B型肝炎給付金は遺族でも受給できる?受給要件と給付金額

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。

この記事の内容を動画で解説しております。

あわせてご視聴いただければと思います。

「B型肝炎給付金は遺族でも受け取れるのか」
「B型肝炎給付金は遺族でどのくらい請求できるのか」

B型肝炎が原因で家族を失った方の中には、遺族が本人の代理でB型肝炎給付金の請求ができるのか気になっている方もいるのではないでしょうか。

本記事では、遺族がB型肝炎給付金を請求できるのか、また誰が請求できるのかについてご紹介します。

1.B型肝炎給付金は遺族でも受給できるのか

B型肝炎給付金は遺族でも受給できるのか

結論から述べると、B型肝炎給付金は、遺族でも受給できます。

ただし、全ての遺族が受給できるわけではありません。

請求できる範囲が定められているので、自分が該当しているか確認しておきましょう。

2.B型肝炎給付金を請求できる範囲

B型肝炎給付金を請求できる範囲

B型肝炎給付金は、法定相続人(民法で定められた被相続人の財産を相続する権利のある人)であれば請求可能です。

法定相続人の中でも優先度があり、法定相続人の相続順位に従います。

法定相続人は以下のとおり定められています。

  • 配偶者
  • 直系尊属(直通する親族の内、父母・祖父母など上の世代)
  • 兄弟姉妹

まず、1の配偶者は常に相続人になります。

一方、2から4までの相続人は、数字の若い順に優先されます。

したがって、直系尊属は亡くなった方に子がいないとき、兄弟姉妹は亡くなった方に子も直系尊属もいないときに相続人となります。

そのため、たとえばB型肝炎の被害者で亡くなられた方に配偶者と子がいた場合は、両親は給付金を請求することができません。

優先度の高い順位の法定相続人がいる場合は、優先度が低い遺族は給付金を請求できないことを覚えておきましょう。

3.遺族が受給できるB型肝炎給付金額

遺族が受給できるB型肝炎給付金額

遺族が受給できるB型肝炎給付金の額については、以下の表のとおりです。

支給額
病態 除斥期間・消滅時効期間経過前 除斥期間・消滅時効期間経過後
死亡・肝がん・肝硬変
(重度)
3,600万円 900万円
肝硬変(軽度) 2,500万円 ・現在治療中:600万円
・上記以外:300万円
慢性B型肝炎 1,250万円 ・現在治療中:300万円
・上記以外:150万円
無症候性キャリア 600万円 50万円

給付金に関しては、症状が現れてから20年を経過しているかどうかで金額が変わります。

20年経過するだけで1/4になってしまうので、期限が迫っている方はなるべく早めに取り掛かりましょう。

4.B型肝炎給付金の申請期限

B型肝炎給付金の申請期限

B型肝炎給付金には請求期限があるので気を付けましょう。

請求期限は、2027年3月末までです。

上記期限は、2021年6月11日の法改正によって延長されたものです。

これによって期限に多少の余裕が生まれましたが、訴訟の準備等には時間がかかりますので、請求を先回しにしないのが無難です。

まだ給付金の申請手続の準備に取り掛かっていない方は、速やかに行動に移しましょう。

5.遺族がB型肝炎給付金を請求するときの流れ

遺族がB型肝炎給付金を請求するときの流れ

遺族がB型肝炎給付金を請求する流れについてご紹介します。

給付金の請求の流れは以下のとおりです。

  1. 弁護士に相談
  2. 証拠収集・契約
  3. 訴訟提起
  4. 和解の成立・給付金の受け取り

被害者本人が請求する流れとほとんど変わらないので、手続を始めるときの参考にしてみてください。

(1)弁護士に相談

B型肝炎給付金の請求については弁護士に相談するのがおすすめです。

B型肝炎給付金に関する制度は馴染みのない方にとっては煩雑な手続といえます。

弁護士に依頼することで請求のサポートを受けることができるため、スムーズに請求を行うことができるのがメリットです。

(2)証拠収集・契約

弁護士に相談した際に、B型肝炎給付金を受給できる可能性があると判断されたら、次は証拠収集を行います。

B型肝炎給付金の申請をするためには、給付金の対象者であることを証明しなければなりません。

被害者本人がどの区分に該当するかによって以下のように必要な書類等が異なります。

一次感染者
  • B型肝炎ウイルスに持続感染していることを証明する資料
  • 満7歳になるまでに集団予防接種等を受けていることを証明する資料
  • ⺟⼦感染でないことを証明する資料
  • その他集団予防接種等以外の感染原因がないことを証明する資料
二次感染者
  • 原告の⺟親が⼀次感染者として認定されるための資料
  • 原告本人がB型肝炎ウイルスに持続感染していることを証明する資料
  • ⺟⼦感染であることを証明する資料

証拠収集を行い、B型肝炎給付金の申請が可能と判断された場合は、給付金の申請手続に入りましょう。

なお、具体的な必要書類に関しては以下の記事にまとめているので、あわせてご確認ください。

B型肝炎給付金の申請に必要な書類とは?対象者ごとに解説

(3)訴訟提起

証拠資料を揃えて訴訟の準備が整ったら、B型肝炎訴訟を提起しましょう。

訴訟手続に関しては、弁護士がメインとなって進行するため、遺族の方は特に何もする必要はありません。

訴訟提起後は、裁判所を介して和解協議を行うことになります。

給付金の対象者であることを立証するポイントが明確であれば、問題なく申請が認められるでしょう。

(4)和解の成立・給付金の受け取り

提出書類に不備等がなく、裁判所が認めた場合は、国との間で和解する内容の調書が作成され、和解が成立します。

和解が成立したあとは、社会保険診療報酬支払基金に以下の書類を提出して給付金を受け取りましょう。

  • 申請書
  • 支払基金に提出する書類
  • 給付⾦等⽀給請求書
  • 受給者証交付請求書
  • 住⺠票等

まとめ

B型肝炎給付金は、遺族でも受給することが可能です。

ただし、法定相続人のみしか請求できず、優先順位がある点は要注意です。

また、申請期間が定められているので、なるべく早めに申請することをおすすめします。

弁護士に相談すれば、申請手続のサポートを受けられるため、給付金の対象者は弁護士への相談を検討してみましょう。

弁護士法人みずきでは、B型肝炎給付金に関する相談を無料で受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。