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損害賠償請求9 ~安全帯着用不備による転落事故~ (東京高裁平成18年5月17日判決)

事案の概要

Xらは、屋根の塗装工事に安全帯を着用せずに従事していたところ、屋根の上で同じく作業しているはずの同僚のAの姿が見えなくなった。

慌てて事態を確認しようとしたXらも屋根から滑落して傷害を負った。

そこで、Xらは、元請Y社に対して、損害賠償請求訴訟を提起した。

<争点>

Yの責任及びX責任の有無とその程度。

<判決の内容>

(前提となる事実)
屋根は霜のため滑り易くなっていた。屋根の勾配は緩やかであった。Yは安全帯や登山用ザイルをXらに貸与していた。Xらは安全帯を着用していなかった。本件工事の前にも別の転落死亡事故があった。

(Yの責任)
安全配慮義務の有無
本件工事契約は、基本的には請負契約の性質を帯びつつもその実質は労務の提供という色彩の強い契約であり、労務を提供していたXらに対し、Yは安全配慮義務を負っていたというべきである。

安全配慮義務違反の内容
安全帯に関するYの安全配慮義務としては、Xらに安全帯の着用を徹底させるべきであった。
しかし、本件では、かかる義務に違反しているため、安全配慮義務を尽くしたとはいえない。

本件工事の前にも別の死亡事故があり、これを受けてYは、労働基準監督署から安全管理の徹底を指導され、とりわけ安全帯の着用については具体的な改善策を図示した書面を提出して誓約していた。

したがって、Yには同種事故が発生しないよう特に十分な注意と配慮が必要であったものであり,これを怠ったYの過失の程度は大きい

(Xらの責任)
安全帯を着用していなかったうえ、露のため滑落の危険があったことを十分に認識していたのに、Aが滑落したと思い、事態の確認のため慌てて屋根に飛び出して本件事故に至った。したがって、Xらにも相当程度の過失があったというべきである。

しかし、Aが屋根から転落した可能性が高く、そうであれば緊急に救助に向かう必要があるという状況にあっては、Xらの採った行動を一概に無謀な行為ということは出来ない。

また、Aの転落事故はYの安全配慮義務違反に起因し、Xらの行動はこれに誘発されたものというべきである。

(結論)
Xらの過失の程度は、50%と認められる。

まとめ

本件では、Yに安全配慮義務(違反)が認められることを前提に、双方5割となる過失割合が認められています。

まず、雇用関係に無いYに安全配慮義務が認められたのは、実質的に雇用と同じと考えられるためです。

Yの安全配慮義務違反としては、安全帯等を貸与するだけではなく、実際に着用まで徹底するべきだった点にあると言及されています。

貸与だけしてあとは現場の者に任しているだけでは責任を果たしたことにはならないとされたのです。

また、過失割合については、原審では、Xらに7割の過失割合が認められていました。

控訴審の本判決では、Yの過失がより多く認められるに至っています。

この差については、Yは同様の事故を以前起こした際、労基署に安全帯の着用の改善策について誓約書まで提出していた点を指摘されました。

そこまでしていながら、再度同様の義務違反を繰り返したYの責任については、大きく問うことができると判断されたのです。

さらに、本件事故は、直接的にはXらの不注意によりますが、Aの転落を誘発したのはYの義務違反によっていたことも、Xらの責任を軽減し、結果、Yの責任を大きくみる根拠とされています。

本件は、Yらにとって納得いかない面もあるかもしれませんが、結局はYが安全帯の着用まで徹底していれば防げた事故であることは間違いないでしょう。

自らの判断が基で事故に遭ってしまった方でも、損害賠償請求できる余地はないか、ぜひご相談下さい。

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