厚生労働省アスベスト給付金制度とは?対象者や支給金額も解説

厚生労働省アスベスト給付金制度とは?対象者や支給金額も解説

執筆者 金子 周平 弁護士

所属 栃木県弁護士会

法律は堅苦しいという印象はあるかと思います。しかし、そんなイメージに阻まれて、皆さんの問題や不安が解決されないのは残念でなりません。
私は、そんな法律の世界と皆さんを、柔和に橋渡ししたいと思っています。問題解決の第一歩は、相談から始まります。
皆様が勇気を振り絞ってご相談をしていただければ、後は私どもが皆様の緊張や不安を解消できるよう対応し、法的側面からのサポートができればと思います。敷居はバリアフリーです。あなたの不安を解消するために全力でサポート致します。

「アスベスト給付金制度とはどういうものなの?」
「給付金が受け取れる対象者は?」

厚生労働省がアスベスト給付金を支給したというニュースを見て、自分も受け取れるのか気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

アスベスト給付金は、アスベストにさらされる建設業務に従事した労働者が、一定の疾病にかかった場合に支給されます。

この記事では、アスベスト給付金の対象者や給付金の金額、請求方法についてご説明します。

1.厚生労働省が担う建設アスベスト給付金制度とは

1.厚生労働省が担う建設アスベスト給付金制度とは

建設アスベスト給付金制度は厚生労働省の政策の1つです。

議員立法により「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律(建設アスベスト給付金法)」が令和3年6月9日に成立、令和4年1月19日に完全施行されました。

建設アスベスト給付金制度の対象者や、給付金はいくらになるのかについて見ていきましょう。

(1)アスベスト給付金の対象者

建設アスベスト給付金制度の対象となるのは、以下3つの要件を満たす方になります。

  • 下記の表の期間ごとに、表に記載している石綿にさらされる建設業務に従事していた
期間 業務
昭和47年10月1日~昭和50年9月30日 石綿の吹付け作業に係る建設業務
昭和50年10月1日~平成16年9月30日 一定の屋内作業場で行われた作業に係る建設業務
  • 石綿関連疾病にかかった
  • 労働者や一人親方・中小企業主(家族従事者等を含む)である

石綿関連疾病とは、中皮腫・肺がん・著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚・石綿肺(じん肺管理区分が管理2~4)・良性石綿胸水を指します。

もし、対象期間内に石綿にさらされる建設業務に従事していたとしても、石綿関連疾病にかかっていなければ給付金の支給対象外となります。

なお、対象となる本人が亡くなっている場合は、遺族からの請求も可能です。

(2)アスベスト給付金の金額

建設アスベスト給付金制度の対象者には、以下の病態区分に応じた金額が支給されます。

病態区分 給付金
①石綿肺管理2でじん肺法所定の合併症のない方 550万円
②石綿肺管理2でじん肺法所定の合併症のある方 700万円
③石綿肺管理3でじん肺法所定の合併症のない方 800万円
④石綿肺管理3でじん肺法所定の合併症のある方 950万円
⑤中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、石綿肺管理4、良性石綿胸水である方 1150万円
⑥上記①、③により死亡した方 1200万円
⑦上記②、④、⑤により死亡した方 1300万円

給付金の金額は、認定審査会における審査の結果に基づき決定します。

なお、病態区分①~⑦で同一の項目に複数回該当した場合でも、給付金の支払は1回のみとなります。

また、「受け取った給付金に税金がかかるのでは」と不安になる方もいるかもしれませんが、建設アスベスト給付金には所得税などの税金はかからないので安心してください。

#1:減額される場合

建設アスベスト給付金は病態区分に応じた金額が支給されますが、減額される場合もあるので注意が必要です。

給付金が減額される3つのケースと、減額される割合は以下のとおりです。

減額される3つのケース 減額される割合
肺がんにかかった方で喫煙の習慣があった方 10%減額
一定の短期ばく露の方 10%減額
上記2つに該当する方 19%減額

なお、一定の短期ばく露となるのは、建設業務に従事した期間が以下に当てはまる方です。

病態区分 建設業務に従事した期間
肺がん、石綿肺 10年未満
著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚 3年未満
中皮腫、良性石綿胸水 1年未満

