医療事故が起きた場合の責任

交通事故で骨折をしたら慰謝料がもらえる?相場や算定基準を解説

執筆者 金子 周平 弁護士

所属 栃木県弁護士会

法律は堅苦しいという印象はあるかと思います。しかし、そんなイメージに阻まれて、皆さんの問題や不安が解決されないのは残念でなりません。
私は、そんな法律の世界と皆さんを、柔和に橋渡ししたいと思っています。問題解決の第一歩は、相談から始まります。
皆様が勇気を振り絞ってご相談をしていただければ、後は私どもが皆様の緊張や不安を解消できるよう対応し、法的側面からのサポートができればと思います。敷居はバリアフリーです。あなたの不安を解消するために全力でサポート致します。

医療事故が起きてしまった場合には、法的な責任が追及されることになります。

この際、どのような責任を果たす必要があるでしょうか。

1.民事上の責任

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民事上の責任は、賠償責任です。

つまり、医療事故によって、患者に生じた損害を賠償することとなります。

もっとも、問題となっている医療事故について、医療機関側に「過失」(落ち度)が存在し、その「過失」によって損害が発生したといえる「因果関係」が認められることが大前提となります。

医療機関側の過失については、具体的状況において、どのような「注意義務」が課せられ、それに違反しているかという観点で判断されます。

したがって、不可避的な合併症などの場合には、患者に障害が生じたとしても医療機関に「過失」が認められないということもあります。

また、「過失」が認められたとしても、患者の損害との間に「因果関係」が認められない場合には、賠償責任は生じません。

したがって、例えば医療行為に不手際がありはしたが、適切な医療行為を行っていたとしても救命は不可能であったような場合には、死亡という損害との間では因果関係が否定されることになります。

なお、この場合でも、適切な医療行為を行ってもらえなかったという期待権の侵害として一定の賠償責任が生じる可能性はあり得ます。

仮に医療機関側に過失及び因果関係があるとなった場合に、請求を受ける損害として、主なものは以下のとおりです。

  • 治療関係費
  • 付添看護費
  • 装具等の費用
  • 休業損害
  • 逸失利益
  • 慰謝料

それぞれの金額については、具体的事案によって大きく変動しますが、死亡や重篤な後遺症が残ってしまった場合には、非常に高額の賠償責任を負うことになります。

2.刑事・行政上の責任

刑事上の責任は、刑法211条の業務上過失致死傷罪に該当する可能性があります。

そして、医師法には以下のような定めが置かれています。

■医師法7条2項
医師が第4条各号のいずれかに該当し、又は医師としての品位を存するような行為のあったときは、厚生労働大臣は次に掲げる処分をすることができる。
一 戒告
二 三年以内の医業の停止
三 免許の取消し

また、医師法4条の定めは以下のとおりです。

■医師法4条
次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えないことがある。
一 心身の障害により医師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
二 麻薬、大麻又はあへんの中毒者
三 罰金以上の刑に処せられた者
四 前号に該当するものを除くほか、医事に関し犯罪又は不正の行為のあった者

上記からすると、刑事上の責任として罰金以上の刑に処せられた場合、戒告、医業の停止、免許の取消し等の行政処分を受ける可能性があります。

もっとも、現実には、医療過誤によって行政処分がなされるケースはあまり多くありません。

しかし、やはり過失の程度が甚だしい場合や、生じてしまった結果が重大な場合には、数か月間の医業の停止等の処分を受けている例もあります。

まとめ

上記で見てきたように、医療過誤においては、民事上の責任、刑事上の責任、行政上の責任と3種類の責任が発生しえます。

そして、これらは関連しあっています。

民事上の賠償責任を速やかに果たせば刑事上の責任が軽減される可能性があり、

刑事上の責任が軽微であれば行政上の責任も減免され得ます。

そのため、医療事故が生じた場合には、これらの各種責任を念頭に置きながら、どのように対応するのが最善なのかを検討する必要があります。

執筆者 金子 周平 弁護士

所属 栃木県弁護士会

法律は堅苦しいという印象はあるかと思います。しかし、そんなイメージに阻まれて、皆さんの問題や不安が解決されないのは残念でなりません。
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