裁判例

Precedent

離婚問題
親子関係~DNAだけでは決まらない~(最高裁判所平成26年7月17日判決)

事案の概要

夫婦は、平成16年に婚姻した。

夫は、平成19年から単身赴任をしていたが、単身赴任中も自宅に月2、3回程度帰っていた。

夫の単身赴任中、妻は、男性Aと親密に交際するようになった。

もっとも、夫婦で旅行をするなどし、夫婦の実態が失われることはなかった。

夫は、妻から妊娠している旨の報告を受け、その翌年、妻は子を出産した。

夫は、子の保育園の行事に参加するなどして、子を監護養育していた。

平成23年頃、夫は妻と男性Aの交際を知った。妻は、同時期に子を連れて自宅を出て、男性Aらと同居するようになった。

子は、男性Aを「お父さん」と呼んで、順調に成長している。

妻は、夫と離婚をしないまま、子の法定代理人として、夫と子の親子関係の不存在を確認すべく訴えを提起した。

<争点>

夫と子の親子関係の不存在は認められるか

<決定の内容>

本件審判は、面会交流の権利者、義務者、子、面会交流の日程、回数、場所及び時間、引渡の方法を含めての面会交流の方法など、夫の面会交流権について、内容を具体的に特定して定めたことから、妻は具体的内容が定められた夫による面会交流を許さなければならない義務を負い、また、権利者が参列できる行事を具体的に特定して定めたことから、妻は夫が行事に参列することを妨げてはならない義務を負うところ、妻が前記各義務を履行しない場合には、妻に対し、間接強制として、その義務の履行を確保するために相当と認める額の金銭を夫に支払うべき旨を命じることができる。

妻は、子が夫に対する強い拒否的感情を示すとともに断固として応じない態度に終始していて、現時点において面会交流を強制することは、子に情緒的混乱を生じさせ、その生活に悪影響を及ぼすと主張して、夫と子の面会交流は許さなければならないものではないとする。

しかしながら、妻が主張する事由は、請求異議の事由として主張しうるにとどまるものであり、また、本件審判後に生じたものであるならば、審判後に生じた新たな事情によって面会交流を行うことが子の福祉を害するものとして、事情変更による面会交流禁止を求める調停・審判の中で具体的に主張すべきものである。

また、妻は、子が夫に対する強い拒否的感情を示すのであるから、学校行事の日程を夫に知らせることは子との面会を容認することに等しいと主張していて、子の学校行事の日程は知らせることができないとする。夫が学校行事に参列することが子との面会を容認することとなるものではないことは論を待たず、子の意思に反するというのであれば、請求異議事由あるいは審判後の変更事情として主張すべきものであるというほかないことは同様である。

本件にあっては、妻が夫と子との面会交流を許さない場合には、間接強制として、妻に一定の金銭給付を命じることは許されるものというほかない。

不履行に際して妻の支払うべき金額については、妻の置かれている経済的状況や面会交流が履行されなかった場合に夫に生じると予測される経済的損失などを中心として算定すべきところ、本件に現れた諸事情を総合考慮して、不履行1回につき5万円を限度として定めることが相当である。

まとめ

婚姻中又は離婚後300日以内に生まれた子は、夫婦の子(嫡出子)と推定されます。

市区町村に出生届を提出すると、戸籍上も夫婦の子として取り扱われることになります。

本件は有名な判例ですが、意外とその問題意識や意義は知られていません。

誰の子かわからないという状況は、子のためになりません。

DNA鑑定によっても、子の置かれた成育環境によっても、誰が父親かということは一義的には決まりません。

「早期に父親を決めることが子のためになる。」という価値観を示したのが本件であり、この「早期に父親を決めることが子のためになる。」という価値観を、DNA鑑定や子の置かれた成育環境よりも優先させたということが、本件の意義かと思います。

本件でも述べられているとおり、妻が懐胎した時期に、既に夫婦の実態が失われ、又は遠隔地に居住している場合、親子関係の不存在が認められることがあります。

当事務所では、どのような親子関係が子にとって望ましいかという観点から、親子関係の確認を求めるお手伝いをさせていただきます。

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