遺産分割審判について

1.遺産分割審判の当事者

遺産分割審判の当事者は、遺産分割調停と同様、共同相続人全員と包括受遺者であり、他の者が当事者に代わって遺産分割審判に参加する場合も同様です。

2.遺産分割審判の開始

遺産分割は、当事者の合意による自主的かつ円満な解決に親しむため、調停をせずに審判の申立てをしても、職権で調停に付されるのが実務です。

そのため、遺産分割審判が開始するのは調停が不成立になった場合となります。

調停が不成立となった場合、当然に審判に移行するため、特に当事者の申立ては不要です。

3.遺産分割審判の管轄(担当裁判所)

遺産分割審判は、相続開始地=被相続人の方の最後の住所地を管轄する裁判所で行います。

そこで、調停手続を行った裁判所が、相続開始地を管轄する家庭裁判所ではなかった場合、改めて管轄裁判所へ移送されるか、自庁処理の裁判がなされて、そのまま調停手続を行った裁判所で審判手続もなされることとなります。

4.遺産分割審判の審判機関

審判は、法律上は、特別な定めがある場合を除き、家事審判官(=家庭裁判所の裁判官)が、参与員を立ち合わせて、その意見を聴きながら行うものと規定されています。

もっとも、実務上は、家事審判官が単独で審判するのが原則化しています。

5.遺産分割審判の審理手続

遺産分割審判のような家事審判の手続においては、訴訟手続と異なり、国が後見的立場から私人間の法律関係に積極的に介入し、職権主義、非公開主義、本人出頭主義に基づいて、具体的な妥当性を目指して、裁量的・合目的的に処理されます。

そのため、審理方法も一定の方式はなく、個々のケースによって弾力的に運営されることとなります。

6.遺産分割審判の事実調査及び証拠調べ

家庭裁判所は、職権で、事実調査を行い、必要があれば証拠調べを行います。

事実調査とは、強制力は用いずに、審判するのに必要な資料の収集をすることです。

証拠調べと異なり、その調査の方式は特に決まっていません。

具体的には、当事者や参考人の審問が中心となります。

その他には、官公署等への調査を嘱託したり、金融機関等へ必要な報告を求める党の調査方法があります。

証拠調べは、事実調査だけでは審判をするのに不足する場合に行われ、その際は、民事訴訟法の定める方式によって行われます。

この証拠調べに関しても、上述のとおり、家庭裁判所の職権で行われるため、一般の民事訴訟のような証拠申出権が当事者に認められているわけではありません。

もっとも、有利な審判を導くためには、当事者が積極的に証人尋問の申立て等の証拠申出をすべき場合も少なくありません。

また、家庭裁判所が職権で事実調査や証拠調べを行う義務を負っているため、当事者にはいわゆる立証責任(立証しなければならない立場の当事者が、十分に立証できない=裁判官が事実を認定するのに十分な証拠を出せない場合は、裁判上その事実は認められないこととなってしまうこと)がありません。

しかし、自己に有利な事実が明らかにならなければ、不利益な判断を受けることがあるので、当事者は積極的に有利な事実を明らかにし、証明するようにする必要があります。

7.遺産分割の基準・態様

遺産分割は、法律上、遺産の種類や性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活状況その他一切の事情を考慮して行わなければならないとされています。

遺産分割の態様としては、現物分割、換価分割、代償分割及びこれらを併用する等の方法がありますが、上記一切の事情を考慮して、裁判官の裁量的判断により審判されます。

例えば、各相続人の遺産分割額に沿って、現に相続財産の家屋に居住している者とそれ以外の者との調整や、商店等の家業や農業を引き継いで現に営んでいる者か否か、会社の跡継ぎに対してその会社の株式を相続させるべきか等の具体的事情を考慮して審判されることとなるのです。

8.法定相続分と異なる分割審判の可否

 

遺産分割協議や遺産分割調停によって、法定相続分と異なる割合で遺産分割することはできます。

そのため、一部の相続人だけが遺産を取得し、他の相続人が遺産をまったく相続しないという遺産分割協議や遺産分割調停は有効ですし、実務上そのような場合もよくあります。

しかし、遺産分割審判では、家庭裁判所が相続分を増減することは許されないとされています。

また、各相続人が取得する遺産の客観的価値がそれぞれの相続分に相当しているか不明な審判は、取消しされる場合もあります。

もっとも、遺産分割審判手続においても、相続人がその相続分を実質的に放棄、または譲渡するような意思表示を明らかにしているような場合には、その意思に沿った審判をすることができると考えられています。

9.遺産分割審判手の終わり方

企業・使用者への訴訟

(1)審判

審判には、認容の審判と却下の審判があります。

認容の審判とは、申立てが適法で、かつ、遺産分割の処分をすべきものと認められる場合になされるもので、その内容は、分割条項です。

却下の審判とは、既に遺産分割が協議・調停・別の審判で終了している場合や、遺産分割禁止の遺言・協議・審判がある場合などになされます。

遺産分割審判は、当事者が「告知」を受けた日の翌日から2週間が経過すると「確定」します。

「告知」の方法は、実務上、書記官による交付送達(=直接書面を渡して送達すること)や書留による送達によって行われています。

審判に不服がある場合は、上記2週間のうちに、審判を行った家庭裁判所に対して書面で申立てをしなければなりません(これは「即時抗告」と呼ばれる手続です。)。

高等裁判所が、即時抗告に理由があると認めた場合には、審判を行った家庭裁判所にもう一度審理させなおす(これを「差し戻し」といいます。)のが原則ですが、既に事実関係が明らかである場合などは、高等裁判所が審判を取り消して、高等裁判所自身が「審判に代わる裁判」(これを「自判」といいます。)することができます。

ちなみに、高等裁判所は、抗告された案件を、家庭裁判所の調停に付すこともできます。

(2)審判申立ての取下げ

審判申立てについては、実務上、取り下げることが認められています。

ただし、数人が共同して申立てをしている場合には、全員の取下げが必要となります。

取下げの時期は、審判が確定する前であればいつでもよいとされています。

また、相手方の同意も特に不要とされています。

(3)調停の成立

審判から調停に付され、その調停が成立した場合には、審判は何も手続することなく当然に終了します。