医師・看護師等の待遇や労働条件を定める際に気をつけるべきこと

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執筆者 金子 周平 弁護士

所属 栃木県弁護士会

法律は堅苦しいという印象はあるかと思います。しかし、そんなイメージに阻まれて、皆さんの問題や不安が解決されないのは残念でなりません。
私は、そんな法律の世界と皆さんを、柔和に橋渡ししたいと思っています。問題解決の第一歩は、相談から始まります。
皆様が勇気を振り絞ってご相談をしていただければ、後は私どもが皆様の緊張や不安を解消できるよう対応し、法的側面からのサポートができればと思います。敷居はバリアフリーです。あなたの不安を解消するために全力でサポート致します。

医療機関では、医師、看護師、薬剤師等の多様な職種の人々が勤務しています。

また、それぞれの職種について、雇用形態もさまざまです。

医療機関でのニーズに合わせた雇用形態を採用することが、円滑な労務管理の近道です。

本記事では、各雇用形態の種類、労働条件と労働条件において明示しておくべき事項、そして就業規則についてご紹介します。

「これから人を雇おう」「これから人を増やそう」とお考えの医療機関の方は是非ご一読ください。

1.医師・看護師等の雇用形態の種類

雇用形態はさまざまな区分があります。

法律上の定義ではありませんが、医療機関で利用され得る雇用形態とその特徴を区分すると以下のようになります。

(1)正職員

フルタイム勤務で、給与は月給制です。

また、最も安定した雇用を確保できる形態と言えます。

通常、期間の定めのない契約とするため、業務量の変動が大きい業務よりも中核業務を遂行する方に適した雇用形態と言えるでしょう。

(2)パートタイマー

時間を区切って勤務・雇用する形態です。

雇用の調整弁として活用しやすく、給与等のコスト面においても正職員よりも抑えられるケースが多いです。

パートタイマーは、一般に正職員よりも給与や賞与等の労働条件を使用者側に有利に設定することができます。

しかし、だからといって、パートタイマーに比重を置いて採用し勤務させることは、問題があります。

パートタイム労働法においては、「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」を「パートタイム労働者」といいます。

そして、パートタイム労働者が正職員と同等の職務内容をしている場合には、正職員との給与や教育、福利厚生などにおける差別的取扱いが禁止されることになります。

具体的には、以下の2点を検討しましょう。

  1. 職務内容が同じか
  2. 人材活用の仕組みや運用が同じか

これらが双方とも正職員と同じであった場合には、仮に雇用形態としてパートタイムを選択していたとしても、正職員と同等の取扱いをする必要が生じます。

そのため、パートタイマーに任せるべき業務か否かという点を吟味して、採用をする必要があります。

(3)アルバイト

本業が他にある者が、副業として行う場合に多い勤務形態です。

他の医療機関で常勤として勤務している医師や看護師などが、当直等で勤務することがあります。

この形態の医師を活用することで、常勤医師の勤務の穴を埋めることができます。

(4)契約職員

一定期間中フルタイムで勤務する契約とすることが多いです。

新病棟立ち上げの際や、正職員の入職までの期間をフォローする際に活用を検討することが多いです。

(5)派遣労働者

派遣会社からの派遣を受けて勤務する形態です。

比較的採用のための労力は抑えられる一方、コストは高くなる傾向にあります。

(6)嘱託職員

定年後の再雇用職員などの雇用形態がこれに該当します。

一定のスキルや能力を持ち、人間性も分かった上で、定年前よりも賃金を抑えられることが多く、活用しやすいという特徴があります。

2.医師・看護師等を採用する際に定めておくべき労働条件

新たに雇用する労働者と労働契約を結ぶ際には、以下の労働条件を明示する必要があります。

労働条件には「絶対的明示事項」と「相対的明示事項」とがあります。

絶対的明示事項は、必ず明示しなければならない事項であり、相対的明示事項は、定めるのであれば明示をしなければならない事項を意味します。

(1)絶対的明示事項

労働条件における絶対的明示事項は、次の7点です。

  1. 労働契約の期間
  2. 有期労働契約を更新する場合の基準
  3. 終業場所、従事すべき業務
  4. 始業および終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、就業時転換に関する事項
  5. 賃金の決定、計算・支払いの方法、賃金の締切及び支払いの時期
  6. 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
  7. 昇給に関する事項

