下請法をめぐるトラブル事例(建築関係)

1.親事業者による発注の取消し

親事業者が、下請事業者にプログラムの作成を依頼した後、発注内容にミスがあることがわかり発注を取消す場合、親事業者による発注の取消しは、下請法上、認められない可能性があります。

親事業者の発注の取消しは、「受領を拒むこと」(下請法4条1項1号)に該当するため、制限されます。

もっとも、やむを得ない事情がある場合に、これまでに要した費用を支払って取消すことは可能です。

2.欠品や瑕疵による下請代金の減額

親事業者が、欠品や瑕疵を発見した場合、「下請事業者の責に帰すべき理由」(下請法4条1項3号)がある場合に限り、下請代金を減額することができます。

仮に、「下請事業者の責に帰すべき理由」がないにもかかわらず、親事業者が下請代金を減額した場合、下請事業者は、減額された未払下請代金を、親事業者に対して請求することができます(民法415条)。

この場合、下請事業者は、受領日から60日を超える期間分の14.6%の遅延利息の請求をすることができます(下請法4条の2、下請代金支払遅延等防止法第4条の2の規定による遅延利息の率を定める規則)。

親事業者と下請事業者の合意に基づいて減額した場合、当事者間の合意として有効となる可能性が高いものの、下請法に違反する場合には、公正取引委員会の勧告の対象となり、社会的制裁を受けるリスクは残ってしまいます。

3.下請代金の支払留保

下請負人と元請負人間の下請契約において、瑕疵担保のための保証金と称して、「工事が完成し発注者に引き渡した後6ヵ月間下請代金の一部を留保する条項」が付される場合があります。

このような場合、元請負人が目的物の引き渡し時に発注者から全ての支払いを受けたとき、下請負人は、契約上支払期日を定めた以上、下請代金の支払いを、6ヵ月待たなければならないと考えがちです。

しかし、元請負人が、その発注者から出来高払い又は竣工払いを受けたときは、その支払いの対象となった工事を施工した下請負人に対して、受け取った代金に相応する下請代金を1ヵ月以内で、かつ、できる限り短い期間で支払わなければなりません(建設業法24条の3)。

この規定は、強行規定であるため、上記のように1ヵ月を超える期間、下請代金の支払いを留保する条項は、無効となります。