自己破産が携帯の契約に与える影響は?利用できなくなるケースや手続後の影響なども解説

執筆者 泉野 暁哉 弁護士

所属 第二東京弁護士会

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「自己破産をすると携帯の契約にどんな影響が出るのか」
「自己破産をするときに携帯の契約で注意しなければならないことはあるのか」
「携帯を利用し続けるための対処法について知りたい」

自己破産を行うことを検討されている方の中には、携帯の契約に影響が出るのではないかと不安に感じている方もいると思います。

自己破産は、借金の返済が困難であることを裁判所に認めてもらい、裁判所から免責許可決定を受けることで、借金の返済義務を免除してもらう手続です。

免責の対象になるものは、税金の支払いなどの一部を除くすべての債務で、携帯会社に対して債務を負っている場合には、自己破産を行うことによって携帯の利用などに影響が生じるケースがあります。

本記事では、自己破産を行うことによって、携帯の契約にどのような影響が生じるのかについて解説します。

自己破産の手続の概要や流れ、影響などの詳細については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。

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1.自己破産によって携帯が使えなくなる主なケース

自己破産の手続を行ったとしても、原則として携帯の契約が解約されることはなく、引き続き携帯端末を利用することが可能です。

自己破産の手続においては、一定以上の価値のある債務者の所有財産は売却し(換価処分)、その代金を債権者への配当に当てることになっています。

各裁判所の運用によって異なる場合もありますが、換価処分の対象となるのは20万円以上の価値のあるものとされているケースが多いです。

ただし、生活必需品についてはその対象から外れることとされており、中古の携帯の買取代金が20万円を超えることもほとんどないことから、携帯が換価処分の対象となることはないといってよいでしょう。

携帯料金も、水道光熱費や家賃と同様に、支払を続けても破産手続へ影響を与えることはありません。

しかし、以下のようなケースでは携帯電話の契約が解約されてしまい、利用できなくなる可能性があるため、注意が必要です。

自己破産によって携帯が使えなくなる主なケース

  1. 携帯端末の分割支払の途中で自己破産を申し立てた
  2. 携帯の利用料金を滞納している
  3. キャリア決済の支払残高がある

順にご説明します。

なお、自己破産における自由財産の概要については、以下の記事でも解説しているので、あわせてご参照ください。

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(1)携帯端末の分割支払の途中で自己破産を申し立てた

携帯端末を分割で購入し、その残債がある状態で自己破産を行うと、携帯端末の代金を分割支払を継続することができず、現在使用している携帯端末を使用することができなくなる可能性があります。

自己破産手続ではすべての債務を対象にする必要があるため、分割支払の残債がある場合もこれを届け出る必要があります。

そのため、弁護士に自己破産の手続を依頼すると、受任通知を債権者である携帯電話会社にも送付することとなり、その送付を受けた携帯電話会社はその時点で契約を解約することが一般的です。

このような仕組みで、携帯端末を分割購入した際の残債がある場合は、携帯電話会社に契約を解除されてしまい、携帯端末の利用ができなくなってしまいます。

なお、家族が使っている携帯の契約名義が自己破産の申立人となっている場合、その家族の携帯端末も利用できなくなることに注意が必要です。

携帯端末の分割支払の途中で自己破産を申し立てる際の注意点などについては、以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。

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自己破産をすると分割払い中の携帯はどうなる?解約された場合の対処法

(2)携帯の利用料金を滞納している

月々の携帯の利用料金についてはそのまま支払い続けても問題ありません。

しかし、料金を支払えなくなり、滞納が発生している場合には、その債務は、やはり自己破産手続において対象の債務としなくてはなりません。

そのため、端末代金の残債がある場合と同じく、携帯電話会社が弁護士からの受任通知を受け取った時点で携帯電話の利用契約が解約されてしまいます。

なお、携帯の利用料金の支払方法をクレジットカード払いにしている場合、自己破産によってクレジットカードが使えなくなり、それを原因とした滞納が発生してしまうこともあります。

携帯の利用料金の滞納分を支払ってしまっても、生活のためにやむを得ないものとして問題にならないことが考えられますが、支払方法をクレジットカードに設定している方は、少なくとも口座引落やコンビニ払い等に変更しておくべきでしょう。

自己破産の手続中に携帯やスマホに関して注意すべきポイントについては、以下の記事で解説しています。

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自己破産をしたら今使っているスマホはどうなる?スマホが解約される二つのパターン

(3)キャリア決済の支払残高がある

キャリア決済とは、携帯電話の本体代金や使用料と併せて、商品やサービスの購入代金を支払えるサービスをいいます。

商品やサービスの購入にあたってキャリアが購入代金の支払を一時的に立て替えるため、クレジットカードと同じ仕組みの信用払いとなっています。

そのため、キャリア決済の支払を滞納したまま破産の申立てをする場合にも、携帯電話会社を債権者としなければならず、これもまた、携帯電話会社が受任通知を受け取った時点で携帯電話の利用契約を解約する可能性が高いです。

