借金を滞納すると財産を差押えられる?差押えの流れと回避方法をご紹介

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。

「借金を滞納してしまい債権者から連絡が来たがどのように対応すればいいのかわからない」
「債権者からの差押えを避けるためにはどうしたらいいの?」

借金の返済が困難になり、債権者から催促の連絡を受けて、このような不安を抱えている方もいるのではないでしょうか。

借金を滞納すると債権者から督促の連絡が来ることがありますが、早い段階で対応すれば差押えに至らずに済むことが多いです。

本記事では、差押えの流れ、差押えの対象と差押えが禁止されているもの、差押えを避ける方法をご紹介します。

1.差押えとは

差押えとは、裁判所が債権者からの申立てに基づいて債務者による財産譲渡などの法律上の処分を禁じるための法的手段です。

例えば、債務者が債権者に対して60万円を支払う内容の判決があるにもかかわらず、債務者が支払わない場合、債権者は債務者の給料を差し押さえることができます。

差押えという法的処分をとることで、債権者がそれを回収するために債務者に給料を自由に使わせないことができるのです。

ただし、給料の差押えは法律上、給料の手取りのうち4分の1までしか対象にできないと定められているため、月の給料が28万円であれば差押えができる金額は7万円となります。

また、給料の手取りが44万円を超える場合はその金額から33万円を控除した残額が対象となります。

差押えは、具体的な実行日時などについて債務者へ連絡が来ることはありませんが、その前後の返済の督促などである程度のタイミングを予想できるケースが多いです。

次に、差押えが実行されるまでにどのような手続を経ることになるかご説明します。

2.差押えが行われるまでの流れ

貸金業者などの債権者に対して借金を返済することが困難になった場合、差押えに至るまでに以下のような手続が行われるケースが多いです。

(1)債権者からの連絡

借金を滞納すると、貸金業者などの債権者から借金返済を督促する電話連絡や郵便が届きます。

これらに対して対応をせず無視してしまうと、借金の残額を一括で請求する書面が届くことようになることが多いです。

これらの債権者からの連絡を無視していると、債権者は支払督促や訴訟といった法的措置の申立てに移行します。

そのため、債権者から借金返済に関する督促などの連絡が来た場合、これを放置してしまうと法的措置をとられてしまう可能性があります。

債権者からの督促が来た段階で専門家に相談すべきでしょう。

(2)裁判所からの連絡

債権者が支払督促や訴訟を申し立てると、裁判所から、特別送達という方法で、債務者の住所に訴状などの書類が届きます。

まず、訴訟に対応しないままでいると、債権者の請求をそのまま認める内容の判決が下されることになります。

また、支払督促に対応しなかった場合は、債権者の申立てを認める内容の仮執行宣言付支払督促正本が届き、さらにこれを受領した日から2週間以内に督促異議の申立てをしない場合、仮執行宣言付支払督促が確定し、判決と同じ効力が認められてしまいます。

