労働審判とは?手続の申立てへの対処法について

会社で雇っている従業員との間でトラブルが生じた場合、その従業員から労働審判を申立てられることがあります。

労働審判を申立てられると、裁判所から会社に突然、「労働審判手続申立書」というものが届きます。

会社として何をすべきか戸惑っているうちに、労働審判の第1回目の期日が迫ってきます。

会社側の言い分をきちんと主張するためにも、「労働審判手続申立書」が届いた場合は、専門家に相談することも含め、早期に対処することをお勧めします。

1.労働審判手続とは

労働審判とは、裁判所において、使用者と労働者が裁判官と労働審判員のもとで話合い(調停)を試みる場です。

調停は、原則として3回以内の期日で終結します。

調停による解決ができない場合、すなわち、合意には至らなかった場合、審判という裁判所による決定で解決が図られます。

この審判に不服がある場合は、審判書を受け取った日又は期日において労働審判の告知を受けた日の翌日から起算して2週間以内に、裁判所に異議申立書を提出することで異議の申立てをすることができます。

異議の申立てがあれば、労働審判は効力を失い、民事訴訟へ移行し、初めから審理されることとなります。

もっとも、訴訟となれば長期間の審理が要されることから、譲歩できる点があるのであれば、労働審判手続の中でしっかりと言い分を主張し、早期解決を目指すことが会社にとって利益となる場合もあります。

2.労働審判手続申立てへの対処

労働審判手続は、原則として、3回の期日のみで終わります。

この短い間に、会社側の言い分をしっかり用意し、また、譲歩できるところは譲歩して、話合いに応じなければなりません。

(1)「答弁書」の作成

労働審判手続申立書が届いたらすることは、第1回期日の確認です。

通常、第1回審判期日は、労働者の申立日から40日以内に指定されます。

また、第1回期日の約1週間前に、会社側の主張を記載した「答弁書」を提出しなければなりません。

提出期限に間に合わせるため、また、3回しかない期日を無駄に終わらせないためにも、労働審判手続申立書が届けば、すぐに開封し、申立内容と期日を確認の上、専門家へ相談することをお勧めします。

なぜなら、「答弁書」の作成には、専門的知識が必要だからです。

#1:「答弁書」と何か

労働審判手続申立書には、申立人が求める事項(「申立ての趣旨」)と、申立人の主張を裏付ける事実と証拠等(「申立ての理由」)が記載されています。

これに対して、会社側は、申立人の主張する事実についての認否を明確にし、また、反論と証拠を準備して、「答弁書」に記載しなければなりません。

認否の仕方にもルールがあり、また、何を証拠として提出するかは裁判官や労働審判員の心証形成に大きく関わります。

証拠には、トラブルに関係する文書や他の従業員の陳述書など、多岐に渡り検討できます。

これらの作業は一般の民事訴訟と類似するものであり、専門的知識を有する弁護士が作成することが重要となります。

また、申立人側にも代理人として弁護士が就いている場合には、法的知識や準備力で不利となることを避け、綿密な対応をするためにも、弁護士によるサポートが必要となります。

#2:準備は「答弁書」だけではない

答弁書の準備と併せて準備すべきことがあります。

それは、合意の余地の検討、合意するならどこまで譲歩できるのかです。

労働審判は話合いの場ですから、一定の譲歩の上、合意する余地があるなら、トラブルの迅速な解決、訴訟コストの削減等の観点から、同意を目指すことも重要な選択肢です。

もっとも、合意のスキームを検討する上で、法的な知識が会社側に乏しければ、そもそも何を基準として検討していけばよいか判断できません。

第1回期日までの短期間の間にこのスキームを検討し、わずか3回の期日の間に実行するには、弁護士のサポートが不可欠です。

#3:異議申立書の作成

また、合意に至らなければ審判となりますが、この審判に不服がある場合、2週間以内に書面で異議の申立てをしなければなりません。

この書面に不備があれば、審判の効力は維持されてしまいます。

#4:訴訟へ移行した場合

さらに訴訟へ移行した場合には、弁護士への依頼は不可欠となります。

訴訟では、初めから審理し直されることになりますので、改めて弁護士を依頼して相談から始めるより、審判の段階から弁護士へ依頼する方が、準備やコストなどの面ではるかに得策といえます。

まとめ

このように、労働トラブルには、迅速な対応が必要となるため、早い段階から弁護士がサポートに入ることが会社の利益となります。

さらにいえば、弁護士と顧問契約を締結していれば、労働トラブルの初期段階から相談を受けることができますし、労働審判を申立てられることなく解決を図ることも可能となります。

労働審判を申立てられても、それまでのトラブルの経緯を知っているため、第1回期日を余裕を持って迎えることができます。

労働審判手続を申立てられた場合、弁護士がサポートできることは多く、労働者との紛争を早期に解決するために、弁護士のサポートは不可欠です。

労働トラブルをお抱えの企業様、顧問契約をご検討中の企業様は、ぜひ一度ご相談ください。