ほかにも、国から損害賠償を受けた方や、勤務先などからアスベスト被害に関する補償を受け取った方は、給付金が減額・調整される可能性があります。

#2:追加される場合

アスベスト給付金の支給を受けた後に症状が悪化し、給付金支給対象の病態区分が変わった方は、追加給付を受けられます。

なお、追加される金額については、新たに当てはまった病態区分の給付金額と、すでに受けた給付金額との差額となります。

たとえば、病態区分①に該当し550万円の給付金を受け取った方が、症状が悪化し病態区分②に変更となったとします。

この場合、病態区分②の給付金700万円から、すでに受け取った病態区分①の給付金550万円を控除した150万円を追加で受け取れる可能性があるわけです。

(3)アスベスト給付金の請求期限

アスベスト給付金には請求期限があるので、いつ申請しても受け取れるわけではありません。

請求期限はいつまでなのかというと、石綿関連疾病にかかった旨の医師の診断日、または石綿肺に係るじん肺管理区分の決定日から起算して20年となります。

また、対象者が石綿関連疾病により死亡した場合は、死亡日から起算して20年です。

請求期限を過ぎてしまうと、給付金の請求ができなくなるので注意しましょう。

2.アスベスト給付金の申請から支給までの流れ

2.アスベスト給付金の申請から支給までの流れ

アスベスト給付金の申請から給付金支給までの流れは以下のとおりです。

申請から給付金支給までの流れ

  1. 厚生労働省へ必要書類を郵送
  2. 厚生労働省による審査
  3. 認定審査会による審査
  4. 認定審査会が厚生労働省へ審査結果を通知
  5. 厚生労働省が認定結果を請求者および労働者健康安全機構へ通知
  6. 労働者健康安全機構より給付金を支給

アスベスト給付金の申請方法は郵送のみとなり、電話やインターネット上などでの申請はできません。

給付金の請求に必要な書類をそろえ、以下の宛先まで簡易書留やレターパックなど、配達状況や到着の確認ができる方法で郵送しましょう。

郵送場所

〒100-8916
東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎第5号館
厚生労働省労働基準局労災管理課 建設アスベスト給付金担当 あて

給付金の請求に必要な書類は、労災支給決定等情報提供サービスを利用しているかどうかで異なります。

労災支給決定等情報提供サービスを利用していない場合は、被災者の就業歴や石綿ばく露作業への従事を証明する資料、請求する区分の石綿関連疾病に罹患していることを証明する資料などが必要です。

また、労災支給決定等情報提供サービスを利用していても、書類の提出漏れや不備があると審査が長引く可能性があります。

そのため、建設アスベスト給付金の申請をする際には、弁護士に相談のうえ資料の準備など申請手続のサポートを受けることをおすすめします。

3.建設アスベスト給付金についてよくある質問

3.建設アスベスト給付金についてよくある質問

建設アスベスト給付金の対象や申請の流れは大体分かったものの、疑問が残っている方もいるでしょう。

ここからは、建設アスベスト給付金についてよくある質問を4つまとめたので参考にしてください。

(1)労災保険の給付を受けていても対象になるのか

建設アスベスト給付金の対象者に該当していれば、すでに労災保険給付(特別加入制度に基づく給付を含む)を受けていても給付金を受け取ることができます。

また、石綿による健康被害の救済に関する給付に関する法律(石綿救済法)に基づく給付を現に受けている、またはすでに受けた方も対象となります。

(2)給付金が支給されるまでの期間はどれくらいか

請求から給付金支給までにかかる期間は、請求者ごとに異なります。

ただし、認定が決定したあとは、認定の決定があった日の翌月末までに給付金が支給される予定です。

実際に、2022年2月25日に認定審査会の答申があった案件について、3月18日に支給したと厚生労働省が公表しています。

(3)請求期限に間に合いそうにない時はどうすればよいのか

請求期限が迫っていて、期限までに申請に必要な書類がすべてそろわない場合は、労働保険相談ダイヤルに相談しましょう。

期限までにそろえられない一部の書類については後日提出として受付するなど、柔軟に対応してもらえます。

労災保険相談ダイヤル

TEL:0570-006031
受付時間:月曜日~金曜日 8:30~17:15

(4)認定結果が出るまでに申請者が亡くなったらどうなるのか

申請者が給付金の請求を行い、支給の認定または不認定の通知が届くまでに亡くなった場合は、請求が無効となります。

このような場合、遺族の方が労働保険相談ダイヤルに連絡しましょう。

そのうえで、新たな請求者の名前で改めて請求を行う必要があります。

まとめ

厚生労働省の建設アスベスト給付金は、特定の期間にアスベストにさらされる建設業務に従事した方で、なおかつ中皮腫・肺がん・石綿肺などを患った方を対象に支給されます。

給付金の金額は550万円~1300万円となりますが、減額されたり追加支給されたりするケースもあります。

給付金の申請にはさまざまな資料を用意する必要があるので、ミスなくスムーズに手続を進めたいなら弁護士に任せることをおすすめします。

まずは、自分が給付金の対象になるか、申請期限が過ぎていないかという点を弁護士に相談しましょう。

執筆者 金子 周平 弁護士

所属 栃木県弁護士会

法律は堅苦しいという印象はあるかと思います。しかし、そんなイメージに阻まれて、皆さんの問題や不安が解決されないのは残念でなりません。
私は、そんな法律の世界と皆さんを、柔和に橋渡ししたいと思っています。問題解決の第一歩は、相談から始まります。
皆様が勇気を振り絞ってご相談をしていただければ、後は私どもが皆様の緊張や不安を解消できるよう対応し、法的側面からのサポートができればと思います。敷居はバリアフリーです。あなたの不安を解消するために全力でサポート致します。