場合があります。
使用者は、労災保険の適用を嫌がり「自己責任だ」「会社は関係ない」などと言うこともありますが、労災隠しは違法です。
また、使用者が労災保険に入っていなくとも保険適用は可能ですし、使用者が手続をしてくれなくても被災労働者側で保険手続を取ることもできます。
様々な労働形態がある現代においては、どのような事故が労災に該当するかは分かりづらいこともあります。
弁護士にご相談いただき、労災保険からスムーズな給付を獲得し、使用者から適切な賠償金の支払いを得られるように対策を立てるのが肝要です。
2.未払い賃金請求がある場合
法律上、1日8時間、1週間40時間を超えて労働した場合には、その超過時間分の賃金と割増賃金が支払われなければなりません。
また、午後22時から翌日の午前5時までの間に労働した場合には、深夜手当てが割り増しで支払われます。
しかし、使用者側は「規定で残業代は支払われない」「年俸制だから割増賃金は発生しない」などと説明し、これらの賃金を支払わず、労働者に「サービス残業」を強いることがあります。
賃金の不払いは刑罰もある違法行為であり、労働者は法律上当然にこれらを支払ってもらう権利があります。
もっとも残業代等は業種や職種によってその計算方法が様々であり、また2年間で請求権が消滅してしまうという性質があります。
労働者の当然の権利を行使するために、弁護士への早期の相談をお勧めします。
3.解雇・退職強要・雇い止めをされた場合
(1)「明日から来なくていいよ」無効にできるのか
会社は業績が悪化した際などに「リストラ」と称して従業員を解雇する方策をとろうとします。
また、上司が気に入らない社員をクビにしようとすることもあります。
しかし、法律上、雇用主は自由に解雇を行えるわけではありません。
雇用関係は生活を支える重要なものなので、解雇はかなり厳格な要件を充たさない限り無効となります。
もしもあなたが強引に解雇を告げられたのであれば、弁護士が介入した上でその効力を争い、これまでと同じように勤務を継続できたり、給与を支払ってもらえる可能性があります。
(2)「このままだと解雇になるから、自主退職したらどうか?」という圧力に負けない
雇用主は上述の通り、簡単に労働者を解雇できません。
そのため、労働者が自発的に退職するように仕向けてくることがあります。
裁判例上、この退職の打診(退職勧奨)は、あくまで労働者の自発的な退職を促すに過ぎず、労働者は退職に応じる義務はありません。
退職勧奨を明確に断っているにもかかわらず、延々継続される場合、その態様によっては退職強要として労働者に対する権利侵害に該当する可能性があります。
弁護士が介入すれば、そのような行為を停止させる、また退職するにしても条件を有利に交渉するなどの対策を早期に進めることができます。
(3)「契約期間満了だから、さようなら」は法的に正しいのか
正社員の解雇は自由にはできません。
では、正社員と異なり、契約期間にあらかじめ制約のある非正規雇用労働者(契約社員など)に対して、契約更新をしない場合はどうでしょうか。
一般的に、期限が区切られている場合、その後に契約を更新するか否かは当事者の自由です。
しかし、雇用関係は有期契約であっても一定期間継続するものであり、しかも更新されることも当然あり得ます。
したがって、契約上は期限が定められていても、更新を当然の前提としているなど、正社員と実質的に同視できるような場合には、雇い止め(更新拒絶)を争える可能性があります。
3.セクハラ・パワハラを受けた場合
セクハラ(セクシュアルハラスメント)とは、「職場において行われる性的な言動」であり、それに対する労働者の対応により、当該労働者がその労働条件につき不利益を受ける(対価型セクハラ)または当該労働者の労働環境が害される(環境型セクハラ)ものをいいます。
パワハラ(パワーハラスメント)とは、職場における権力関係を利用した性的要素を伴わない人格権の侵害を指すといわれています。
また、必ずしも上下関係に基づいて行われないものをモラハラ(モラルハラスメント)ということもあります。
これらはいずれも雇用関係、労働環境という容易には逃げられない状況下におけるものであるため、その被害は苛烈を極めることが多いです。
ハラスメントを受けた場合には、その加害者はもとより、ケースに応じて会社に対しても損害賠償の請求ができます。
どのような行為がセクハラ、パワハラに該当するかは、具体的事情によって様々なので、弁護士に相談ください。
4,労働問題の3つの解決方法
ひとくちに労働問題といっても、その内容は様々です。
そのため、その解決方法も、事案の具体的な内容に応じて以下のような手続が考えられ、それぞれにメリット・デメリットがあります。
(1)交渉、協議
会社や雇用主と、交渉によって和解(示談)をする方法です。
弁護士にご依頼いただければ、弁護士が代理人として書面や面談によって交渉をすることになります。
#1:メリット
- 早期解決ができる
- 柔軟な解決が可能である
#2:デメリット
- 相手方が交渉に応じてこないと進められない
- 強制力がない
相手方が応じさえすれば、裁判所等の第三者を立てた手続を経なくて良い分、迅速な解決が望めます。
もっとも、あくまで当事者同士での話し合いなので、対立が激しい場合には解決が難しく、解決内容にも強制力がないという面があります。