確定した判決や仮執行宣言付支払督促は債務名義と呼ばれ、これがあることによって強制執行を行うことができるようになります。

つまり、債権者は、判決などを得ることによって差押えの手続に移行できるようになります。

差押えは、突然行われるものではなく裁判所に対する申立てがされたのにもかかわらずそれらに対する対応をしなかった場合にとられる措置ともいえます。

そのため、遅くとも裁判所から書類が届いた段階で対応すべきでしょう。

(3)差押え

判決や仮執行宣言付支払督促が確定しても、借金の返済を行わない場合、債権者は強制的に債権を回収するほかありませんので、強制執行の手続をとる可能性があります。

差押えは債権を回収する下準備として、債務者の財産の処分を禁ずるものですので、この段階で差押えを受けてしまう可能性が出てくることになります。

債権者が債務者の財産を把握していれば、差押えの申立てを裁判所に行い、裁判所がこれを認めれば、差押命令が出され、財産を差し押えられてしまいます。

このように、債権者が債務者に対して差押えなどの強制執行の手続をとる場合、その前に複数の手続が必要となります。

これらの事前の連絡や手続に対応しないでいると、財産を差し押さえられてしまう可能性があるということです。

差押えを受ける前の手続段階で専門家に相談し、債務整理による解決を検討すべきでしょう。

3.差し押えられるものとそうでないもの

借金の滞納による差押えの対象となる財産は、債権、動産、不動産など、あらゆる財産が対象になりますが、中でも債権を差し押えられることが多いです。

一方、全ての財産について差押えが許されているわけではなく、一部差押えを禁止されている財産もあります。

差押えの対象となる財産と差押禁止財産について順にご紹介します。

(1)債権

借金の滞納における差押えの対象である債権の中でも、給料や預金は対象になりやすいといえます。

債権者にとって給料や預金は回収が容易であるため対象になりやすいのです。

給料に関しては、月給のみならずボーナスや退職金なども差押えの対象となります。

ただし、債務者が今後も生活を継続できるように給料の差押えには上限が法律上定められています。

以下が、差押えが可能な給料の上限です。

・月収の手取り金額が44万円を超える場合・・・手取り金額のうち、33万円を超える金額
・月収の手取り金額が44万円以下の場合 ・・・手取りの4分の1まで

預金に関しては、差押え時点で口座内にある金額と借金の未払金額を比較し、より高額な方が差押え金額の上限となります。

つまり、口座内の残高が未払金額よりも低い場合は、口座内にある全てを差し押さえられるということです。

(2)動産・不動産

債権のほかに動産・不動産も差押えの対象となります。

動産に関しては、現金、車、有価証券、宝石などが差押えの対象として挙げられ、不動産は土地や家・マンションなどの建物が該当します。

ただし、動産にどれだけの価値があるのかを調べることが難しく、中古であれば価値が下がると考えられているため動産を差し押えられるケースは少ないです。

また、不動産についても差押えを行うためにかかる費用や時間など債権者にとって負担が大きいためあまり差し押えられることはありません。

滞納額が高額になっている場合は、家やマンションを差し押えられる可能性があり、また、住宅ローンの場合、設定された抵当権の実行により住宅を競売にかけられることがないわけではありません。

(3)差押禁止財産

動産と債権については一部差押えを禁止されているものがあります。

動産については、債務者の生活に不可欠なものや、仏像などの礼拝、祭祀に関連するものは差し押えることができません。

以下が、具体的な差押禁止動産の例です。

・66万円までの現金
・生活に不可欠な衣服、寝具、家具など
・食料や灯油などの燃料
・職業上、業務において欠くことのできない器具など
・実印
・仏像
・勲章

また、債権については、国民年金など社会保障のために受給する権利は差押禁止債権となっています。

4.差押えを避ける方法

債権者による差押えを避ける方法として、早い段階で弁護士に相談することと債権者と交渉することが挙げられます。

順に詳しくご説明します。

(1)弁護士に相談

差押えを避けるためには、まずは専門家である弁護士に相談すべきでしょう。

借金を滞納してしまい、債権者から連絡が来た場合にどのような対応をすればいいかわからず、そのままにしてしまうと訴訟や支払督促を申し立てられてしまいます。

債権者から連絡が来た時点で、債務整理の手続を行えば、借金の問題を解決できるかもしれません。

(2)早い段階での債権者との交渉

借金を滞納してしまい、債権者から何らかの連絡が来た場合、早い段階で債権者と話をすることで、返済計画の見直しを行ってくれる可能性があります。

債権者からの連絡を無視してしまうと、対応する姿勢が見られないと判断され法的措置をとられる可能性が高まってしまいます。

しかし、債権者との連絡や交渉を通して返済する姿勢を示すことで、返済を続けることができることがあります。

このように、差押えを避けるためには早い段階で債権者からの連絡を無視せず、これに対応することをおすすめします。

まとめ

借金を滞納し、債権者からの連絡に対応しないまま放置してしまうと最悪の場合差押えをされる可能性があります。

しかし、早い段階で対応することでこのような事態を避け、生活を立て直せるかもしれません。

差押えに関する不安を抱えている方は、一度弁護士にご相談ください。

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執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

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