浮気・不倫の慰謝料の請求方法を解説!請求のポイントは証拠の収集

執筆者 花吉 直幸 弁護士

所属 第二東京弁護士会

社会に支持される法律事務所であることを目指し、各弁護士一人ひとりが、そしてチームワークで良質な法的支援の提供に努めています。

「配偶者の浮気が発覚したら、浮気相手に対して慰謝料を請求したい」というお考えの方も多いかとおもいます。

不倫慰謝料の請求ができるかどうかは、配偶者と不倫相手との間に肉体関係があったことを証明できる証拠があるかどうかが重要なポイントになります。

そのため、証拠がない時点でいきなり相手に請求すると、証拠が破棄されたりして請求がうまくいかなくなってしまうことがあります。

ここでは、慰謝料を請求する場合に必要な証拠やその収集のポイントを説明します。

1.不倫で慰謝料が請求できる理由と証明が必要な対象とは?

そもそもなぜ不倫をされた場合、慰謝料の請求ができるのでしょうか?

それは、不倫が民法上の不法行為にあたるためです。

不倫の慰謝料請求とは、不法行為に基づく損害賠償請求なのです。

そのため、請求する側は、証拠を集め、相手方の不法行為を証明しなければ、その権利が認められません。

不法行為といえる不倫は肉体関係がある不倫を言います。

したがって、不倫慰謝料の請求においては、不倫相手と配偶者に肉体関係があったことを証明できるかが大切なポイントとなります。

2.慰謝料の請求で有効な証拠はどんなものなのか

慰謝料の請求においては証拠の収集ができるかが大切なポイントなります。

しかし、プライバシーを侵害したり、人道に反するような方法で収集した証拠は、裁判では使えないことがあります。

つまり、証拠が存在しないのと同じです。そのため、裁判でも使える証拠を収集する必要があります。

たとえば、どのようなものがあるか以下に紹介します。

(1)写真

不倫相手と配偶者に肉体関係があることを強く推認する写真であることが望ましいです。

「肉体関係があることを強く推認する」とは、ホテルや浮気相手の自宅に2人で入っている場面と出てきた場面を撮影したものなどです。

この時、撮影のポイントとして下記の2点があります。

  • 2人の顔が鮮明に撮影されていること
  • ホテルや浮気相手の自宅に入った時点と出てきた時点の両方がそろっていること

現実的には上記のような写真を撮影することは探偵や興信所に依頼しないかぎりは難しいかもしれません。

そこで、探偵や興信所を使うことが難しいという方は、配偶者と浮気相手が一緒に写っている写真を配偶者が持っているか確認することも考えられます。

配偶者と浮気相手がある程度親密であることが伺える写真であり、かつ配偶者が出張外泊した日時に撮影されたものであることわかるものであれば、外泊の事実とあいまって不貞の事実を相当程度推認させるものと言えます。

(2)録音

録音を証拠とする場合は、テープ等アナログな方法で録音されたものでることが望ましいです。

デジタルの録音機は、編集・捏造が容易に可能であるため、証拠能力が低いと判断される可能性があります。

以下の音声が収集できた場合、不倫の証拠となりえます。

#1:当事者の自白の録音

配偶者や浮気相手が不倫の事実について認めている音声は、不倫の有効な証拠になります。

ただし、自白が強要されたといわれないようするため、前後もしっかりと録音しておきましょう。

#2:配偶者と浮気相手との会話

配偶者と浮気相手との会話の中で、肉体関係があったこと分かるかやり取りがあれば、不倫の証拠となります。

ただし、会話の当事者に無断で録音した音声は、裁判では使えない可能性もあるため注意が必要です。

(3)メール

配偶者と浮気相手の間に肉体関係があったと推測できる内容のメールは有効な証拠となります。

必ずしも配偶者と浮気相手との間のやり取りである必要はなく、浮気当事者が友人・知人に充てたメールでも不貞行為の事実が分かる者であれば証拠となりえます。

ただし、メールを確認する過程で、ロックされている携帯電話のパスワードを同意なく解除してメールを閲覧したりする行為は、プライバシーの侵害と認定されたり、不正アクセス行為の禁止等に関する法律違反に該当する可能性もあるので注意が必要です

(4)領収書やクレジットカードの利用明細

ラブホテルの領収書やクレジットカードの利用明細等、肉体関係があったことが分かるものであれば不貞行為の証拠となりえます。

(5)ラブホテルが発行したサービス券やライター

上記と同様に、ラブホテルが発行しているサービス券やライターは肉体関係があったことを推認できるため、不貞行為の証拠となりえます。

(6)SNS

メールと同様に肉体関係があったと推測できる内容が投稿されている場合、不貞行為の証拠となりえます。

ただし、これらの記録は編集も簡単に行えるので、証拠としての能力は「低い」と判断されるケースもあります。

(7)手帳・スケジュール帳・日記・メモ

紙媒体のものか、スマートフォンのメモであるかを問わず、配偶者と不倫相手が会った日時や、具体的な行先の記載が確認できれば、不貞行為を強く推認する証拠となりえます。

日記をつけていたことが判明したものの、それを証拠として提出することに難色を示した場合であっても、他の証拠とあいまって不貞行為の事実を推認させる事情と評価されることはあります。