退職勧奨の停止や、退職を前提とした条件面での調整、証拠上明らかな未払賃金の請求などに適しています。
(2)労働審判
労働審判とは、平成18年より導入された比較的新しい制度で、裁判官1名と労働審判員2名の合計3名が、両当事者から話を聞いて、調停による解決(和解)を目指す手続です。
基本的に書面による主張は一度のみなので、弁護士によって筋道の立った説得的な主張をなすべきです。
#1:メリット
- 申立から3ヶ月以内に解決できる可能性がかなり高い
- 証人尋問などの厳格な証拠調手続きがない
- 金銭による柔軟な解決が図れる
- 和解や審判には強制力がある
#2:デメリット
- 事実関係に争いがある場合や争点が多岐に亘る場合には、解決困難
- 金銭以外の解決にはそぐわない場合が多い
原則として、3回以内の期日で結論が出て、書面や証拠の提出も簡略化されており、訴訟よりも迅速かつ柔軟な解決が図れます。
他方で、簡易な手続がゆえに、双方で主張する事実関係が大きく食い違っている場合には、どちらが正しいか判断が困難な場合が多く、また「解雇は無効だから雇い続けてほしい」などの金銭以外の要望については実現されずに金銭による解決が行われる傾向にあります。
争点が比較的単純であり金銭補償を求める解雇事件や未払賃金等の請求事件に適しています。
(3)訴訟
裁判所に対して、双方が証拠を提出しながら主張を交わし、第三者である裁判官の判断を仰ぐ手続です。
証拠による主張の裏付けや、証人尋問手続などが求められるため、個人で対応するのは困難です。
#1:メリット
- 具体的な事実認定に基づく判断を得られる
- 争点が多岐に亘る場合にも、対応できる
- 判断には強制力がある
#2:デメリット
- 訴え提起から解決まで1年以上かかってしまう可能性が高い
- 証拠が乏しい場合、敗訴のリスクが高い
- 緻密な主張・立証を要する
訴訟は紛争解決の最終手段です。
ひとつひとつの争点に対して、双方の主張が証拠に基づいて適正なのかどうかを裁判所が判断します。
争点が複雑である場合や多岐に亘る場合にも各々十分に主張立証ができる点で優れていますが、その半面、時間は必要となります。
整理解雇の有効性が争われる事件や、医学的な問題が絡む労災事件、証拠量が膨大になる残業代請求事件、また具体的事実の有無に争いのあるハラスメント事件などに適しています。
5.労働問題の解決を弁護士に依頼すべきか
自身が労働問題に直面した際に、「弁護士に相談する」ということは抵抗があると感じるかもしれません。
相手は勤務先であり、自分で解決できるのではないかと思われる方もいます。
そこで、労働問題で生じがちな問題と弁護士に依頼することが有益な点を整理します。
(1)弁護士が代理人となり、法的な議論となるように努めます
労働問題は、基本的にお互い顔を見知った仲で生じます。
そのため、一度対立が生じてしまった場合には感情的にその対立が激しくなる傾向があります。
このような場合には、双方感情のぶつけ合いとなってしまい、解決に向かった建設的な議論ができなくなってしまうことが多くあります。
弁護士が代理人となることで、労働者側の言い分を法律的に構成し、法的な議論をすることができ、解決への道筋を示すことができます。
(2)弁護士が事案を整理し、適切な請求をいたします
労働問題は多種多様な実態を有しているため、何が問題となっており、どのような請求ができるのかという点が非常に分かりづらいという特徴があります。
例えば、不当に解雇されたという場合には、解雇の無効により勤務継続をすることができるのと同時に、それまでの期間の給与も請求することが可能です。
毎日深夜まで残業をした結果体を壊してしまったという場合には、残業代の他に、労災給付や損害賠償の請求が可能となるかもしれません。
このように、事案によって請求内容は様々なので、弁護士にご相談いただくことによってご自身の問題に即した、適切な請求を実現することができます。
(3)弁護士が、解決を見据え、最善の手段を提案できます
上述の通り、労働問題については、大きく分けて3種類の解決方法があります。
バリエーションが豊かであることは他方では選択肢が増えて混乱を招きます。
いずれの手段にも一長一短があり、皆様が抱えている問題解決に適切といえるかの判断が必要となります。
弁護士が、最良の解決のための、道筋を提案します。
(4)相手方の主張や問題点を分かりやすく説明します
労働問題の障害の一つとして、労使間の交渉力の格差があります。
会社側は規模によってはそのような問題対応をする専門部署があったり、顧問契約をしている弁護士がいたりしますので、個人で立ち向かうのは困難を伴うことがあります。
相手の一方的な主張に飲み込まれないように、こちらも弁護士をつけたうえで、適切な対応をしていくことが重要となります。
まとめ
労働問題は、労働者の生活に密接な関係を有しているため、早期の解決が求められます。
放置すればするほど悪化する場合も多く、また雇用主側は自身に不利な証拠は隠滅してしまう可能性も否定できません。
したがって、労働問題を適切に解決するには、できる限りの資料を集めつつ、早期に弁護士に相談することが重要といえます。
ご自身やご家族が職場で何らかのトラブルに巻き込まれているのでしたら、是非一度、当事務所の弁護士にご相談ください。
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