損害賠償請求13 ~職場の騒音で難聴となったとき~ (神戸地裁昭和62年7月31日判決)

事案の概要

Xらは造船所であるY社の元従業員ないし下請作業員らであって、難聴に罹患した。Xらは、難聴に罹患したのは、職場の騒音が原因であるとして、Y社に対して、安全配慮義務違反及び不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を提起した。

 

<争点>
騒音性難聴に関する安全配慮義務違反の有無の判断基準

 

判決の内容

安全配慮義務の内容を検討するに当たっては、労働安全衛生法上の事業者に対する規制を十分に考慮すべきである。
Y社における安全配慮義務の具体的内容は、労働省発行の労働衛生のしおり(昭和五三年版)において掲げられる騒音性難聴防止対策の各項目を、問題とされる時代における技術水準に照らして可能である範囲で最善の手段をもつて実施すべきものである

(結論)
遮音板の設置に技術上の困難があったとしても具体的にどのような措置をとるべきか検討されたことはなく、騒音処理技術の向上や技術者の養成に向けて努力が払われた形跡もないなどの事情から、安全配慮義務違反の債務不履行に基づいて、本件事故によりXらに生じた損害を賠償する責任を負う。

解説

本判決は、職場騒音について、使用者の安全配慮義務の内容を判断するにあたり重要な基準を示しました。本判決が考慮すべきとする騒音性難聴防止対策の具体的項目は、以下のとおりです。要するに、十分に遮音し、その測定を怠らず、作業員には防音装置を装着させるだけでなく教育も施し、聴力検査も実施することが必要となります。
難聴を罹患した場合、会社が各項目に従って十分な対策を施してきたのかを検討してみてください。

 

騒音性難聴防止策

 

イ 環境改善

(イ)音源の改善
騒音のより少ない機械器具、装置、工程および作業方法を採用して、騒音を減少させ、さらに音源となる機械器具、装置に適切な工作を施し、騒音を軽減化させ、また、機械器具、装置を遠隔操作し騒音発生源から作業者を隔離する。
なお、機械器具、装置の適切なメンテナンスにより騒音が増加しないようにすることも大切である。

(ロ)しや音の措置
音源となる機械器具・装置に(1)カバーを設ける、(2)ついたてを設ける、(3)隔壁を設ける、などの措置をして作業者がばく露する騒音の軽減を図る。

(ハ)吸音の措置
設置のカバー、天井、壁等に適切な吸音材を使用し、作業場の吸音力の増加を図り、作業者の騒音ばく露量を低減する。

口 騒音の測定

作業環境の騒音レベルを定期的に測定し、騒音性難聴発生のおそれのある場所を発見するとともに、騒音対策の管理状態をモニタリングする。騒音レべルが高いときには、それに対応して、イで述べた環境改善を進め、環境改善が技術的にそれ以上不可能な場合で、かつ、騒音性難聴発生のおそれのあるときは、防音保護具の支給、着用、作業時間の短縮等の措置をとる。

ハ 防音保護具の支給、着用

騒音レベルがばく露時間からみて騒音性難聴発生のおそれがあるときは、耳栓、イヤマフなどを支給し、着用することが大切である。耳栓は、各人の耳に合つたものを、適切に着用させる必要がある。また、防音保護具は、使用しているうちに、劣化、汚損して、効果もなくなり、不快感を生じるので、適当な間隔で点検し、交換する。

二 作業者への衛生教育

職場の騒音レベル、騒音性難聴、ばく露量を少なくするための作業方法、防音保護具等に関し、作業者を教育し、作業者自ら積極的に騒音障害の防止のための活動を行うようにさせる。

ホ 聴力検査

定期的な聴力検査を行い、高音域の聴力低下(4KHz)した者を早期に発見する。このような作業者が出た作業場については、作業環境、作業管理、作業方法、防音保護具の管理および着用に問題がないかどうかを検討し、不適正なものは改善する必要がある。難聴進行がある者については、適切な作業管理を行うとともに、防音保護具の着用、衛生教育の徹底を行い、必要に応じ、ばく露時間の短縮や配置転換を行う。