キャリア決済は、携帯の利用料金と合算して支払う仕組みなので、弁護士に相談する際に申告を忘れてしまう場合があるので注意しましょう。

申告を忘れてしまうと、次項で述べるように免責を受けられなくなるリスクがあるので、必ず相談の時点で弁護士に申告することが重要です。

2.携帯の契約に関して避けなければならないこと

上記のような場合、携帯電話の利用ができなくなる可能性がありますが、それを避けようとして以下のようなことをするのは避けた方がよいです。

携帯の契約に関して避けなければならないこと

  1. 携帯電話会社を債権者として申告しないこと
  2. 分割払いの残債や滞納利用料金を一括で支払うこと
  3. キャリア決済を利用すること

これらの行為は、自己破産手続を進めても債務の免除(免責許可決定)を受けられない事由(免責不許可事由)に該当してしまい、免責を受けられない可能性が出てきてしまいます。

以下、具体的に説明します。

免責不許可事由の具体的な内容については、以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。

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自己破産手続きで免責不許可となるケースとは?

(1)携帯電話会社を債権者として申告しないこと

携帯電話会社に対して端末の分割支払の残債や滞納利用料金などの債務を負っている場合には、債権者として裁判所に申告を行わなければなりません。

自己破産手続においては、すべての債権者を平等に扱わなければならない「債権者平等の原則」という原理があり、一部の債権者を裁判所に対して申告しないことは、債権者間の公平を損ねる行為として禁止されているのです。

意図的に債権者を申告しない行為は、免責不許可事由に該当する行為です。

免責を受けられなくなってしまいますので、このような行為は避けるべきです。

(2)分割払いの残債や滞納利用料金を一括で支払うこと

自己破産前に、分割払いの残債や滞納利用料金を一括で支払うことも避けるべきです。

破産申立てをする際に、携帯電話会社に対する債務を負っていると携帯が利用できなくなるため、それを回避する目的で申立て前に分割払いの残債や滞納利用料金の一括支払をしようとする人がいるかもしれません。

しかし、これは特定の債権者のみに優先して返済を行う偏頗(へんぱ)弁済に該当し、免責を受けられなくなる可能性があります。

ただし、これはあくまで自己破産をする本人が支払った場合の話です。

本人とは別に収入のある家族などの第三者に代わりに支払ってもらうことで問題にならないようにすることができますので、携帯電話の解約を避ける際にはこれを検討するのがよいでしょう。

(3)キャリア決済を利用すること

キャリア決済の利用を続けることは避けましょう。

携帯電話の使用料の支払だけであれば、生活に必要なものなので原則として偏頗弁済には当たりません。

しかし、キャリア決済は、すでに述べたとおり、クレジットカード払いと同様の信用払いをする仕組みであり、携帯電話会社に借り入れをしているのと同じことです。

この債務について支払ってしまうと、携帯電話会社のみに優先して返済を行うことになり、偏頗弁済に該当すると判断される可能性があります。

そのため、キャリア決済を破産手続中に利用することで、免責許可決定を受けられない可能性があるので注意が必要です。

そのため、遅くとも弁護士に手続を依頼した後にはキャリア決済を利用しないことが大切です。

3.自己破産後の携帯の契約に関する注意点

自己破産によって裁判所から免責許可決定を受けることができれば、その後に携帯電話の契約をすることが可能です。

ただし、自己破産後の携帯の契約に関することで、いくつか注意しなければならないことがあります。

主な注意点は以下のとおりです。

自己破産後に携帯の契約をする際の注意点

  1. 新規契約ができないケースがある
  2. 携帯端末の購入で分割払いが利用できない

順にご説明します。

自己破産を行った後の影響などについては、以下の記事もあわせてご覧ください。

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自己破産のその後はどうなる?生活への影響や制限を受けないことについても解説

(1)新規契約ができないケースがある

携帯電話料金を支払うことができず、強制解約となったことなどの情報は、その契約をしていた携帯電話会社に残す扱いをとっている会社があります。

これを社内ブラックといい、この状態になった会社と再度携帯の契約をすることは難しくなります。

自己破産手続のために、弁護士から通知を送ったことにより強制解約がされると、このようになる可能性があり、その携帯電話会社との新規契約ができなくなることがありますので、注意が必要です。

(2)携帯端末の購入で分割払いが利用できない

免責許可決定を受けた後、機種変更や新規で携帯端末を購入する場合、分割払いでの購入ができなくなります。

携帯端末の代金の分割払いはローンと同じ仕組みであり、ローンや借入れの申し込みの際と同じく、申込者の信用情報の確認がされます。

信用情報機関とは、加盟している金融機関から顧客の借入経過や返済状況などの信用情報の提供を受けてこれを管理し、金融機関からの照会に応じてその情報を提供している機関です。

