離婚にまつわる慰謝料について ~不貞行為編その②~

1.堂々と行われる不貞行為はない

不貞行為とは、「配偶者以外の者との肉体関係」を指す言葉です。

配偶者とであろうとなかろうと、肉体関係をもつことは、とても高度にプライベートな事情です。

それが、「配偶者以外の者と」という、いわゆる「いけないこと」となれば、可能な限り明るみに出ないように、こっそりと行われることになるでしょう。

しかし、離婚の原因とするにも、慰謝料の請求をするにも、不貞行為があったことを立証する必要があります。

配偶者およびその相手方が不貞行為があったことを認めているのであればことは簡単ですが、白を切られることも少なくありません。

では、そのような時には、どのようにして不貞行為があったことを立証していくのでしょうか。

2.不貞行為の立証をするために有用な証拠とは

上記のとおり、不貞行為は通常隠れて秘密裏に行われるので、不貞行為があったこと、そのものずばりを示す直接的な証拠は、通常ありません。

そのため、不貞行為の存在を、さまざまな証拠から推認していく必要があります。

以下では、その代表的なものを紹介します。

(1)当事者間の手紙や電子メール

不貞行為は隠れて行われますが、手紙や電子メール、その他メッセージアプリでのやりとりも密行性が高いものです。

そのため、これらのやり取りの中で、直接的に不貞行為の存在が前提となっている会話がなされていることは往々にしてあります。

芸能人の不倫についても、メッセージアプリのやりとりが写真週刊誌に掲載されることもあり、そこでは当事者間の赤裸々な会話がおこなわれていたりするので、イメージがしやすいかと思います。

単に、親密なやり取りを頻繁に行っているのみならず、不貞行為の内容や感想など、実際にそれらの行為を行っているといえる内容が記載されていると、証拠としての価値は相当高いことになります。

(2)写真、録音・録画テープ

仮に不貞行為中の写真等があるのであれば、それは不貞行為を立証する証拠になることは疑いようもないですが、通常はそのようなものはありません。

しかし、場合によっては上記の電子メールと関連して、不貞相手の裸体等の写真をスマートフォンやデジタルカメラに保存していることがあります。

このような写真を所持しているのは、不貞行為があったことを強く推認させるといえます。

また、たとえば自宅やホテルへ2人で入る写真及び出てくる写真などは、その関係性や状況を勘案すると不貞行為の存在を強く推認させます。

ほかには、一緒に旅行に行っている写真、同室に宿泊したことがわかる写真なども、不貞行為の存在を推認させるものといえます。

当事者間の会話内容を録音したテープや親密に接している様子を写した録画テープなども、同様に不貞行為の存在を推認させます。

(3)興信所等の調査報告書

上記のとおり、写真や動画等は不貞行為立証のために重要な価値を持ちますが、現実にこれを撮影しようと思うと、かなりの困難が生じます。

そのため、興信所や探偵社へ依頼をし、これらの写真などとともに調査報告書を作成してもらうという方法があります。

調査報告書は、通常「いつ」「誰が」「誰と」「どこで」「どのくらいの時間」「なにをしていたか」という要素が写真と文章によってまとめられています。

場合によっては、決定的な証拠となることもあります。

もっとも、調査依頼には数十万円単位の費用がかかり得ること、費用をかけても成果がでない可能性があるというデメリットもあります。

そのため、確証が薄い状況で調査依頼をするのは費用倒れの可能性があります。

(4)クレジットカードの利用明細書やレシート

いわゆる浮気が始まると、お金の使い道が変わることがあります。

配偶者以外の人間とどこかへ出かける、プレゼントを買う、または浮気相手の好みに沿うような私物を購入するなど、これまでにはなかった支出が増えるためです。

そのため、クレジットカードの利用明細書やレシート類は、不貞行為を推認する取っ掛かりとなることがありません。

たとえば、旅館やホテルなどの宿泊施設や、新幹線や飛行機の2人分のチケットの領収証等がある場合には、誰かと旅行や宿泊をしたということはほぼ疑いようがありません。

あとは、②でみたような、旅行中の写真などが発見されれば、あいまって不貞行為の存在を推認することが可能となります。

3.証拠の収集方法には要注意

上記のとおり、不貞行為があったというために、さまざまな角度からの立証を考えることとなりますが、ここで気をつけなければならないのは証拠の収集方法です。

電子メールの内容や、写真フォルダの内容は、不貞行為の有無を立証する上で重要な証拠となることがあります。

しかし、これらは同時に、プライバシーの対象でもあります。

裁判においては、ある事実を立証するための証拠が、重大な違法行為によって収集された場合には、その証拠は排除されることになります。

不貞行為に基づく慰謝料請求事件においても、相手方配偶者の携帯電話の内容を勝手にコピーした場合に、違法に収集された証拠として排除するという判断をしている裁判例もあります。

どこからが違法な証拠として排除されるか明確な基準はありませんので、具体的な方法や違法の程度、さらには不貞行為を行っていると疑うに足る状況だったか等の事情を総合的に考慮して判断されることになります。

そのため、せっかく収集した証拠が排除されてしまう可能性も踏まえ、どのように動くのが最も効果的かという点の検討が必要となります。

まとめ

今回は、不貞行為の立証について、有用な証拠をみてきました。

しかし、これらの証拠があっても、相手方が反論や弁解をしてくることがあります。

たとえば、二人であっていたのは仕事の打ち合わせをしていただけである、ホテルへ入ったのは体調が悪くなったから休息をとるためである、旅行先の写真は偶然出会ったので撮っただけである、などなど。

一見荒唐無稽であっても、請求する側が不貞行為を立証する必要がありますから、これらの反論に対しても再反論を行う必要があります。

そのため、「これは不貞行為だ!」という証拠を発見したとしても、きちんと戦略と見通しを立てて交渉や裁判を進めていくことが大切です。

これはと思う証拠や痕跡を見つけてしまったら、一度弁護士にご相談ください。

次回は、不貞行為が認められた場合に、どのくらいの慰謝料が認められるものなのかを説明いたします。