幼稚園事故と法的責任について弁護士が解説!

幼稚園内では、誤嚥やアレルギー事故、プール内での事故など、あらゆる事故の危険があります。

実際、これまで多くの事例があります。

そして、最悪、死亡という重大な結果をもたらしてしまうこととなります。

当然、幼稚園側には、法的な責任が生じ得ます。

また、近年では、幼稚園問題への社会的関心の高さと相まって、事故が報道で取り上げられることもあり、ひとたび重大事故が生じた際は、当該幼稚園は、社会的な関心、注目の的となってしまいます。

これらは、幼稚園の運営にも影響を及ぼすことと思われます。

そのため、事故を未然に防ぐための研修等の対策が必須です。

また同時に、事故を未然に防ぎきれず発生してしまった場合でも、重篤な結果に繋がらないように対処する訓練も必須です。

では、ひとたび事故が発生してしまった場合、幼稚園側が負う法的責任はどのようなものがあるのでしょうか。

1.刑事上、民事上の責任が追及される

(1)刑事上の責任

現場の幼稚園教諭や園長等の監督者らが業務上過失致死傷罪の罪を問われ得ます。

(2)民事上の責任

損害賠償の責任を問われ得ます。

法律上の根拠としては、下記のようなものです。

 

法律上の根拠

  1. 債務不履行責任(民法415条)
  2. 不法行為責任(同709条)
  3. 使用者責任(同715条1項)
  4. 代理監督者責任(同715条2項)
  5. 社会福祉法上の役員の第三者に対する責任(社会福祉法45条の21第1項)
  6. 会社法上の役員の第三者に対する責任(会社法429条)
  7. 工作物責任(民法717条)

#1:事業者として

安全配慮義務違反による①債務不履行責任ないし②不法行為責任、また、従業員の不法行為責任を前提とした③使用者責任、さらに、遊具等の設置物や建物の瑕疵が原因の事故の場合には⑦工作物責任が考えられます。

#2:園長等の施設長個人として

②不法行為責任や、④代理監督者責任を負うことが考えられます。

④代理監督者責任とは、使用者に代わって事業を監督する場合、その監督者も使用者責任と同等の責任を負うとされているものです。

#3:役員個人として

理事や評議員、会社であれば取締役等の役員は、その職務を行うにつき悪意又は重大な過失がある場合には、⑤や⑥に基づき賠償責任を負います。

なお、⑤社会福祉法上の責任は、会社法との平仄をとるため、近年設けられた規定です。

2.実際の発生事例と法的責任の判断

(1)幼稚園のプール活動中、当時3歳の園児が溺れて死亡した事案

【経緯】
教諭Aは、別の教諭Bと各担当園児らともに、直径4.5mほどの円形プールでプール活動を行っていた。

教諭Bが先に自身の担当園児らをシャワーへ連れていくため、プールから離れた。

その後、教諭Aは一人で監視しながら暫くプール活動を続けた。

そして、終わりの合図を出して、片付け作業に移った。

教諭Aは、園児らから受け取った遊具をカゴにしまうため、園児らの入り乱れているプールとは逆方向を向いて30秒ほど片付け作業をしていた。

教諭Bが、午前11時48分頃、プール内で溺水している被害園児を発見する。

教諭Aは、園児を抱きかかえて事務所に移動し、無人だったため、さらに別の場所で心臓マッサージを始めた。

その後、駆けつけた園長は教諭Aを園児らの指導に戻し、被害園児に水を吐かせようと試みた。

さらに、被害園児を事務所に移し、パンツを履き替えさせ、タオルで巻いて、別の教諭に指示して園医のもとへ連れて行った。

11時53、4分頃、園医のもとへ到着したものの、既に心配停止状態であった。

11時54分、園医が救急車を要請した。

大和市立病院に搬送されるも、午後2時2分頃、溺死と判定された。

両親が担任や園長らに対し、安全配慮義務違反、指導監督義務違反等を主張して、損害賠償を求めた。

(2)刑事上の責任(業務上過失致死罪)

担当教諭Aは、その監視義務の懈怠を理由として、有罪。

園長は、教諭Aへの指導義務や複数監視体制構築義務の懈怠が問われたが、無罪。

(3)民事上の責任

教諭A,法人、園長らの損害賠償義務を認めた。

#1:法人の責任

教諭Aには、片付けに気を取られて監視を怠ったこと、その結果、被害園児が溺死してしまったことから、不法行為が成立します。

そして、使用者として、法人は損害賠償責任を負うと判断されました。

#2:園長の責任

園長は、園長自身の過失の有無と代理監督者としての責任の有無が争点となりました。

(ア)園長自身の過失の有無

刑事裁判と同様に、①指導教育義務違反、②複数監視体制構築義務違反の有無が争われました。

しかし、①については、同園では保育中、園児らから目を離さないように指導されてきたこと、その指導にはプール活動中の監視についても当然想定されていることから、改めて指導教育すべきことがなく、これに反した指導もされていないことから、義務違反なしとされました。

②については、教諭Aひとりでも監視することは可能であったこと、また、当時はまだ複数監視体制は慣例として成立していなかったことから、義務違反なしと判断されました。

(イ)代理監督者としての責任

もっとも、法人に代わって監督をしていることに争いはなく、代理監督者としての責任は認められました。

なお、本件事故後、内閣府からプール活動・水遊びの際のガイドラインが示され、複数で指導にあたり、一人は監視に専念することが指針として示されました。

このガイドライン後も事故は起きていますが、ガイドラインに沿わない監視体制を原因としていた場合は、本件とは異なり、施設長個人の責任も認められることになるでしょう。