自己破産をしたことは、その人が債務を返済できなくなった情報(事故情報)であり、これも信用情報機関に登録されることになっています。

事故情報が登録されているということは、その人の返済能力に問題があることを意味します。

クレジットカードやローン等の申込みの際、申込みを受けた会社が信用情報機関に照会をすることにより、申し込んだ人に事故情報があることがわかると、申込み審査に通らなくなってしまいます。

そのため、自己破産などの債務整理手続きを行った後に、携帯端末の購入にあたって分割払いの申込みをしてもこれを拒否されることになってしまいます。

自己破産後に携帯端末を新規購入する際には、ほとんどの場合一括で支払を行わなければならない制約があることは覚えておきましょう。

4.携帯を利用し続けるための対処法

自己破産を行うと、状況によっては携帯電話が使えなくなることがあるため、注意が必要となります。

携帯電話を利用し続けたい場合には、以下のような対応をとることが考えられます。

携帯を利用し続けるための対処法

  1. 家族名義への変更を行う
  2. 任意整理を行う

順に見ていきましょう。

(1)家族名義への変更を行う

自己破産をする前に、家族名義に変更しておくことで問題が解消されることがあります。

家族名義の契約であれば、自己破産の影響を受けません。

利用料金の滞納があると名義変更は困難だと思われますが、分割払いの残債が残っているというときには、名義変更をすることにより、携帯の利用を継続することが可能です。

家族への名義変更ができないケースでは、自己破産ではなく任意整理を行うことを検討するのがよいケースもあります。

任意整理については、次項で解説します。

なお、自己破産と任意整理の違いについては、以下の記事も参考になるので、あわせてご参照ください。

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任意整理と自己破産の違いとは?メリット・デメリットを徹底解説

(2)任意整理を行う

自己破産ではなく、任意整理で解決できる場合は、任意整理を行うことを検討しましょう。

任意整理は、債権者と直接交渉を行い、将来的に発生する利息のカットと長期分割返済について合意することで、返済負担を軽減する手続です。

自己破産とは異なり、手続の対象とする債務を債務者自ら選ぶことができます。

そのため、携帯の分割支払いの残債や利用料金の滞納がある場合には、携帯電話会社を手続の対象から除外することで、手続中も携帯端末を利用し続けることが可能です。

もっとも、自己破産では一部の支払義務を除くすべての債務について返済義務が免除になりますが、任意整理を行う債権者から携帯電話会社を除外すると、携帯電話会社に対する継続的な返済義務が残ります。

また、任意整理後の返済と並行して携帯料金を支払わなければならないため、携帯料金の返済が滞れば、携帯に関する債務を対象としなかった場合でも強制解約されてしまう点に注意が必要です。

したがって、任意整理を行うためには現在の収入状況や借入総額などを考慮した上で、返済を継続的に行うことができるかどうかを慎重に検討することが求められます。

なお、自分にとってどの手続を行うことが最適なのか判断することは難しいです。

その場合は、法律の専門家である弁護士に相談するのがおすすめです。

弁護士に相談すれば、返済能力や借入状況などに応じて、最適な解決方法の提案を受けることができます。

任意整理の手続の流れやメリット・デメリット、手続を行う注意点などについては、以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてご参照ください。

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任意整理とはどのような手続?メリット・デメリット、手続の流れを弁護士が解説

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任意整理を行うための条件とは?できないケースや対処法についても解説

また、自己破産をはじめとする債務整理の手続について弁護士に相談するメリットは、以下の記事もあわせてご覧ください。

2024.02.27

債務整理は弁護士に依頼すべきなのか?依頼先の弁護士を選ぶポイント

まとめ

自己破産をすることで、携帯電話の契約に影響が生じるケースがあります。

携帯端末の分割払いが残っていたり、携帯の利用料金を滞納していたりすると、強制解約されてしまう点に注意が必要です。

また、免責不許可事由に該当するような行為を行うと、免責許可が下りないことも考えられるので、自己破産の直前に一括で利用料金などを支払わないようにすることが重要といえます。

もっとも、自己破産は手続上の制約なども多く、専門知識や経験がなければ手続をスムーズに進めることが困難な場合も多いです。

そのため、自己破産をはじめとする債務整理の手続を行うことを検討されている方は、まずは専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士法人みずきでは、これまでに数多くの自己破産をはじめとする債務整理の手続に対応してきました。

経験豊富な弁護士が丁寧にお話を伺いますので、自己破産を行うことにお悩みの方はお気軽にご相談ください。

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執筆者 泉野 暁哉 弁護士

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