(2)相対的明示事項

労働条件における相対的明示事項には次のようなものがあります。

  1. 退職手当の定めが適用される労働者の範囲
  2. 臨時に支払われる賃金、賞与及び最低賃金額に関する事項
  3. 労働者に負担させる食費、作業用品などに関する事項
  4. 安全及び衛生
  5. 職業訓練
  6. 災害補償・業務外の傷病扶助
  7. 表彰・制裁
  8. 休職

これらのほかにも、重要な内容については、明示した上で、書面を作成しておくとよいでしょう。

医療機関の場合には、夜勤の有無などは後々トラブルになる可能性もありますので、なるべく詳細に書面で明示しておくことが推奨されます。

3.医療機関における就業規則

医療機関では、さまざまな職種、さまざまな雇用形態があり得ます。

そのため、医療機関には、誰と、どのような内容の契約をしているかという点を適切に把握、管理をしておくことが求められます。

通常、労働条件の決定は、個別の労働契約においてなされますが、個々で契約内容が異なると管理が煩雑となり、また不満が生じることもあり得ます。

そこで、就業規則を策定することが肝要です。

特に、医療機関では、日勤、当直、夜勤、オンコール対応など、医師特有の就業時間があるため、通常の就業規則とは別に、医師就業規則を策定することが効果的な場合もあります。

就業規則の記載事項は以下のとおりです。

(1)就業規則における絶対的必要記載事項

必要的記載事項には、「労働時間」「賃金」「退職」があります。

労働時間

  1. 始業及び就業の時刻
  2. 休憩時間
  3. 休日
  4. 休暇
  5. 交代制の場合には就業時転換に関する事項

賃金

  1. 賃金の決定、計算及び支払の方法
  2. 賃金の締切り及び支払いの時期
  3. 昇給に関する事項

退職

  1. 退職に関する事項(事由・手続)
  2. 解雇(事由)

(2)就業規則における相対的必要記載事項

  1. 退職手当に関する事項
  2. 臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項
  3. 食費、作業用品などの負担に関する事項
  4. 安全衛生に感ずる事項
  5. 職業訓練に関する事項
  6. 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
  7. 表彰、制裁に関する事項
  8. その他全労働者に適用される事項

4.就業規則作成の上で必要な手続

10人以上の従業員を雇う会社は、就業規則の届出が労働基準法で義務付けられています。

就業規則を作成した場合には次のような手続が必要となります。

就業規則を作成する上で必要な手続

  1. 意見聴取
  2. 届出
  3. 周知

まとめ

いかがでしたでしょうか。

本記事では、各雇用形態の種類、労働条件と労働条件において明示しておくべき事項、そして就業規則についてご紹介しました。

各種雇用契約書、就業規則などの見直しや変更が必要だと思われた方は、一度当事務所へご相談ください。

執筆者 金子 周平 弁護士

所属 栃木県弁護士会

法律は堅苦しいという印象はあるかと思います。しかし、そんなイメージに阻まれて、皆さんの問題や不安が解決されないのは残念でなりません。
私は、そんな法律の世界と皆さんを、柔和に橋渡ししたいと思っています。問題解決の第一歩は、相談から始まります。
皆様が勇気を振り絞ってご相談をしていただければ、後は私どもが皆様の緊張や不安を解消できるよう対応し、法的側面からのサポートができればと思います。敷居はバリアフリーです。あなたの不安を解消するために全力でサポート致します。