差押えの対象になる財産とは?差押えの対象外の財産や差押えを防ぐ方法

執筆者 花吉 直幸 弁護士

所属 第二東京弁護士会

社会に支持される法律事務所であることを目指し、各弁護士一人ひとりが、そしてチームワークで良質な法的支援の提供に努めています。

「差押えの対象になる財産にはどんなものがあるの?」
「財産の中でも差し押さえられないものって何なの?」

財産を差し押さえられそうになっている方の中には、差押えの対象になる財産が何なのか気になっている方もいるのではないでしょうか。

本記事では、差押えの対象となる財産や対象にならない財産、差押えを受ける原因、差押えを防ぐ方法についてご紹介します。

1.差し押さえられる可能性がある財産

差し押さえられる可能性がある財産

財産には差押えの対象となるものとならないものがあります。

ここでは、差押えの対象財産と対象外の財産についてご説明するので、自身の状況に当てはめて、何が差し押さえられる可能性があるのか想定しておきましょう。

(1)差押えの対象財産

差押えの対象となる財産は様々です。

主な差押えの対象となる財産は以下の通りです。

差押えの対象となる財産

  • 預金債権
  • 給与債権
  • 退職金債権
  • 不動産
  • 現金
  • 貴金属
  • 自動車
  • 生命保険

動産・不動産、債権など色々な財産が差押えの対象となりますが、この中でも特に差し押さえられやすいのは、預金債権、給与債権です。

上記債権は、価値も分かりやすく、とくに給与債権は支払期日に確実に発生する債権であるため、差し押さえられることが多い債権です。

ちなみに、預金口座が差し押さえられると、借金の金額を上限に預金が差し押さえられ、給料が差し押さえられると、借金の金額に満つるまで毎月手取りの4分の1が差し押さえられることになります。

給与債権については手取りの4分の3は差押えが禁止されていますが、手取りの金額が44万円以上の方の場合は、33万円が差押え禁止となり、33万円を超える部分は差押えが可能となる点に注意してください(なお、養育費の滞納が差押えの原因である場合など、差押え禁止の範囲には一部例外があります)

預貯金や給料が差し押さえられると、生活に影響を及ぼす可能性が高いことを頭に入れておきましょう。

(2)差押えの対象外の財産(差押禁止財産)

債務者の生活を保障するために、上記で説明した給料の内の一定金額の他、法律上で差押えの禁止が定められている財産があります。

差押えの対象にならない財産は以下の通りです。

差押えの対象にならない財産

  • 66万円までの現金
  • 退職金の手取り額の4分の3(一部例外あり)
  • 債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具
  • 債務者等の1か月間の生活に必要な食料及び燃料
  • 債務者の職業に応じて、その業務に欠くことができない器具等
  • 実印その他の印で職業又は生活に欠くことができないもの
  • 仏像、位牌その他礼拝又は祭祀に欠くことができない物

66万円までの現金は手元に残るので、差押えを受けたからといって、全てのお金を失うわけではありません。

また、生活に必要な家具や衣類、道具だけでなく、仕事に必要な器具、信仰に必要な物なども差押えから守られます。

財産が差し押さえられても、最低限の生活は保障されているので安心してください。

なお、家族名義の財産も差押えの対象になりません。

そのため、家族名義の預貯金や給料は基本的に差し押さえられることはない点を押さえておきましょう。

2.差押えを受ける三つの原因

差押えを受ける三つの原因

そもそもなぜ差押えを受けることになるのか、その原因についてご説明します。

財産が差し押さえられる主な原因は以下の三つです。

  1. 借金を滞納している
  2. 税金を滞納している
  3. 養育費の支払が滞っている

財産を差し押さえられるかもしれないと不安に思っている方は、これらの状況に該当するか照らし合わせてみましょう。

(1)借金を滞納している

借金の返済が滞っている方は、財産が差し押さえられる可能性があります。

たとえば、金融業者からの借入やクレジットカードの請求、キャッシングなどです。

借金を滞納している場合、債権者から督促状が届きます。

この督促状を無視していると、債権者は裁判所に訴訟を提起したり支払督促の申立てをすることになり、最終的に債権の回収を目的に、財産の差押えが決行されることになるのです。

ただし、少し遅れた程度では訴訟や支払督促まで発展しないので、債権者から返済を催促されたら、素直に応じましょう。

(2)税金を滞納している

税金の滞納によって差押えが行われるケースがあります。

借金の返済の場合は裁判所が関与してきますが、税金の滞納の場合は裁判所の手続は必要ありません。

そのため、借金返済の滞納に比べると、差押え決行までの期間が短いので、税金の滞納をしている方は、早期に解消することをおすすめします。

(3)養育費の支払が滞っている

養育費の支払が滞っているケースも財産の差押えの原因になります。

離婚時に養育費の支払を取り決めている場合、未払い状態が続くと差押えが決行される可能性が高いです。

給料が差し押さえられて、そこから養育費分が引かれることになるかもしれません。

なお、養育費の支払を滞納して差押えを受けた場合は、例外的に給与や退職金の手取り額の2分の1まで差し押さえられる可能性があります。

養育費を滞納している方は、相手に事情を説明して支払の猶予をもらうことをおすすめします。

3.財産の差押えを防ぐ方法

財産の差押えを防ぐ方法

財産の差押えを防ぐ方法についてご説明します。

債務整理をするか、債権者と直接交渉することで、財産の差押えを防ぐことが可能な場合があります。

財産が差し押さえられそうな方は、差押えが決行される前に行動に移しましょう。

(1)債務整理を検討する

債務整理をすれば、差押えを防ぐことができる可能性があります。

利息の免除や支払期間の延長により、返済ができるようになれば、債権者から財産を差し押さえられることを回避できます。

また、差押えの手続が進められている段階でも、弁護士が債権者に対して受任通知を発送することで、手続が中断することもあります。

借金の返済が困難と判断したら、債務整理を検討してみましょう。

(2)債権者と交渉して返済期間を延ばす

債権者と直接交渉して、返済期間を延ばしてもらうことも有効です。

返済期間が延びれば毎月の返済の負担が軽減され、滞納することなく返済が可能になります。

安定して返済が行われれば、債権者が財産の差押えをすることはなくなるでしょう。

債権者から督促状が届いたら無視をせずに、返済の意思を示して返済計画の見直しを提案してみてください。

なお、債権者と交渉する自信のない方は、弁護士に相談して、上記の債務整理を検討することをおすすめします。

弁護士が適切な債務整理の方法を選択し、問題を解消できるでしょう。

まとめ

債権者から差し押さえられる可能性が高い財産は、預金債権、給与債権です。

一方で、債務者の生活を保障するために、法律上で差押えが禁止されている財産もあります。

借金や税金などを滞納している方は、財産を差し押さえられる可能性があるので、債務整理をするか債権者と交渉して返済期間を延ばしてもらいましょう。

執筆者 花吉 直幸 弁護士

所属 第二東京弁護士会

社会に支持される法律事務所であることを目指し、各弁護士一人ひとりが、そしてチームワークで良質な法的支援の提供に努めています。