就業規則の作成から届出までの流れと変更時の注意点について解説

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執筆者 金子 周平 弁護士

所属 栃木県弁護士会

法律は堅苦しいという印象はあるかと思います。しかし、そんなイメージに阻まれて、皆さんの問題や不安が解決されないのは残念でなりません。
私は、そんな法律の世界と皆さんを、柔和に橋渡ししたいと思っています。問題解決の第一歩は、相談から始まります。
皆様が勇気を振り絞ってご相談をしていただければ、後は私どもが皆様の緊張や不安を解消できるよう対応し、法的側面からのサポートができればと思います。敷居はバリアフリーです。あなたの不安を解消するために全力でサポート致します。

就業規則とは、労働時間や賃金をはじめ、人事・服務規律など、労働者の労働条件や待遇の基準を定めるものです。

就業規則が労働者に周知されている場合、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとされます(労働契約法7条)。

本記事では、就業規則の作成から届出までの流れと変更時の注意点について解説します。

就業規則に記載する事項

就業規則に記載する事項には、必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)と、各事業場内でルールを定める場合には記載しなければならない事項(相対的必要記載事項)とがあります。

絶対的必要記載事項

(1)労働時間関係

始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項

(2)賃金関係

賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項

(3)退職関係

退職に関する事項(解雇の事由を含みます。)

相対的必要記載事項

(1)退職手当関係

適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項

(2)臨時の賃金・最低賃金額関係

臨時の賃金等(退職手当を除きます。)及び最低賃金額に関する事項

(3)費用負担関係

労働者に食費、作業用品その他の負担をさせることに関する事項

(4)安全衛生関係

安全及び衛生に関する事項

(5)職業訓練関係

職業訓練に関する事項

(6)災害補償・業務外の傷病扶助関係

災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項

(7)表彰・制裁関係

表彰及び制裁の種類及び程度に関する事項

(8)その他

事業場の労働者すべてに適用されるルールに関する事項

各自、記載する事項を確認の上、作成するようにしましょう。

就業規則の作成義務、届出義務

常時10人以上の労働者を使用する事業場においては、就業規則を作成する義務があります。

作成又は変更した就業規則は、労働基準監督署長に届出する必要があります。

届出の際、以下の該当する人物の意見を記入し、そのものの署名又は記名押印のある書面(意見書)を添付しなければなりません。

意見書記入に必要な人物

①当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合

②労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者

就業規則を作成・届出する条件について説明します。

常時10人以上とは

一時的に10人以上の場合はこれに該当しません。

逆に、一時的10人以下となっていても状態として常態が10人以上であれば該当します。

パート・アルバイト従業員も人数に含みます。

事業場とは

場所的観念で決められます。

但し、規模が著しく小さいなど、事業としての独立性のないものは上位の事業場と一体として考えられます。

一括届出

各事業場で就業規則が同一内容の場合は、本社所在地を管轄する労働基準監督署長を経由し一括で届け出ることができます。

但し、意見書添付は原則、事業場ごとです。

就業規則の周知

使用者は、作成又は変更した就業規則を、労働者に周知しなければなりません(労働基準法第106条第1項)。

就業規則を周知する方法

①常時各作業場の見やすい場所での掲示

②書面の交付

③磁気ディスク等に準ずるものに記録し、各作業場に労働者がその記録を常時確認できる機器を設置

以上方法のいずれかによります。

就業規則の法的効力

就業規則の効力発生には、就業規則が労働者に周知されていることが必要です。

周知がされていない就業規則は労働契約になりません。

就業規則に定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分について無効となります。

そして、無効となった部分は、就業規則の基準によることとなります。

その他、就業規則は法令又は当該事業場に適用される労働協約に反してはなりません。

抵触する部分は労働契約の内容にはなりません。

さらに、労働基準監督署は、これらに抵触する就業規則の変更を命ずることができます。

就業規則の不利益変更

使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできません(労働契約法9条本文)。

但し、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとされています(労働契約法9条但書、10条)。

以下のような判例を紹介します。

判例(合理性肯定)

58歳から60歳への定年延長と同時に、55歳以降の給与減額、役付手当減額、定昇不実施による、55歳以降の賃金が、54歳時の6割にまで下げる不利益変更について

①定年延長に伴う賃金水準見直しの必要性があること、②福利厚生面の諸処置が直接的代償とはいえないまでもその不利益を緩和するものであること、③行員の約9割を組織する労働組合との協約締結の上実施されていたこと、以上からこの判例は合理性が肯定されています。

(第四銀行事件:最判H9.2.28)

判例(合理性否定)

経営悪化に伴う63歳から57歳への定年の引下げ、退職支給率の引き下げに関する労働協約の締結及び就業規則の改定(非組合員に対しても遡及適用)に伴う不利益変更について

①経営悪化を回避し、労働条件の統一を図る高度の必要性があることは肯定されるが、②代償措置はあっても協約遡及適用の結果、協約効力発生時に定年に達していたものとして退職になるだけでなく、その退職により取得した退職金請求権までも減額され、不利益が大きいことから、合理性が否定されています。

(朝日海上火災保険事件:最判H8.3.26)

就業規則は、正しい内容で作成し周知を徹底しておけば、労使間トラブルを未然に防ぐことにつながる重要なものです。

これから終業規則を作成、変更される企業の方は、一度、法律の専門家である弁護士にご相談されることをお勧めします。

また、既に用いている就業規則のチェックもお勧めします。

執筆者 金子 周平 弁護士

所属 栃木県弁護士会

法律は堅苦しいという印象はあるかと思います。しかし、そんなイメージに阻まれて、皆さんの問題や不安が解決されないのは残念でなりません。
私は、そんな法律の世界と皆さんを、柔和に橋渡ししたいと思っています。問題解決の第一歩は、相談から始まります。
皆様が勇気を振り絞ってご相談をしていただければ、後は私どもが皆様の緊張や不安を解消できるよう対応し、法的側面からのサポートができればと思います。敷居はバリアフリーです。あなたの不安を解消するために全力でサポート致します。