(8)GPS

GPS機能付きの携帯履歴でラブホテルに入った事実等が確認できれば、不貞行為の証拠となります。

(9)詫び状・誓約書

不貞行為の当事者がその事実を認め、それを文書にして交付した場合には、不貞行為の証拠となります。

ただし、配偶者によって一度作成された文書を破棄されてしまう可能性もあるため、作成後は念のために写真で撮影するなどして保存しておきましょう。

3.慰謝料の請求方法

ここまで、不倫慰謝料の請求において、証拠の収集方法について説明しました。

証拠が集まったら、請求を行います。請求の手順は以下の通りです。

(1)請求金額を決める

まずは、相手方への請求金額を決めます。

ご自身の受けた精神的苦痛に見合った金額を請求しようとすると、高額になってしまいますので注意が必要です。

交渉を有利に進め、早期に解決させるためには、相場を意識した金額を請求しましょう。

#1:慰謝料の相場

不倫慰謝料は、過去の裁判例をもとに、ある程度の相場があります。

その相場は不倫によって夫婦が離婚した場合とそうでない場合で金額が異なります。

  1. 不倫によって夫婦が離婚した場合:100~200万円
  2. 不倫後も夫婦が離婚しなかった場合:50~100万円

#2:慰謝料が相場より変動する場合

上記の相場に加え、下記の要素が考慮され、不倫慰謝料は、相場よりも増額したり、減額されたりします。

① 夫婦の婚姻期間
夫婦の婚姻期間が長いと、慰謝料は相場よりも増額し、短いと減額する要素となります。

過去の裁判例において3年以下の婚姻期間が短いと評価されたケースがあります。一方で15年以上の婚姻期間が長いと判断されています。

② 不貞行為を行っていた期間・回数
不貞行為を行っていた期間が長い場合場合や、回数が多いと慰謝料は増額します。

③ 夫婦の間に未成熟の子がいる
夫婦の間に未成熟の子がいる場合は、慰謝料は増額する傾向にあります。

④ 浮気相手が浮気していないと嘘をついている場合
浮気相手が「自分は浮気をしていない」と嘘をついてきた場合には増額の可能性があります。その他浮気相手に誠意や反省がみられないような言動があった場合も増額の理由となります。

(2)内容証明付郵便等で請求額を通知する

請求が決まったら、相手方に慰謝料請求の通知を送ります。

この時、内容証明付郵便等で通知するとよいでしょう。

内容証明付郵便等で通知することで、裁判になったときに相手方に請求を行った証拠となります。

(3)交渉

通知を行ったら、相手方と交渉を行います。

1回の通知で合意ができるケースは少ないです。

こちら側の請求に対し、相手方から改めて金額の提示があります。

この時、やり取りは書面やメールなどで行いましょう。

不倫慰謝料請求の場面では、当事者が対面するとお互いに感情的になってしまい、交渉が前に進まないケースがあります。

そうした事態を避けるためにも、書面でのやりとりをお勧めします。

(4)示談書の取り交わし

交渉で話がまとまれば、示談となります。合意内容を書面化したものを示談書と言います。

合意ができた場合は、その後の蒸し返しを防ぐためにも、必ず示談書を交わしましょう。

示談書作成のポイントについては、下記の記事で詳しく解説していますので、よろしければ参考にしてください。

不倫慰謝料の示談書作成のポイントを弁護士が解説

(5)交渉がまとまらない場合は、裁判を検討

交渉で合意をすることが難しい場合は、裁判を行うことを検討します。

裁判は手続きが煩雑で、専門的な知識が必要になるため、慰謝料請求を裁判で行う場合は、弁護士に依頼することをお勧めします。

下記の記事では、慰謝料請求を裁判で行う場合のメリットやデメリットを解説していますので、ご参考下さい。

浮気・不倫の慰謝料請求、実は裁判にしない方がいい!?弁護士が解説

まとめ

以上のように、浮気・不倫の慰謝料請求の流れについてご説明しました。

不倫慰謝料請求を失敗しないためには、有力な証拠をどのように集めるか、ポイントになります。

具体的にどのような証拠を集めるか、そのような証拠が有力な証拠となるかは、事案によって微妙に異なってきます。

弁護士は、証拠の集め方や、コツを知っていますので、不倫慰謝料の請求をお考えの方は、一度ご相談されることをお勧めします。

執筆者 花吉 直幸 弁護士

所属 第二東京弁護士会

社会に支持される法律事務所であることを目指し、各弁護士一人ひとりが、そしてチームワークで良質な法的支援の提供に努めています。